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ダムカレーにつまった地域住民の熱い想い!名付け親の宮島咲さんに聞いた

2019.03.28

純国産エネルギーとして日本の電力を支える水力発電。その発電に欠かせないのがダムの存在だ。ダムの水を放流し、水が高いところから低いところへ流れる時の力を利用して水車を回し、その回転により発電機を動かして電力を生み出している。治水や貯水の役割だけでなく、国内には発電用のダムも数多く存在している。近年では、その壮大な景観に惹かれた「ダム愛好家」と呼ばれる人々も増え、各地のダムを訪れるようになっている。

 

 有名な黒部ダムも水力発電に使われるダム。ダムの取水口の下流にある黒部川第四発電所で発電する

 

ダム見学の人気を加速させたのが、「ダムカレー」のブーム。ダムカレーとは、万人に愛されるカレーライスをもとに、ルーを貯水池に見立て、ライス部分でダムの形にかたどったもので、各地で「ご当地ダムカレー」が誕生している。

そのブームの火付け役となったのが、東京・墨田区の本所吾妻橋で「ジャパニーズレストラン 三州家」「割烹 三州家」の2店を経営している店主・宮島咲さん。自身がダムの魅力に取りつかれ、その名も「ダムマニア」という自作ホームページも運営する、筋金入りのダム愛好家だ。店では、要予約で4種類のダムカレーを提供している。今回は宮島さんに、ダムカレーの歩みとその魅力、地域とのつながりについてうかがった。

 

ダム愛好家としてテレビや雑誌にも登場する宮島咲さん。「ダムカレーがダムを知るきっかけになると嬉しいです」

 

ダムカレーが生まれたきっかけ

「ある日、昼食にカレーライスが出た時に『これをダムの形にしたら面白いかも』と思いついたんです。それで自分用のまかないで作ってみたんですね。それが2003年のこと。そこから、うちに遊びに来るダム仲間たちに裏メニューとして提供するようになりました。当時は、こんなに各地に広まるとは予想もしていませんでした」

そんな中、2007年に「ダムカレー」にとっての大きな転機が訪れる。

「当時、ダム建設が批判されたりして逆風の時代だったんです。そこで、2007年の4月にダム管理者によるダムのPRのための会議が開かれて、私たちのような愛好家からアイデアを募るという機会があって。ある人はそこで、今や有名なダムカードというものを発案し、私はダムカレーを提案したんです。それをきっかけに、ある新聞がダムカレーを記事にしたことから、新聞、雑誌の各社が一気に取材にやってきて、ダムカレーの名前が一気に広がりました」

※ダムカード=各地のダムで配布するカード式のパンフレットでコレクターズアイテムとなっている。

 

ダムカレーのメニューには「これはカレーではありません。ダムです」という注意書きが。「カレーではなく、あくまでもダムとして評価してほしい」と宮島さん。

 

町おこしとなったダムカレー

そこから全国各地で「ご当地ダムカレー」が生まれ、年々その数は増える一方だという。

「町おこしとしてダムカレーが広がったきっかけは、群馬県の『みなかみダムカレー』。私がプロデュースしました。利根川の源流があるみなかみ町には、3種類の型式が異なるダムがあるんです。この地は過疎化に悩んでいて、ダムカレーで町を盛り上げて観光客を呼び込もうということで誕生しました。重力式、アーチ式、ロックフィル式のカレーが提供されています。07年より前には、ご当地カレーとして60年代半ばに黒部ダムの扇沢で『アーチカレー』という名前で提供されていたメニューがあったそうです。いまでは2007年以降のダムカレーでの町おこしと結びつき、『黒部ダムカレー』として黒部ダム周辺のさまざまな店で展開されています。2017年にTV番組『マツコの知らない世界』に私が出演することになり、そこでダムカレーを紹介したことをきっかけに各地のご当地ダムカレーがさらに増加しました。2019年3月現在は、162種類のご当地ダムカレーがあるんですよ」

 

湾曲した堤防が大量の水を支えるアーチ式ダムを模したアーチ式ダムカレー。「ルーを水に見立ててライスでダムを表現しています」と宮島さん

ダムカレーを食べることで、グルメを楽しむだけでなく、その土地のことを知ることができるというのは、観光客にとっても素敵なプラス要素。ブームの火付け役として、宮島さんは現在のダムカレーの広がりについてはどう思っているのだろう。

「私自身としては、ブームではなく町おこしの一環として盛り上がっているんだと考えています。『過疎化が進んだ町や村にもう一度、観光客を呼んで食べてもらおう』という、現地の方々の熱い想いが根底にあるんです。私達のような愛好家が現地に行って、ご当地ダムカレーがあったら、そりゃあ食べますよね(笑)。現地でお金を使う機会ができたことで、ダムを見学することが地域振興にも多少は役に立つことができる。このお店で出す飲料水も元をたどればはるか遠くのダムがあってこそだし、今ここで輝いている照明の電力にだってダムを使った水力発電が大いに貢献しています。そんなことを少しでも頭の片隅に置いて、ダムカレーを楽しんでもらえれば、ダム愛好家としてはとても嬉しいですね」

 

「ジャパニーズレストラン 三州家」と「割烹 三州家」が併設。どちらの店でもダムカレーを食べることができる(要予約)。こちらはジャパニーズレストランの店内。和食を中心に定食などが揃う

 

 

「割烹 三州家」は明治22年創業の老舗。宴会や会食などに最適な個室の座敷で江戸前懐石料理や鍋料理を提供する

 

>>次回、宮島さんが生み出す「三州家のダムカレー」の“施工”についてお話を聞く!インタビュー2本目はこちら→

 

Japanese Restaurant 三州家

住所:東京都墨田区本所4-17-3

電話:03-3624-7019

時間:11:30 〜14:30、 16:30 ~21:00

定休日:不定休

 

割烹 三州家

住所:東京都墨田区本所4-17-3

電話:03-3622-1230

時間:11:30 〜 22:00

定休日:不定休