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「原子燃料サイクルって必要なの?」日本原燃に突撃インタビュー(前編)

2021.02.24

日本を取りまくエネルギーの今を伝えるべく、Concent編集部きっての好奇心旺盛なCon(コン)ちゃんが突撃取材! 第14回は、原子力発電の使用済燃料を「再処理する」とはどういうことなのか。青森県六ヶ所村にある再処理工場を運営する日本原燃さんに教えてもらいました。日本のエネルギー問題を解決する方法を、Conちゃんがお伝えします!

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Conちゃん、オンラインで再処理を問う!

鉞(まさかり)のような形をした下北半島。そのちょうど付け根のところにあるのが青森県六ヶ所村だ。

下北半島と太平洋の恵みを受けて、スルメイカやサケ、ウニにアワビといった海産物が豊富に取れる。

前回までのNUMOや幌延(ほろのべ)深地層研究センターで聞いた話の中に、たびたび出てきた「使用済燃料」という言葉。

原子力発電所で使い終わった燃料のことで、そこから出るごみ「高レベル放射性廃棄物」を地下深くに最終処分するためには、その前に「再処理」という工程が入ると言っていた。

ConちゃんがNUMOにインタビュー『「原子力発電のごみの最終処分」って何? 専門家に突撃インタビュー!(前編)』

Conちゃんが幌延深地層研究センターにインタビュー『「地層処分」って本当に安全なの? 幌延深地層研究センターに突撃取材(前編)

Conちゃんは、「再処理って必要なのかなー?」と思ったので、海の幸にも期待しつつ、建設が進む再処理工場がある六ヶ所村を目指す……はずだった。

だけど、こんなご時世なので青森へ行くのは自粛することに……ということで、今回はオンラインで取材することにした。

取材に応じてくれた日本原燃株式会社(以下、日本原燃)は、六ヶ所村で原子力発電の燃料となるウランを濃縮する工場や、原子力発電所で出る低レベル放射性廃棄物というものを処分する埋設センターなどを運営している。

今回の目的地だった再処理工場も、その一つだ。

四十物「青森に来てほしかったけど、今回は画面越しでよろしくね!」

四十物「ウラン鉱石って知っているかな? これを海外から輸入、加工して原子力発電の燃料にするんだけど、火力発電の燃料になる天然ガスや石油と同じように、燃料の調達先を海外に頼っていると、世界情勢が不安定になったら心配になるよね」

四十物「実は原子力発電の使用済燃料は、約96%が再利用できるんだ。つまり、使い終わっても、まだまだ燃料として使えるってこと。そもそも日本はエネルギーの資源に乏しいの。貴重なウラン資源をもっと有効利用できれば、エネルギーを安定させることにつながる。だから、一度輸入したウランをリサイクルして、より長く使えるようにしていこうとしているんだよ」

四十物「再処理っていうのは、原子力発電所で使い終わった燃料からまだ使えるものを取り出す仕組みのこと。その再処理を行うのが六ヶ所村の再処理工場だよ」

四十物「再処理工場では、原子力発電に再利用できるウランとプルトニウムを取り出してリサイクルできるようにするの。国内に今、使用済燃料は約1万9000トンあるの。これをリサイクルすれば、日本国内で消費される約1年半分の電力がつくれるんだよ」

 

Conちゃん、意外な再処理の仕組みに驚く!

再処理工場が、新たな日本のエネルギー資源を生み出すために、原子力発電の使用済燃料をリサイクルしようとしていることがわかったConちゃん。

でも、プルトニウムって……それってあっていいんだっけ?

四十物「理由はいろいろあるんだけど、再処理工場にある使用済燃料から回収されたプルトニウムには、核分裂しやすいプルトニウムの割合が約6割程度しか含まれていないので、核分裂しやすいプルトニウムが9割以上必要となる核兵器に転用することは技術的に困難なの。それに、工場の中にはIAEA(国際原子力機関)のカメラがたくさんあって、査察官が日本でそういったプルトニウムを抽出して核兵器の材料を作らないかしっかり見ているんだよ」

四十物「見ているって言うと“たまに来て見る”ようなイメージかもしれないけど、そんなレベルじゃないよ。24時間365日工場を監視しているんだ。逆に言えば、私たちが『作っていない』ってことを国際的に保証してもらっているの。私だって核兵器を作るためにこの会社に入ったわけじゃないからね」

四十物「多くの原子力発電所は軽水炉っていう原子炉を使ってウランからエネルギーを取り出しています。このウランの一部がプルトニウムに変化するんだけど、その中から、まだ使えるウランとプルトニウムを取り出しているんだ。六ヶ所村の再処理工場は、年間で最大800トンの使用済燃料を再処理することができる能力があって、試験で既に425トンを処理しているんだよ」

四十物「実証試験でね。2006年から2013年までの試験で既に425トンの使用済燃料を処理しているよ」

四十物「具体的には、原子力発電所から運んできた使用済燃料を保管して、『①せん断・溶解』『②分離』『③精製』『④脱硝』と4つの工程でウラン酸化物とウラン・プルトニウム混合酸化物にして貯蔵するの」

四十物「②分離の部分で、再利用できるウランとプルトニウム、再利用できない廃液を分けるのは、ドレッシングみたいな感じをイメージするとわかりやすいかな」

四十物「ドレッシングって振ると混ざるけど、放置すると水と油が分かれていくよね。この硝酸溶液っていう液体も同じように、ウランとプルトニウムは上の方に、廃液は下の方に分かれていく性質があるの。そうやって使える部分と使えない部分を分けているんだよ」

四十物「全体の約5%だけ出てしまう、どうしても再利用できない部分のこと。廃液はガラスと溶かし固めて『ガラス固化体』にするんだ。それを『高レベル放射性廃棄物』って呼んでいるんだけど、この間、聞いたんじゃないかな?」

四十物「最終処分のプロジェクトはNUMO(ニューモ)が進めているのは知っているよね」

ConちゃんがNUMOにインタビュー『「原子力発電のごみの最終処分」って何? 専門家に突撃インタビュー!(前編)』

Conちゃんが幌延深地層研究センターにインタビュー『「地層処分」って本当に安全なの? 幌延深地層研究センターに突撃取材(前編)

四十物「それにともなって最終処分する場所の面積も半分以下に縮小できるから、環境面などでもとても大事な作業なんだよ」

 

Conちゃん、壮大な原子燃料サイクルを知る!

技術的には、とてつもないものなんだろうけれど、再処理が意外とシンプルな仕組みだったことに驚いたConちゃん。

でも、これをやったら放射線の影響が……。

四十物「再処理工場が稼働すると、使用済燃料を切断する工程でどうしてもトリチウムやクリプトンなどの放射性物質が出てくるの」

トリチウムについての詳しい解説はこちら 電気新聞特設サイト「トリチウムの基本Q&A

四十物「それに放射性物質が放出されることの影響はもちろんゼロではないけど、実は自然からの放射線の量の100分の1程度なんだよ。これまでも世界の原子力施設では排出基準を守ったうえで海洋などに出しているんだよ」

四十物「『トリチウムが出る』って聞いたら、とても危険に感じるのはよくわかるよ。でも数値にすると、再処理工場から放出する放射能による人体への影響は1人当たりで年間最大0.022ミリシーベルト。例えば、呼吸によるもの(年間1.26ミリシーベルト)や食べ物から(年間0.29ミリシーベルト)など、自然からの放射線量は日本平均で年間2.1ミリシーベルトとされているの。ちなみに、病院で受ける胸のX線検診は1回で0.06ミリシーベルト、全身のCTスキャンは1回で平均7ミリシーベルトなんだよ。だから、日常の暮らしの中で普通に受けている放射線よりも、一般の方々に影響を与えるものではないと考えているよ」

四十物「それに、トリチウムは一つ当たりのエネルギー量がとても小さいから、数が多くても、影響に換算するととても小さくなるんだよ。また、トリチウムは水として存在するので、体の中に入ってもすぐ外に出てしまうんだ」

四十物「一般的な原子力発電所で使われる燃料は、最初に言ったウラン鉱石から作るものだよね。リサイクルしてできるのが、このMOX燃料。混合酸化物燃料(Mixed Oxide)の略称で、取り出したウランとプルトニウムで作るんだ。こうした一連の流れを、『原子燃料サイクル』っていうんだよ」

四十物「原子燃料サイクルっていうのは、原子力発電所→再処理工場→MOX燃料工場で燃料を再利用すること。再処理工場もMOX燃料工場も国の安全審査に合格して、原子燃料サイクルの実現に向けて進んでいるよ」

原子燃料サイクルの歴史について詳しくはこちら『「もんじゅ」の廃炉計画と「核燃料サイクル」のこれから」』(経済産業省 資源エネルギー庁スペシャルコンテンツ)

四十物「六ヶ所村の再処理工場はまだ本格的に動いていないけど、これまでもフランスなどに依頼して再処理自体は進められているんだ」

四十物「これは一般の商品にも言えることだけど、新品とリサイクル品だと、新品を買う方が安くすむこともあるよね。だけど、身近な紙やプラスチックと同じように、リサイクルするのは資源の問題。最初に言ったように、日本がウランや石油、天然ガスといったエネルギーの資源を海外に頼らなくてもよくすることで、自分の国の中に今ある資源を大事に使おうってこと」

原子力発電の燃料を再処理した先には、限りある燃料をサイクルする壮大なプロジェクトがあった。

作る、使う、リサイクルして、また使う。その先にはどんな未来が待っているのか。次回はさらに掘り下げて、Conちゃんがリポート!

後編に続く


取材協力:日本原燃株式会社

青森県六ヶ所村に本社を構え、原子燃料サイクルの中核を担う。日本のエネルギーの安定供給を目指して、ウランの濃縮、使用済燃料の再処理、MOX燃料の製造などの5事業を展開している。社員の6割以上が青森県出身者。略称はJNFL。
https://www.jnfl.co.jp/ja/

★さらに「六ヶ所村の再処理工場」について知りたい方はこちら!

『「六ヶ所再処理工場」とは何か、そのしくみと安全対策(前編)』(経済産業省 資源エネルギー庁スペシャルコンテンツ)