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鮮度抜群のご飯にゾウ感激! 動物園と電力会社から生まれた伐採木の上手な使い道

2021.11.16

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【今月の密着人】北海道電力ネットワーク株式会社 札幌支店 配電部 配電工事グループ 永井晃輔さん(28歳)

電力会社の大切な使命は、いつでも確実に電気を届けること。電線に掛かりそうな木を伐採し、電気が通る道の安全を確保することも重要な仕事の一つです。そんな中、ごみとして処理していた大量の伐採木を使い、どういうわけか動物園のゾウを元気にしている電力会社の社員がいます。ゾウや動物園、さらには地域全体を喜びに包んだアイデアとは?


伐採した樹木をゾウのご飯に!

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突然ですが、動物園の人気者ゾウが、1回に食べる食事の量はどれくらいだと思いますか?

正解は、野生のアジアゾウの場合は、1頭あたり200キログラム程度。一般的な動物園だと、干し草などを与えることが多く、食費は年間で約200万円もかかるそうです。

2020年11月、そんなゾウ4頭が暮らす北海道札幌市・円山動物園に、トラックいっぱいの樹木が運び込まれました。運んできたのは、北海道電力ネットワーク株式会社 札幌支店 配電部 配電工事グループの永井晃輔さん。なぜ電力会社が動物園に樹木を届けたのでしょうか。

永井さん「当社では停電などの事故を未然に防ぐため、電線に掛かりそうになっている樹木を切り落とす保守伐採を行っています。伐採した木は通常、ごみとして廃棄するのですが、一部をゾウのエサとして動物園に無償提供したんです」

札幌支店 配電部が一年間に根元から切る樹木は約6500本、切り落とす枝は約20万本分に上ります。

永井さん「干し草などのエサに比べれば、地元で切ってきた伐採木は新鮮そのもの。ゾウにとって、ものすごいごちそうなんですよ。実際、とてもおいしそうに食べていました」

 

ゾウへのプレゼントをひらめいた瞬間

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電力会社として全国初の試みとなった、伐採木の無償提供プロジェクト。アイデアが生まれたきっかけは、「電線に掛かかりそうな木を切ってほしい」と永井さんが円山動物園に呼ばれた日にさかのぼります。

永井さん「普段は電柱の変圧器点検などの業務を担当していて、木の伐採作業もその中の一つです。伐採した樹木は通常持ち帰るのですが、樹木の所有者に引き取っていただくケースもあり、あの日も『切った木はその辺に置いておいて』と言われました。かなりの量があったので、なんとなく気になりお聞きしたら『ゾウのエサにする』と言うんです」

その瞬間、永井さんの脳裏にかつて円山動物園で見たゾウの姿がよぎりました。

永井さん「息子がとても好きで、年間パスポートを持っているほど家族でよく訪れていたんです。4年前に木を食べるゾウを初めて見て、とても驚きました。ゾウといえばリンゴなどの果物を食べるイメージがあったので、まさか木を食べるなんてと。それを思い出したんです」

伐採木の使い道を詳しく聞いてみると、種類によってサルやキリンなども食べることが判明。それなら他の場所の樹木も使えるかもしれないと、会社に戻ってすぐに企画書作りに取り掛かりました。

永井さん「実は、これが人生初の企画書でした。手探りでしたが、とにかく熱い思いをぶつけたんです。前例はないものの地域に貢献できると社内で認められ、進められることに。動物たちが好む樹木リストをまとめるところから、円山動物園を運営する札幌市と覚書を交わすまで、何もかも初めての経験ばかりでしたね」

 

動物だけじゃなく地域のために

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2020年11月に初めて提供した伐採木は200キログラム。冬を越え、2021年4〜9月には8回に分けて合計3トンが運び込まれました。まとまった量を一度に運ぶのではなく、複数回に分けるのにも理由があります。

永井さん「せっかくなら、おいしく食べてもらいたい。だから鮮度にこだわりたいんです。特に私たちが切った木はその日の内に持っていくので、ゾウたちの食いつき方がまったく違うんですよ。『あっという間に食べてしまった』と、飼育員さんも驚いていました」

今年は年間で約10トンを提供する予定です。ゾウは新鮮なエサが食べられ、動物園は食費が節約できます。それ以上に、もっと大きな価値があることを円山動物園の動物専門員 野村友美さんが教えてくれました。

「枝葉を与えると、折る、樹皮をはぐ、葉をむしるといったゾウのさまざまな行動が引き出すことができ、そうした姿を来園された方々に観察してもらえます。また、食事に時間がかかることや、繊維質が多く栄養価が低いことから肥満予防にもつながるなど、メリットが多いんです。ゾウ4頭分の量を私たちだけで確保するのはとても難しいので、非常にありがたいですね」

さらに環境面にも良い取り組みだと、今後の継続と広がりに期待を寄せています。

永井さん「ちなみに、当社としてもメリットが多いんです。伐採木の保管や運搬、処理に掛かっていたコストを削減できますし、焼却処分をしないので二酸化炭素の排出量削減にも貢献できます。ごみとして処分するだけとは雲泥の差です」

ゾウ、動物園、電力会社、さらには地球にまで良いこと尽くしですが、永井さんが何よりうれしいのは地域とのつながりをより実感できることだと言います。

永井さん「伐採に行った先でこの話をすると、誰もが喜んでくれます。先日訪れた幼稚園でも『この木はゾウさんのご飯になるんだよ』と伝えたら、子どもたちの目がキラキラ輝いていました。地域と共にある電力会社の社員として、改めて実現できて良かったと感じます」

円山動物園での取り組みを機に、同社の旭川支店でも旭山動物園への提供がスタートしました。ちょっとした会話から生まれたアイデアは、今後大きく飛躍しそうです。

永井さん「私は、普段からお客様との会話を大切にしています。ニーズや業務改善のヒントは、ちょっとしたコミュニケーションの中に見つけられるからです。そう思って続けてきたことがついに実を結びました。まだ同じような可能性を秘めたヒントはあるはず。今後もお客様の声に耳を傾け、地域のためになることを実現していきたいです」
 

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円山動物園

 

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