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さらなる安全と安心を。島根原子力発電所の保守点検を担う中国電力社員の願い

2022.04.27

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【今月の密着人】中国電力株式会社 島根原子力発電所 保修部 岡田誠さん(33歳)

カーボンニュートラルを目指す時代に、発電時に二酸化炭素(CO2)を排出しない発電方法の一つとして、原子力発電があります。今回スポットを当てるのは、そんな原子力発電所を安全に運営するために重要な役割を果たす「保修」のお仕事。設備の保守点検から耐震補強の工事まで幅広く担当する中国電力の岡田誠さんに、安全への強い意識とその背景にある願いを伺いました。


大きな地震にも耐えられる発電所に

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島根県松江市にある島根原子力発電所に勤務する岡田さんは、発電所の安全運営に欠かせない施設保安などの仕事を担っています。再稼働に向けた準備を進める2号機に関わる設備の保守点検や耐震補強工事などについて、計画策定から現場管理までを行っています。

岡田さん「私が担当している設備の一つに、原子炉から発電用のタービンへと蒸気を送る配管があります。配管の外部から超音波でひびがないかを確かめたり、バルブ(弁)を取り外して数十個のパーツに分解したうえで劣化や損傷がないかを細かく確認したり。防護服を着て配管内部に入り、目視点検もします。定期的な点検だけでもたくさんあるので、地道な作業が多いですね」

点検する設備は巨大で大掛かりなものも多く、一人ではできません。

岡田さん「計画策定から点検完了まで数カ月を要することも。社内の関連部署や作業を担当する協力会社とスケジュールを緻密に調整しながら進めていかなくてはなりません。これがなかなか大変なんです」

特に2013年から行っている耐震補強工事は、発電所の安全性に大きく関わるプロジェクト。調査段階から慎重を期しました。

岡田さん「たとえ発電所直下で地震が起きたとしても、建物が損壊しないようにする必要があります。そのため、まずは発電所周辺の地震の形跡を12~13万年前までさかのぼるなど、時間をかけて調査が行われました。この地盤で起こりうると考えられる最大の地震にも耐えられるように補強を施しています」

 

万全な安全対策を積み重ねる

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常に緊張感を保ちながら仕事に当たる岡田さんですが、その意識をさらに強くしたのが2016年の冬のことでした。

2号機の中央制御室につながる空調ダクトに穴が見つかったのです。この中央制御室は、24時間体制で発電所の状態を監視する重要な施設の一つで、徹底的な原因究明と対策が必要です。

岡田さん「穴の原因は、結露や塩害による腐食ではないかと推定しました。起こったことは真摯に受け止め、二度と同じことを発生させないためすぐに動きました。プラントメーカーの担当者と対策案を連日連夜話し合い、ダクトの形状や材質などを変更して取り替え。さらに、従来とは違う角度から目視点検ができるように新たな点検口を増設したうえで、点検回数を増やすなど二重三重の対策を徹底しました」

一連の対応には大きな苦労が伴いましたが、「地域の皆さんにご心配をおかけしないためにも、安全性を高めていかなくてはいけない」と、改めて強く決意したといいます。

岡田さん「あらゆるリスクを想定し続け、思い込みや先入観にとらわれない柔軟な姿勢で安全性を追求しつづけなければなりません。私が受け持つ仕事の一つ一つに地域の皆さんの暮らしがかかっているという責任の重さを忘れてはいけないと考えています」

 

友人、震災、東南アジアを通じて考え続けた原子力発電

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エネルギー分野に興味を持ち始めたのは高校時代からと、若くして視座の高さが伺える岡田さん。とはいえその一歩目は、当時の友人の影響が大きいそうです。

岡田さん「酸性雨や地球温暖化などは教科書でも見るほど、当時も社会的に関心の高い問題でした。その中で、再生可能エネルギーや原子力発電がCO2を出さないクリーンなエネルギーとして注目されていて、興味を抱いたのが原点です。ただ、当時親しかった友達が地球環境問題への意識がものすごく高く、だいぶ影響されたのもあります(笑)」

その後、大学で原子力について学びました。東日本大震災による福島第一原子力発電所の事故が発生したのはそのころです。

岡田さん「研究室の教授たちから、原子力発電所の徹底した安全対策について聞いていたぶん、衝撃を受けました。その後、国内で原子力が止まっていても停電は起きないし、当時は正直、このままなくしても大丈夫なんじゃないのかなと考えていました」

ところがその秋、ベトナムやカンボジア、タイなどを旅行した際に、その考えが一変することになります。

岡田さん「電力の供給がとにかく不安定だったんです。すぐに停電しますし、その影響で生活するのがとても不便。何よりも、当時は地球温暖化の影響から年々豪雨による洪水被害の規模が大きくなっていたころです。東南アジアの暮らしを目の当たりにして、生きること自体の存続が危ぶまれている場所があるという現実に、もう一度原子力発電の必要性を見つめなおしたんです」

岡田さんは中国電力に入社して以降、「発電所の安全性向上に貢献したい」という思いから、平日は3時間、休日は8時間ほどの猛勉強を続け、原子炉の運転に関して保安の監督を行う「原子炉主任技術者」などの難関資格を取得しました。

より安全な発電所運営に生かしていくため、引き続き、他の資格取得に向け、勉強に励んでいます。

岡田さん「地域の皆さんが安心できる島根原子力発電所であるよう、頑張りたいんです。それに、石油などの化石燃料に依存しすぎるシステムはよくありません。万一調達できなくなれば、エネルギーどころか、身の回りのものまで作れなくなってしまう。次世代のために、自分にできることを精一杯続けていきたいです」

 

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増設した点検口


■中国電力-島根原子力発電所
https://www.energia.co.jp/atom_info/shimane/

■島根原子力発電所 特設サイト
https://www.energia.co.jp/atom/mukiau/index.html