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世界初の「EVタンカー」就航の裏にあった東京電力エナジーパートナー社員の尽力

2022.09.30

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東京電力エナジーパートナー株式会社 販売本部 法人営業部 都市事業ユニット 丸山佳宏(27歳)

2022年4月下旬、世界初のEVタンカー(電気推進タンカー)「あさひ」が運航を開始しました。自動車では一般的になってきたバッテリーを動力源とする“EV(Electric Vehicle)”ですが、巨大な船を電気で動かすとなると難易度は桁違い。その成功の鍵を握っていた東京電力エナジーパートナー 丸山佳宏さんは、環境に優しい港湾インフラを造るという使命感に燃えています。


完成! 世界初のEVタンカーに圧倒

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1日当たり約500隻の船が行き交う東京湾は、世界屈指の海上交通過密海域。ここから外国へと旅立つ外航貨物船への給油を担うのが、2022年4月下旬に就航したEVタンカー「あさひ」です。

あさひは、エンジンの代わりに電気自動車約100台分に相当する大容量リチウムイオンバッテリーを搭載し、電力のみで航行する世界初のタンカー船。海運会社の旭タンカーが建造・所有する船で、船の電動化やDX(デジタルトランスフォーメーション)に取り組む企業のe5ラボが企画・開発を行いました。

丸山佳宏さんが所属する東京電力エナジーパートナーの法人営業部都市事業ユニットでは、あさひの電力プランの検討をはじめ、電力を供給するための給電ステーションの設計や設置なども担当しています。

丸山さん「初めて完成したあさひを間近に見たのは、船のお披露目会でした。港に着いてすぐに目が行くほど、明らかに最新の船だとわかる未来的な外観で、船内もまるでホテルと思うようなキレイさ。ジョイスティックで操作する操縦席は飛行機のコックピットのようで、どこを見ても圧巻でした。詰めかけた報道陣も多く、改めて自分はすごいプロジェクトに関わっていたんだと実感させられましたね」

あさひは、電動化によって運航時に二酸化炭素、窒素、二酸化硫黄、ばい煙などを排出しません。それに加えて、充電の際には実質100%再生可能エネルギー由来の電気を使用しています。1年間稼働すると、400トンもの二酸化炭素の排出量が削減でき、これは一般家庭約300世帯が1年間電気を使用することで排出する二酸化炭素の量と同程度。それほど、環境に優しいタンカーということですね。

丸山さん「電動化によるメリットは、環境に優しいだけではありません。従来あった巨大なディーゼルエンジンがなくなることで、騒音や振動が圧倒的に少なくなり、船内の快適性がぐっと高まります。また、プロペラを360度どの方向にも向けられるような設計が可能なため、接岸する際に補助をする船も不要で、乗組員の労働環境や港湾周辺の環境改善にも効果が期待されているんです」
 

世界に1隻しかないEV船向けの電力プランを検討

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「意義のあるプロジェクトに関わることができ、とても良い経験をさせてもらっています」と笑顔で語る丸山さんですが、お披露目の日に至るまでには、並々ならぬ苦労がありました。なにせ世界に1隻しかない船。普段は法人営業に従事している丸山さんにとっても、初めての連続でした。

丸山さん「法人営業は、お客さまの1年間の電気の使い方や使用量から最適なプランをご提案し、ご契約をいただくことが仕事です。今回は、あさひ向けの電力プランを考えるのが私のミッション。通常は前年度の電気使用量の実績などから必要な電力量をある程度想定できるのですが、今回は前例がないどころか船がまだ就航もしていないので、とても大変でした」

当然ながら、電力は動力だけに使われるのではありません。船内にどんな設備があり、電力をどれだけ消費するのか、プラン構築に必要な情報は多岐にわたります。

丸山さん「年間の航行スケジュールはもちろん、例えば停泊中にエアコンは使うのかといったことまで細かく協議を重ねていきました。一般家庭でもご契約いただくアンペア数によって基本料金が変わるように、電力プランはあさひの運行コストに直結しますから、責任は重大です」

 

港湾インフラの未来を担うEV船に貢献したい

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さまざまな困難を乗り越え、無事に運用が始まったあさひ。カーボンニュートラルの実現を目指して電気自動車の普及が急速に進んでいるように、EVタンカーは未来の港湾インフラを左右する重要な役割を担っています。

丸山さん「タンカーに限らず、船の電動化を進めていくためには、乗り物と給電設備の双方がバランス良く普及していかなければなりません。そういう意味ではまだまだ道のりは長いですが、今後はタンカーだけでなく小型の船などにも電動化の波が広がっていけば、東京湾の景色は一変するはず。少しだけ、そんな未来が見えてきたのかなと思うと、今から楽しみです」

将来的には身近な船が電気で動くようになったり、無人航行ができたりなど、5年後、10年後には、船の在り方も大きく変わっているかもしれません。

丸山さん「あさひはそうした未来へ向けた第一歩。今回、携わることができ、とてもうれしいです。船舶業界における電動化の普及を進めていく上では給電コネクタの規格統一など、これから決めていかなければならないことはたくさんありますが、明るい社会を作っていくためには大切なこと。私自身もいろいろと学びながら、今後も貢献していきたいです」

 

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EVタンカー「あさひ」

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「あさひ」の内装

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給電ステーション


■東京電力エナジーパートナー
https://www.tepco.co.jp/ep/

■EVタンカー「あさひ」について
https://www.tepco.co.jp/ep/notice/pressrelease/2022/pdf/220414j0102.pdf

<貢献する主なSDGsの目標>
SDGs

■電気事業連合会
SDGsの達成に向けた地域共生の取り組み