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エネルギーは大事なお手伝いさん?地球温暖化が私たちのライフスタイルを変えるワケ(後編)

2018.11.16

今、日本のエネルギー事情がどうなっているのか、最前線で活躍する先生が分かりやすくレクチャーする「エネスタ!」。第2回・前編では、地球温暖化が内戦にまでつながる怖い話も聞きました。後編では、身近なところで私たちに何ができるのか、専門家の先生に詳しく聞いていきます!

※【前編】の記事はこちら


先生「世界が温暖化によってさまざまな問題に直面している中で、日本は頑張っている方だと言いましたが、ちなみに今、国内総生産(GDP)の世界ランキングで日本は何番目か知っていますか?」

大野「上からアメリカ、中国、ロシア、で、日本ですか?」

先生「というイメージもありますよね。でも、アメリカ、中国、日本なんです」

大野「えっ、すごくないですか?」

先生「あれだけ『日本はダメだ』と言われながらも、いまだに世界3位なんです。戦後から現在に至るまで、ものづくりの技術が日本の経済成長を引っ張ってきました。そして、それを支えてきたのが“電力の安定供給”なんです」

多田「普通に生活していると、あまり“安定供給”というのがしっくりこないんですが、どういうことですか?」

先生「例えば、私がインドネシアに住んでいたときは、嵐でなくても普通に急な停電がありました。でも、日本ではほとんど起きませんよね。普段の生活はもちろん、工場などを動かすにも電気は必要ですが、日本で品質の良い電気が安定して送り届けられているのは、電力会社の努力のたまものなんです」

高橋「でも、それって当たり前っていうか。特に心配しなくても、これからもずっと続くんじゃないですか」

先生「実はそうでもないんです。今、日本で必要とされている電力の約8割は火力発電所で発電していますが、その燃料となる天然ガス、石油、石炭といった化石燃料の大半は、海外からの輸入に頼っている状態です。そのうち発電や自動車用燃料として重宝している石油は80%以上を中東地域に依存しています。こうした地域の国際情勢は複雑で、安定的に資源の供給が行われるのかという懸念もあります。それはつまり、“エネルギー安全保障”に関係してくるということです」

●2017年度の日本の電源構成


出典:電力広域的運営推進機関「平成30年度供給計画の取りまとめ」を基に作成※四捨五入の関係で合計が合わない場合があります

多田「“安全保障”って……分かるような、分からないような……」

先生「エネルギー安全保障とは、エネルギーを安定的に、安く供給される状態を達成しようとする取り組みのことです。かつて日本は、オイルショックを経験し、大混乱に陥りました」

高橋「オイルショックは聞いたことあります! 確か、トイレットペーパーがなくなったとか」

先生「オイルショックのときは、紙がなくなるといううわさが広まって、トイレットペーパーの買い占め騒動が起きました。日本はその当時、エネルギーの8割近くを輸入原油に頼っていたので、原油の値上がりが、結果として経済活動へのブレーキになったんです」

大野「8割……。今の火力発電への依存度と一緒ですね」

先生「オイルショックの経験から言えるのは、エネルギーは石油など、どれか一つに過度に依存してはいけないということです。そうならないためには、再生可能エネルギーや原子力発電も含めた電源の多様化が必要。また、技術革新による省エネ推進によって、限りある資源をより効率的に使うことも大切になってきます。これって、何かに似ていませんか?」

大野「先ほど聞いた、温暖化対策と同じですね!」

先生「正解! 実はエネルギー安全保障と地球温暖化の対策は表裏一体。目的は違いますが、実行することは同じなんです」

大野「省エネは普段も気にはしていますが、エネルギー安全保障はもちろん、地球温暖化対策なんて頭にないですよ。ただ光熱費の削減だとか、お金の節約として自分のためにやっていただけでした」

先生「それでいいんです! それってとても重要なこと。光熱費が安くなるのがうれしい。それがモチベーションになれば、ますます省エネは推進されるわけですから」

高橋「この夏に大活躍だったエアコンや、冷蔵庫でも省エネはできますか?」

先生「もちろん! 古いものから省エネ機器に買い替えても電気代の節約につながりますし、エアコンであればフィルター掃除、冷蔵庫であれば温度設定の見直しなどによっても電気代は変わってきます!」

多田「そうなんですね!……でも、洗濯のときはついつい乾燥機を使ってしまうんですよね。干せばその分節約できるんだろうけれど、平日はどうしても時間がなくて……」

先生「働いていると仕方がない部分はありますよね。私はエネルギーって“お手伝いさん”だと思うんですよ。大昔は、人の手で半日かけていた洗濯も、全自動洗濯機ならスイッチ一つで終わる。これもエネルギーがあってこそ。なくてはならないお手伝いさんですよね」

多田「代わりにやってくれるんですもんね。お手伝いさんか……これからもずっと手伝ってもらうためにはどうすればよいのか、ちゃんと考えなければだめですね」

先生「そうですね。自分だけで考えるのではなく、家族や友達にも、エネルギーやその問題に関心を持ってもらえるように話をしてもらえるとうれしいです」

<profile>

小川順子(おがわ・じゅんこ)

財団法人日本エネルギー経済研究所・地球環境ユニット地球温暖化政策グループ研究主幹。専門は地球温暖化政策分析や省エネルギー政策分析。1997年に入所以来、国際エネルギー経済学会やエネルギー資源学会、セミナーなどを通じてエネルギー問題の理解促進に尽力する。

大野南香(おおの・みなか)

1999年3月生まれ、愛知県出身。東京大学教養学部理科二類2年。東京大学2017年準ミスグランプリ。趣味は弾丸旅行や料理。今回は理系女子の視点からエネルギー問題に斬り込む。

高橋晴香(たかはし・はるか)

1989年1月生まれ、東京都出身。読者モデル、インスタグラマーとして活動。特技は卓球やジャズダンス。電気料金や節約術などエネルギーのあれこれを今どきの女子目線で問う。

多田恵(ただ・めぐみ)

1986年生まれ、千葉県出身。雑誌編集者。趣味は旅行や最新グルメ巡り。今回は働く女子代表として参加し、気になっていたエネルギー関連のニュースなどへの疑問をぶつける。