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ダムマニア・宮島咲さんが生みだす「三州家のダムカレー」、ここが凄い!

2019.05.10

>>宮島さんがダムカレーの誕生を語る!インタビュー1本目はこちら

純国産エネルギーである水力発電に欠かせないダム。その壮大な景観に惹かれて各地のダムを訪れる「ダム愛好家」たちを中心に、今盛り上がっているのが「ダムカレー」だ。カレーのルーで水を表現し、ライスでダムを造ることで器の中にダム湖を造り出す。ある種盆栽のような、景色を皿の中に表現したカレーだ。テレビや雑誌などのメディアでも取り上げられ、ブームは現在も加速し続けている。いまや日本中に162種類のご当地ダムカレーがあるというから驚きだ。

ダムカレーの生みの親であり名づけ親となったのが、「ダムマニア」という自作ホームページを運営するダム愛好家の宮島咲さん。東京・本所吾妻橋で「ジャパニーズレストラン 三州家」「割烹 三州家」の2店を営んでいる店主でもある。その誕生の経緯は、前回の記事にあるのでぜひ読んでもらいたい。

今回は、宮島さん自身が三州家で提供する4種類のダムカレーの「施工」(調理)についてお話をうかがった。店で出しているのは、「アースダムカレー」「重力式ダムカレー」「アーチ式ダムカレー」「ライスフィルカレー」の4種。それぞれ実際のダムと同じ構造を器の中で造り出している。ゆえに宮島さんは、「これはカレーではなくてダムです」と言い切るのだ。

 

「アースダムカレー」とは

「アースダムというのは、土を盛って水をせき止めたダムのことを言います。それを表現したのが『アースダムカレー』です。土が15m盛られて水をせき止める構造になっていれば、すべてダムと呼べるんですよ。田舎によくあるため池でも、せき止める土の高さがたまたま15m以上ある場合はダムなんですね。ちなみに、国内のダムの50%はアースダムです。一番原始的な構造なので、大昔からあるんですよ。日本では西暦616年に造られたダムが現存しています(※)。古事記や日本書紀にも記載があるんです。ちなみに、水力発電に使われるこの型式のダムで代表的なものは、山梨県にある大野ダムです」

※大阪府大阪狭山市にある狭山池ダムは616年建造で日本最古のダムと言われる

ライスを積み重ねて造るアースダムカレー650円。正式な名前は「アースフィルダムカレー」。堤の下のほうに実際のダムと同じ「犬走り(斜面に設けられた狭い平場)」もある

 

「重力式ダムカレー」とは

「コンクリートが誕生することで生まれたのが、重力式ダムです。ダムカレーで言えば、ご飯の重みでカレーの圧力を支えてせき止めるという構造です。単純に言えば、ご飯で蓋をしてカレーの流れを止めているような状態。水力発電用のダムでは、静岡県と愛知県にまたがってある佐久間ダムがこの型式です。日本で重力式ダムが造られるようになったのは1900年頃のことなんですが、当時はコンクリートの値段がとても高額だったので、あまりたくさんの数が造れなかったんです。重力式ダムカレーのライスの量をみていただければわかると思いますが、コンクリートの重さで支える構造なので、水の圧力と闘うためにはかなりのコンクリートの量が必要なんですよ」

大量のライスを使って施工する「重力式ダムカレー」865円。横から見ると三角形の形になっているのが特徴だ

 

そこで生まれたのが、次の「アーチ式ダムカレー」の基となるアーチ式ダムだという。

 

「アーチ式ダムカレー」とは

「アーチ式ダムカレーは見ての通り、少ないお米の量でルーを堰き止められるんです。堤体をアーチの形にすることで水圧を両岸や底に分散させて、水を支える構造なんですね。ピンポン玉を半分に切ってドームのように置くと、かなりの力で押しても潰れないのと同じ原理です。水力発電で使われるダムの中でこの型式で有名なのは、富山県にある黒部ダムです。アーチ式ダムカレーを注文する方の中には、アーチの部分を極限まで薄くして、どこまでルーをせき止められるかを試しながら食べる方もいらっしゃいます(笑)」

「アーチ式ダムカレー」760円。湾曲したご飯のダムが大量のルー=水を支える。福神漬で減勢工(げんせいこう)を表現

 

 

「ライスフィルカレー」とは

最後は、「ライスフィルカレー」。こちらのダムは、ロックフィルダムの構造をカレーライスで表現しているとか。「ロックフィルダムというのは、一般的には水をせき止めるコアの部分が粘土になっていて、その上下流面を岩で覆っている構造のダムのことです。粘土は水を通しにくい材質ですが、それだけだと崩れてしまうので硬い岩石で覆うことで水圧に耐えうるダムになるんです。ダム=コンクリートというイメージを持つ人が多いので、岩のダムは珍しいと思うかもしれませんがそんなことはないんですよ。日本のダムの約10%は、このロックフィルダムなんです。水力発電用のダムでは、長野県にある南相木(みなみあいき)ダムが知られています。ダムカレーの場合は、堤体が岩=ロックではなく、お米=ライスなので『ライスフィルカレー』という名前にしています」

「ライスフィルカレー」975円。コアとしてルーを堰き止めるご飯があり、そのまわりにロックに見立てたご飯を配置

カレーを食べることで、ダムの基本的な構造が学べるのがダムカレーの面白さ。ダムのことをよく知らない初心者でも、楽しみながらその魅力にふれることができる。

「僕は器の中に小さなダムを建てるつもりで、このダムカレーを造っています。作る時にも『調理』ではなく『施工』と言うんですよ。ただ、あまりにもライスの部分を固くしてしまうと食べられなくなってしまうので、おいしく食べられるギリギリの線で固めていますが(笑)。

ダムカレーを通して、ダムにもいろいろな型式があることを知ってもらい、各地のダムに足を運んでその魅力に触れてもらえたらいいなと思います。香川県にある豊稔池(ほうねんいけ)ダム、沖縄県にある金城ダム、新潟県にある黒又ダムなど、インスタ映えするような美しいダムもたくさんありますからね」

ダム愛好家・宮島咲さんは「ご当地ダムカレーで地域が活性化するのは嬉しいこと」と語る。みなかみ町などダムカレーをフックにした町おこしのために、監修を務めることも

 

Japanese Restaurant 三州家

住所:東京都墨田区本所4-17-3

電話:03-3624-7019

時間:11:30 〜14:30、 16:30 ~21:00

定休日:不定休

 

割烹 三州家

住所:東京都墨田区本所4-17-3

電話:03-3622-1230

時間:11:30 〜 22:00

定休日:不定休