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電気料金の値上げを防ぐにはどうしたらいいの?エネルギーの専門家に聞いてみた(後編)

2023.11.22

玄海原子力発電所

日本を取り巻くエネルギーの今を伝えるべく、Concent編集部きっての好奇心旺盛なCon(コン)ちゃんが突撃取材! 第30回のテーマは、前回に引き続き「電気料金の値上げ」。前編では、電気料金の仕組みや値上げの背景などについて学んだところ。後編では、なぜ日本は火力発電に依存することになってしまったのか、どうすれば今後、値上げしないで済むのかをConちゃんがお伝えします!

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Conちゃん、火力発電依存に疑問を抱く

発電に必要な燃料の価格が上がると、電気料金の値上げにつながることを知ったConちゃん。特に日本は、火力発電に依存しているため天然ガス(LNG)や石炭などの価格上昇が大きく影響することを前編で教えてもらった。

>前編はこちら『電気料金が上ったのはなんで? 電気料金の仕組みや値上げの背景などを専門家に聞いてみた(前編)』

そもそも、何で日本は火力発電に依存しているのだろうか?

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日本がなぜ火力発電に依存しているのか、そして、今後、値上げせずにすむにはどうしたらよいのか、前編に引き続き、今回もエネルギーの専門家、松尾豪さんに話を聞いた。

Conちゃん

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松尾「少し歴史を振り返ると、日本では、戦前は水力発電の割合が多かったんだよ。でも、例えば大渇水のように水が不足するときは、相当な節電をしなきゃいけないこともあった。日本の産業発展を支えるためにも、今後は火力発電が必要だということで開発を進めて、だんだん火力発電が主流になっていったんだよ」

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松尾「火力発電の燃料として、当初は国内外の石炭を活用していたけど、1950~60年代頃から、次第に原油を活用しようということになったんだ。その後、原油を燃料とした火力発電の比率が高まっていたところで1973年にオイルショックが起き、その影響を受けて電気料金も値上げされたんだよ」

玄海原子力発電所03

松尾「こうしたオイルショックなどを経て、日本として、例えば、水力発電や火力発電などどれか一つに依存するのではなく、バランスよくさまざまな発電方法を活用することにしたんだ。その取り組みとして原子力発電やLNGを燃料とした火力発電の開発を進めたんだよ。ここ最近では、太陽光や風力などの再生可能エネルギーの導入も進んでいるね」

玄海原子力発電所03

松尾「東日本大震災以降、数多くの原子力発電所がまだ稼働できていないことに加えて、太陽光や風力などの再生可能エネルギーは天候に左右されてしまうため、今の日本において電気を安定して届けるためには、どうしても火力発電が必要なんだ」

 

Conちゃん、海外の値上げ状況についても知る

Conちゃん

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松尾「LNGや石炭の燃料価格は、一時期と比べると下がっているんだけど、この冬は、ヨーロッパでLNGが不足するかもしれないなんてことも言われている。もし本当にそうなると、世界的にLNGの需給がひっ迫することになるので、今後、再び燃料価格が上昇して、日本にまで影響が出てくる恐れもあると思うよ」

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松尾「LNGは、ある程度、安定した価格で取得できる長期契約と、その時々の需給状況に応じた市場価格で取得するスポット契約の2つの方法があるんだ。日本では、LNGのほとんどは長期契約で取得していたので、ヨーロッパなんかと比べると、電気料金の値上げ幅は限定的だったんだよ」

玄海原子力発電所06

玄海原子力発電所06

松尾「例えば、イタリアでは電気料金が2022年頃から急激に上昇し始めて、2020年の1月と比べて約3倍、イギリスでは約2倍になったんだよ。イタリアは特にLNGを燃料とする火力発電の割合が高いので、その分、影響を受けやすかったんだ。日本では家庭や企業などの負担を緩和するため、2024年5月まで電気料金が値引きされることになっているよね。海外においても、今回の価格高騰を受けて各国の政府がさまざまな支援策を講じているんだよ」

<電気料金の推移>

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※2020年1月の数値を基準「100」としている
出所:エネルギー白書2023を基に作成

 

Conちゃん、エネルギーミックスを考える

Conちゃん

松尾「一つは、原子力発電や太陽光発電、風力発電などの割合を少しずつ増やして、燃料価格高騰の影響を受けやすい火力発電の割合を減らしていくことだね。もう一つは、そうはいっても、日本においてはまだまだ火力発電が必要なので、長期契約を増やすなどして、LNGなど火力発電向けの燃料調達費用をできる限り抑えることが有効だね」

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松尾「価格ももちろん大切だけど、まわりを海に囲まれた島国であることやエネルギー資源が乏しいといった、日本固有の事情も考慮する必要がある。加えて、電力の安定供給を前提に2050年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロにすることも必要。こうした状況をベースに、各発電方法のメリット・デメリットを踏まえた、日本にとって最適なエネルギーミックスを実現していく必要があるんだよ」

玄海原子力発電所09

電気料金が急に高くなったからといって目を丸くするだけじゃなく、その背景にあるのは何か、今後どうするべきなのか、しっかり考えていこうと思ったConちゃんでした。


取材協力:松尾豪

合同会社エネルギー経済社会研究所代表取締役。学生起業への参画などを経て、2012年イーレックス株式会社入社。営業部、経営企画部に在籍。アビームコンサルティング株式会社で国内外電力市場・制度の調査・事業者支援を担当した後、2019年株式会社ディー・エヌ・エー入社。引き続き国内外電力市場・制度の調査を担当したほか、分散電源事業開発に携わった。2021年3月より現職。CIGRE会員、電気学会正員、公益事業学会会員、エネルギー・資源学会会員。

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