ふだんあたりまえに、何気なく使っている電気。でも生活上なくてはならない社会インフラです。現在はコロナ禍の影響でおうち時間が増えるなど、生活の中での電気・家電の存在感は以前より大きくなってきているのではないでしょうか。そこで、「家電ラボ」を開設し、電化製品を研究・レビューしている石井和美さんに、「生活を豊かにしてくれるおすすめ家電」と、家電を選ぶ際のアドバイスをお聞きしました!
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フリーライター/家電プロレビュアーの石井和美さん
暮らしの中で欠かせない電気&家電。ふだんは何気なく使っていますが、家事の負担を軽減し、生活の質を上げてくれる便利な家電が数多く登場しています。現在はコロナ禍の影響で在宅時間が増え、生活の質を上げるために家電を買い足したり、買い換えたりする方も多く、注目が集まりました。最新の家電トレンドと、選び方をご紹介します。
➀便利家電、今のトレンドは?
現在、家電をとりまく状況は変化しつつあります。高度経済成長期には「子供の数は 2~3 人」が標準家族でしたので、家電もそういった世帯に合わせて販売されていました。しかし共働き世帯が増え、単身者やシニア世帯も急増しているため、家族形態やライフスタイルの多様化に合わせて、求められる家電も少しずつ変わってきています。
最近、人気なのは少人数用のコンパクトな家電です。一世帯あたりの人数が減っていることもありますが、キッチンのスペースに限りがある中で、家電の種類がどんどん増えて置き場所問題に悩む方が増えていることも理由のひとつ。新興メーカーから販売されている手頃な価格の家電も人気です。操作が簡単で、パッと使える小さな家電は、主に単身者や少人数の世帯で好まれています。
また、「省エネ」についても意識する方が増えています。特に冷蔵庫とエアコンは家庭内でも消費電力が大きい家電なので、気になる方も多いようです。家族形態の変化に合わせたコンパクト&便利化と、省エネな世界情勢に合わせたトレンドの2軸が、人気の傾向と言えるかもしれません。
冷蔵庫は、最新の上位モデルは省エネ性能が高くなっています。各社が力を入れているモデルは、モーターやコンプレッサーが最新で、断熱材も優秀です。よく「大きい冷蔵庫は電気代がかかる」と思い込んでいる方もいますが、中型冷蔵庫よりも消費電力が低いことも。
また、単に冷やすだけではなく、鮮度を保つことができます。食品が長持ちしたり、ラップなしでもサラダが潤っていたり、買い換えるメリットが高い家電です。
消費電力が大きい冷蔵庫は、サイズよりも性能面で選ぶのが◎
エアコンは、節電効果を上げるのであれば、サーキュレーターを同時に使うことをおすすめします。サーキュレーターで気流を作り、かくはんすることで部屋の温度が一定になります。夏場では体感温度も下がるので、エアコンの設定温度を上げることができます。節電につながるので、ぜひ試してみてください。なお、扇風機でも代用できますが、扇風機は人があたることを目的に作られているので、風が弱めでサーキュレーターほど気流を作り出すことができません。扇風機の中でもサーキュレーターとして使えるパワフルなタイプもありますので、一年中エアコンと併用して使うのでしたら、そちらのタイプを選ぶようにしましょう。
もうひとつ、注目していただきたいのは「照明」です。現在販売されている中で省エネなのはLED照明ですが、まだ蛍光灯の照明を使っている方も多く、家庭内では電力消費を占める割合が高いと言われています。廊下のダウンライトなど、細かいところも含めて全部の部屋をLED電球に変えていくことで、月々の電気代も抑えることができます。意外にも消費電力が大きいものなので、家の中の照明を改めて見直してみてくださいね。
②おすすめの「生活を豊かにしてくれる家電5選」
ここ数年で特に注目されている家電をご紹介します。同じように見えても、10年前より使い勝手や性能が上がっているものもあります。「家事の手間を減らしたい」「健康的な毎日を送りたい」など、目的は使う人によってさまざま。ユニークな家電もたくさんあるので、ぜひチェックしてください。
1、調理家電
コロナ禍以降、大人気の電気圧力鍋や電気調理鍋です。短時間で作ることができるのはもちろん、材料と調味料さえ入れれば「ほったらかし」でできることがメリット。料理で大切なのは加熱のさじ加減ですが、設定さえすれば自動でコントロールしてくれるので失敗がありません。むしろ、自分で作るよりも美味しくできることもあり、手放せないという声もよく聞きます。圧力料理だけでなく、低温調理、炊飯、発酵、炒め物まで幅広くできる調理家電もあります。コロナ禍により、運動不足で太ってしまった……という方からは、ヘルシーなサラダチキンなどができる低温調理機能も人気となっています。
電気圧力鍋や電気調理鍋が人気。調理家電は時間も電力も節約できるものも!
2、ちょい足し調理家電
コロナ禍以降、特に売れたのが生活に潤いを与える家電です。
15万円以上もするコーヒーメーカーが飛ぶように売れました。カフェに行けなくなったことで売れたコーヒーメーカーは、ミル付きの本格的なものから、カセット式で一杯ずつ淹れられる手軽なタイプまでいろいろ発売されています。以前よりも選択肢が増え、コーヒーを抽出する技術も上がったので、最新式のコーヒーメーカーは香りがよく、至福の一杯を楽しめます。
コロナ禍でおうち時間を楽しむコーヒーメーカーが人気に
コロナ禍になる前までは家庭の中で登場の頻度が少なくなってきていたホームベーカリーも再び注目されています。焼きたてのパンを食べることができるので、パン好きにはたまらない家電ですが、最新モデルは全粒粉パンやブランパンなどのヘルシーパンを作ることもできるので、「パンは好きだけれど、糖質などが気になる」という方も購入されています。
また、テーブルで楽しく家族で調理できるホットプレートも人気です。一人用のコンパクトなホットプレートは、そのままテーブルでお皿としても使えるので、洗い物を減らすことができます。
3、クリーン家電
在宅時間が増えてから、ゴミを見つけたときにパッとこまめに掃除する方が増えています。これまでは週末などにまとめて掃除をするので、ある程度重くても吸引力を重視する方が多かったのですが、ユーザーのニーズも変わってきました。今はサッと掃除できる、コードレスタイプの軽い掃除機が人気です。見つけたときにすぐに手にとることができ、置きっぱなしでも部屋のインテリアを邪魔しないスタイリッシュなデザインのクリーナーも続々登場しています。
空気清浄機も注目されています。空気清浄機の売上はずっと横ばいでしたが、コロナ禍以降は部屋の空気環境を整えるために、取り入れる方も増えています。適用畳数の表示がありますが、実際の部屋よりも大きいタイプ(2倍ほど)を購入するようにしましょう。スピーディに吸引できますので、ホコリや花粉などをしっかりキャッチできます。
4、最新の大容量冷蔵庫
冷蔵庫の性能がアップしていることは➀でも紹介しましたが、最新の大容量冷蔵庫は便利かつオトクです。資源エネルギー庁の資料によると、今どきの冷蔵庫は10年前と比べると約40〜47%の省エネに。10年以上前の古い冷蔵庫を使っている方は、最新モデルに買い換えれば消費電力を抑えることができます。また、断熱材が薄くなり、モーターなども小さくなっていますので、10年前と同じサイズでも内容量は大きくなっています。たくさんまとめ買いしてもたっぷり入るので安心です。
なかなか買い換えが難しい大型家電。久しぶりに買い換えたら、その進化に驚くかも…!?
5、大型テレビ
コロナ禍前まではスマートフォンなどで動画などを楽しむ方が多かったのですが、在宅時間が増えるようになり、せっかくなら大画面で楽しみたいという方が増え、テレビも売れています。
最近、特に人気なのはネット配信動画が見られるテレビです。ネット配信動画を補正する機能や、リモコンにネット配信用のボタンがあってすぐに切り替えられるタイプが人気となっています。
③自分に必要な家電を見極めるために
ここ数年で家電業界もサブスクリプションやレンタルサービスが急増していますので、そういったサービスの利用もおすすめです。せっかく欲しいものがあっても、特に高額な家電は躊躇することがありますよね。もし目的のものが借りられそうであれば、購入する前に、一度借りてみることをおすすめします。
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さまざまな用途・種類の家電が販売される昨今。そのバリエーションと性能の進化はめざましく、自分の生活に取り入れたら、地球に優しく、かつ快適だったり楽しみが生まれたりする豊かな時間が過ごせるかも。もし試してみたい場合は石井さんおすすめの「おためし」で、一度借りてみると「せっかく買ったのに……」という失敗や無駄がなくなりそうです。かしこくスマートに、電気ライフを楽しみたいですね。
石井和美(いしい かずみ)
フリーライター/家電プロレビュアー。
白物家電や日用品などを中心に製品レビューをテレビ・ラジオ・雑誌・WEBなど各メディアで紹介・解説。レビュー歴15年以上。茨城県守谷市に家電をレビューするための一戸建てタイプ「家電ラボ」を開設し、冷蔵庫や洗濯機などの大型家電のテストを行っている。ライター、家電コメンテーター、家電コンサルタントなども。
【WEBページ】家電ラボhttps://kaden-blog.net/
【Twitter】https://twitter.com/kazumi123