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フードロスを防ぎ、食品をおいしく長持ちさせる冷蔵・冷凍保存術【料理研究家・食品ロス削減アドバイザーの島本美由紀さんに聞く!】

2022.08.15

夏は気温が高く、食品が傷みやすい時期。さらにエアコンや冷蔵庫など、“冷やす”には電気代が結構かかるなぁ……と生活の中で感じる方も多いのではないでしょうか。そこで、著書に『栄養素も鮮度も100%キープ! おいしい冷凍保存術』『いつでもおいしい 冷蔵・冷凍保存術』などをお持ちの料理研究家・食品ロス削減アドバイザー・防災士の島本美由紀さんに、冷蔵・冷凍での効率的な食品保存術を中心に、フードロス対策・料理へのおすすめ活用法についてお聞きしました。

 

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島本美由紀さん
料理研究家・食品ロス削減アドバイザー・防災士の島本美由紀さん

フードロスとは、まだ食べられるのに捨てられてしまう食品のこと。家庭から出るフードロスは4人家族の平均で年間6万円分と言われています。家庭から出るフードロスを減らすためにも、食品が傷みやすい夏の時期は冷蔵庫の使い方を見直しましょう。フードロスを防ぎ、食品をおいしく長持ちさせる冷蔵・冷凍保存術をご紹介します。

①冷蔵庫をうまく使いこなせると、こんなことがプラスに!

「気づいたら冷蔵庫の奥で野菜が傷んでいた……」「冷凍室で霜がついた謎の食品を発見して捨てた……」など、せっかく購入した食材を最後まで使い切れずに捨ててしまったという経験はありませんか? 食事作りは冷蔵庫を中心にまわっているので、冷蔵庫の使い方をちょっぴり見直すだけで、食材を最後まで使い切れるようになり、節約につながることはもちろん、家事効率もアップ。捨てる罪悪感からも解放されるので気持ちも整います。

冷蔵庫
冷蔵室は7割以下の収納に

 

冷蔵庫がパンパンになりがちな夏ですが、大切なのは冷蔵庫の収納量。冷蔵室は7割以下、冷凍室は7割以上の収納にしましょう。

まず、冷蔵室がパンパンだと冷気が効率よくまわらず、食材が傷みやすくなります。また、取り出したいものを探すのに時間がかかるので冷気が逃げてしまう原因にも。冷蔵室の収納を7割以下にすることで消費電力も抑えることができ、年間約960円の電気代がお得(※)になります。

ちなみに冷蔵室内の設定温度は『中』で十分。冬は気温も低いので『弱』の設定でOKです。設定温度を見直すだけで年間約1,360円も電気代がお得(※)になります。

冷凍室は7割以上の収納に
冷凍室は7割以上の収納に

 

冷凍室の収納量は冷蔵室とは逆。7割以上のスペースに食材が入っていた方が効率よく冷え、節電効果もアップします。開いている時間を短くするためにも、冷凍室は重ねず、立てて収納が鉄則です。

(※一般財団法人省エネルギーセンター「家庭の省エネ大辞典」より)

 

②フードロスを減らす冷蔵保存術

冷蔵室からフードロスを減らすには、「見える」「まとめる」「取り出しやすい」の収納方法を実践していきましょう。

「見える」ひと目で見渡せる収納を意識する

開けたらパッと全体が見渡せるように収納しましょう。例えば、透明の保存容器を使用するとひと目で残量まで確認できるので常備菜などの食べ忘れを防げます。容器の種類は増やし過ぎず、2~3種類に統一することで使っていない時の収納もコンパクトになります。

収納
「見える」ひと目で見渡せる収納を意識する

 

「まとめる」 グルーピングを意識する

あちこちに食材が散らばっていると、ダブり買いの原因に。種類ごとや使う目的ごとに食材をまとめておくと管理がしやすくなります。半端に残った加工食品やちくわなどは冷蔵室で1番見えやすい下段に置くと使い忘れもなく、献立も立てやすくなります。

冷蔵庫
グルーピングを意識して「まとめる」、そしてトレーを使って「取り出しやすい」かたちにした例

 

「取り出しやすい」 トレーを使って奥まで有効活用

用途別にトレーやボックスにまとめるとすぐに取り出せ、冷蔵庫の奥まで有効活用できます。食材が迷子にならないので、探す手間も少なくなり、買い忘れやダブり買いの予防にもなります。ドアを開けている時間が短くてすむので節電効果もあります。

ちなみに家庭から出るフードロスを食材別で見てみると、1位が野菜です。せっかく購入した野菜をおいしく食べきるためにも、正しい保存方法を知ることが大切です。例えば、小松菜やホウレン草などの葉物野菜は育った状態で保存した方が長持ちするので、野菜室に立てて保存しましょう。かぼちゃやパプリカ、ゴーヤーなどのヘタとタネのある野菜は水分の多いタネ周辺から傷んでくるので、残ったらヘタとタネを取って保存しましょう。きのこ類は水分と乾燥に弱いので、キッチンペーパーで包んでからポリ袋に入れて保存しましょう。おいしく長持ちさせることで野菜のフードロスを減らせます。

冷蔵庫
かぼちゃやパプリカ、ゴーヤーなどのヘタとタネのある野菜は水分の多いタネ周辺から傷んでくるので、残ったらヘタとタネを取って保存します

 

③フードロスを減らす冷凍保存術

肉や魚、野菜など、まとめ買いをしたら新鮮なうちに冷凍保存しておくと長持ちします。

例えば、肉は100gずつに分け、ラップで包んでから冷凍用保存袋に入れましょう。魚は1切れずつ、ハムやソーセージは使いやすい量ごとに分けて冷凍しておくと使い勝手抜群です。

冷蔵庫

冷蔵庫
魚は1切れずつ、肉は100g程度を小分けにして、ラップで包んでから冷凍用保存袋に入れると長持ちします

 

肉や魚の冷凍は一般的ですが、野菜の冷凍保存もおすすめ。例えば、キャベツや小松菜などの葉物野菜は、食べやすく切って生のまま冷凍用保存袋に入れて冷凍しておけば、使いたい時に使いたい量だけ取り出せ、凍ったまま調理ができるのでラク。色鮮やかなミニトマトや乱切りにしたパプリカ、細切りにしたにんじんなどを冷凍しておけば、食卓に彩りを添えてくれます。比較的日持ちのしやすい根菜類もぜひ冷凍してみてください。にんじんや大根、ごぼうなど、食べやすい大きさに切って冷凍しておけば、凍ったまま煮物やスープに使え、冷凍することで火の通りも早くなるので時短につながります。肉や野菜の保存期間は1か月。期限内に調理で使いましょう。

冷蔵庫

冷蔵庫
切ってから冷凍すれば、使いたい時に使いたい分量だけササっと取り出せます

 

また、頻繁に使わない調味料の保存も冷凍がおすすめです。柚子胡椒や豆板醤、甜麺醤などは容器ごと冷凍保存すれば1年間ほど保存可能(瓶が割れないよう、内容量はパンパンの状態でないよう気をつけて)。風味を損なわずにおいしく冷凍ができます。また、味噌など塩分が多い調味料はカチコチに凍らないので、冷凍室から取り出した直後でもスプーンで必要な分だけ取れるので使いやすいですよ。

冷蔵庫
頻繁に使わない調味料は容器ごと冷凍保存がおすすめ

 

④時短クッキングにもなる! 便利な下味冷凍

日々の食事作りをラクにしてくれるのが下味冷凍。下味冷凍とは、肉や魚に味をつけて冷凍保存したもののことで、冷凍することで調味料がしっかりと染み込むので、パサつきを防いで食感もやわらか。解凍して炒めたり、焼いたりするだけなので時短調理にもつながります。また、調味料が肉や魚の表面をしっかりコーティングしてくれるので乾燥しにくく、保存期間は2か月。下味冷凍することで、おいしさを長くキープしてくれます。

作り方はとっても簡単。例えば、冷凍用保存袋にひと口大に切った豚バラ肉200gを入れ、市販の焼き肉のタレ大さじ3を加えて軽くもみ、下味をつけた状態で冷凍するだけ。食べる時は冷蔵室に移して解凍し、玉ねぎやピーマンの薄切りと一緒に炒めれば豚肉のスタミナ炒めに。フライパンで炒めた肉を市販のカット野菜と盛り付ければスタミナ満点の焼き肉のサラダになります。

冷蔵庫

冷蔵庫

冷蔵庫
下味をつけた豚肉を冷凍しておくと、時短クッキングに!

 

特売などで購入した肉や魚を利用して、好きな調味料で味をつけて2~3セットほどまとめて作っておくと便利ですよ。上手に冷凍貯金をしておくことで、献立に迷うこともないし、雨などで買い物に出たくない日や忙しい日のごはん作りがグッとラクに楽しくなります。

使い忘れを防ぐためにも、冷凍用保存袋には日付と中身の食材名を書いておきましょう。そして月に1度、冷凍室を見直して古いものから食べていくなど、上手にローリングしていくと、おいしく食べきることができます。

 


島本美由紀さん

島本美由紀(しまもと みゆき)

料理研究家・食品ロス削減アドバイザー・防災士 身近な食材で誰もが簡単においしく作れるレシピを考案。家事がラクになるアイデアなどに定評があり、ラク家事アドバイザー、冷蔵庫収納&食品保存アドバイザー、防災士としても活動。NHK「あさイチ」や日本テレビ「ヒルナンデス!」など、テレビや雑誌を中心に活躍し、著書は70冊を超える。一般社団法人「食エコ研究所」の代表理事を務め、令和3年には消費者庁主催の食品ロス削減大賞で審査委員長賞を受賞。公式YouTube「島本美由紀のラク家事CH」では、家事がラクになるアイデアや食品保存のコツを紹介している。

ムダなく使い切れる!冷蔵庫収納術

著書に「ムダなく使い切れる!冷蔵庫収納術」(コスミック出版)、「栄養素も鮮度も100%キープ!おいしい冷凍保存術」(宝島社)、「野菜が長持ち&使い切るコツ、教えます!」(小学館)などがある。

【公式YouTube】「島本美由紀のラク家事CH https://www.youtube.com/channel/UCbIPZfpFO5ccvs8MtelVobg

【オフィシャルサイト】https://shimamotomiyuki.com/


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『省エネ・節電 お役立ち情報』(電気事業連合会特設サイト)