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防災アナウンサーの奥村奈津美さんに聞く!パパ、ママがやっておきたい水害・災害への備え

2022.11.15

昨今、台風や大雨による水害のニュースなどが増え、警戒が高まっています。地震に対しては非常用持ち出し袋の知識がある人も多いかもしれませんが、特に水害について考えたとき、どのような備えをしたらいいのでしょうか。特に、子どもがいる家庭での注意点とは――。防災士、福祉防災認定コーチ、防災教育推進協会講師、 防災住宅研究所 理事、東京都防災コーディネーターの奥村奈津美さんにお話をうかがいました。

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奥村奈津美さん
防災士の奥村奈津美さん

家を選ぶ際からの防災意識 ~子どもがいる家庭で特に気をつけたいこと~

「防災、何から始めたらいいか、分からないんです」防災啓発活動をする中で、よく頂く質問です。防災で最初にやってほしいことは、敵を知ること! つまり、災害が起きたとき、地域や家にどんな被害が起こりうるのかを確認しておくことです。今は「ハザードマップ」という被害想定の地図が作られていて、例えば、水害では、豪雨などで浸水する恐れのあるエリア、土砂災害のリスクがあるエリアなどが想定されています。次に、家自体のリスクである耐震性について。1981年6月よりも前に建築確認された家は、旧耐震基準となり、大地震では倒壊する恐れがあります。1日の中で最も長く過ごしているのは自宅なので、まずは、自宅が安全か確認してください。

オススメは、家を選ぶ際に、なるべくリスクの少ない場所を選ぶ、そして、災害に強い家を建てる、もしくは購入することです。どうしても、金額や駅からの距離などの利便性、間取りなどを優先してしまうと思うのですが、危険な場所を選んでしまうと、常に、危険と隣り合わせの状況で過ごすことになります。豪雨の度に避難しなくてはいけないという場所は、オススメできません。

地球温暖化の影響もあり、雨の降り方が変わってしまいました。今後、温暖化が進み、水害はより激甚化、頻発化することが予測されています。また、国難級の災害とも言われる南海トラフ巨大地震は30年以内に70~80%、40年以内に90%程度と、高い発生確率になっています。たった数分で津波が到達すると予測されているエリアもあります。災害は必ず起きると思って自宅を備えて頂けたら幸いです。

 

特に、お子さんが小さい場合、避難所に避難するのも容易ではありません。抱っこ紐で抱っこし、非常持ち出し袋を持って、走って逃げることができるでしょうか? さらに二人目、三人目と家族が増えると、避難はより難しくなっていきます。だからこそ、避難しなくても自宅が最強の避難所となるような家が理想です。

水害対策

あまり知られていませんが、阪神・淡路大震災以降、大地震でも窓ガラス一枚も割れることなく、土砂災害や津波にも耐えた、「壁式鉄筋コンクリートパネル組立造」という災害に最も強い建築工法もあります。沖縄ではほとんどがコンクリート住宅ですが、今後、温暖化の影響でスーパー台風が上陸するようになると、木造家屋では耐えられないような暴風になる恐れもあります。今年9月の台風14号も「スーパー台風」という表現が使われ、最大瞬間風速70メートルという予測もされていました。安心して在宅避難ができるようにするには、場所、そして頑丈な家を選ぶことが大切です。

 

生活の中で、どんなことに気をつけたらいい? ~停電への備えも~

過去の災害から「普段使っていないものは、災害時も使えない」という教訓があります。つまり、「フェーズフリー」の考え方で災害時にも使えるものを普段から使っておくことが大事になります。

最近は防災グッズもどんどん進化しています。停電対策と言えば、懐中電灯のイメージが強いかもしれませんが、今は、停電しない電球も販売されています。電球の中に蓄電できる機能が備わっていて、常にフル充電の状態をキープしてくれます。そして、停電すると、数秒後に自動点灯してくれ、電球を取り外すと懐中電灯としても使えるという優れものです。リビングや廊下、寝室など夜間使用する部屋の電球をこの電球に切り替えるだけで、停電後、真っ暗闇になり、けがをするリスクを軽減できます。また、子育て世帯に欠かせない電動自転車のバッテリーを、スマートフォンの充電機に変身させるアダプターも販売されています。ポータブル電源なども手に入りやすくなっていますが、維持管理のことを考えると、やはり普段使っている電動自転車のバッテリーを活用する方が簡単に継続できる備えとなるのではないでしょうか。

電気の備え

水の備蓄に関しても、水道管を太くしたような貯水タンクが販売されていて、それを設置することで水道水を常に数日分備蓄できるようになります。無意識でも備えられている状態、つまり防災は自動化の時代を迎えていると感じています。そのほか、非常食ではなく、普段食べている常温で長期保存できる食品をローリングストック(※)するなど、いかに日常の延長線上で備えられるかが大事になってきます。家選び同様、モノ選びも防災視点をプラスしてもらえたら幸いです。
※食べ物や日用品を少し多めに購入し、日常生活で消費しながら、新しいものに入れ替えていく備蓄方法

 

水害の状況キャッチ ~どんなアンテナをはっておいたらいい?~

水害は気象災害なので、事前に予測できることもあります。そこで重要になってくるのが、情報を受け取る力です。普段からアプリで雨雲レーダーなどを見るなど、使い方に慣れておくことをオススメします。私は、「NHKニュース・防災アプリ」「Yahoo!防災速報」というアプリを愛用しています。自宅や実家など3カ所の地域を設定することができ、豪雨の恐れなどがあるとプッシュ通知で教えてくれます。

そして、危険な場所に住んでいる場合は、避難が必要ですが、その避難のタイミングについて。普段の生活でも時間通りに行動することが難しい子育て世帯は、早めの避難が重要です。今は警戒レベルという5段階のレベルで避難情報などが発表されるようになりました。危険な場所に住んでいる方は、お子さんが小さい間は「レベル3で避難する」というのを心がけてください。そして、3メートル以上などの深い浸水想定のエリアは、垂直避難はオススメしません。いつ救助が来るか分からない中、子どもと籠城生活は考えただけでもリスキーです。

水害への備え

低層階に住んでいて、内水氾濫で床下浸水の恐れがある方は、玄関など水が入ってくる場所に土嚢を設置して、被害を軽減する方法もあります。ただ、大規模水害では役に立たないので、やはり自分の家がどのくらい浸水リスクがあるのかを知った上で、早めに避難することをオススメします。

 

子ども用非常持ち出し袋の備え方

子どもが一人で避難できるようになったら、子ども用の非常持ち出し袋は、一人一つずつ、用意しておきます。子どもが一人で自宅にいるときに災害が発生して避難が必要になったり、例え一緒にいても、避難途中に子どもとはぐれることもあります。避難所で時間を過ごすときに使うカードゲームや本、またお菓子など、好きなものを入れたり、子どもと防災を考えたりするきっかけ作りにもなるので、子どもと一緒に作ることをオススメします。

そして、入れるものの優先順位は、第一位は眼鏡や薬、補聴器などの体の一部になるもの、避難するときに必要なもの。余裕があったら、水や食料などを入れていきます。命よりも大切なものはないので、くれぐれも重くしすぎず、走って逃げられる重さにとどめてください。

 


奥村奈津美さん

奥村奈津美(おくむらなつみ)

NHK「おはよう日本」「あさイチ」などテレビ・ラジオをはじめ、雑誌・新聞な ど様々なメディアで「おうち防災」の専門家として出演。

東京都生まれ。広島、仙台で地方局アナウンサーとして活動。その後、東京に戻りフリアナウンサーに。 TBS『はなまるマーケット』で「はなまるアナ」(リポーター)を務めるほか、 NHK『ニュースウオッチ9』や『NHKジャーナル』など報道番組を長年担当。 東日本大震災を仙台のアナウンサーとして経験。以来10年以上、全国の被災地を訪れ、 取材や支援ボランティアに力を入れている。防災士、福祉防災認定コーチ、防災教育推進協会講師、 防災住宅研究所 理事、東京都防災コーディネーターとして防災啓発活動に携わるとともに、 環境省 森里川海プロジェクトアンバサダーとして「防災×気候変動」をテーマに取材、発信中。

「サステナブル防災」という言葉を作り、防災×SDGsの普及活動に力を入れる。3歳児の母。

HP:https://natsumiokumura.com

【Instagram】https://www.instagram.com/natsumi19820521/

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