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これからの時代、配送は完全無人のロボットになる!? きたる未来について、開発会社に聞いてみた

2023.11.14

昨今、配膳サービスロボットの導入など、ロボットの存在を身近に感じることが増えてきたと感じる方も多いのではないでしょうか。高齢化の進展や出生率の低下などによる働き手不足が懸念されている中、今後の日本では、ロボットはさらに存在感を増し、未来の労働力を担う存在になっていくと想像できます。完全自走式の配送ロボットなど、屋外の物流分野で活躍するロボットの開発を行うLOMBY(ロンビー)株式会社に話をうかがいました。

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自動配送ロボットLOMBY「LM-R1」

ロボット配送サービスの登場は、2023年からが本番!? 

――“自動配送ロボット”とは、一般的にどういうものを指すのでしょうか?

自動配送ロボットとは、運転や操作が不要で、自動的に目的地まで走行できる機能を持っている小型の配送ロボットを指すことが一般的です。最近、レストラン内で配膳をするロボットが普及し始めましたが、これらは屋内で走行する自動配送ロボットです。

一方、弊社で開発中のロボットは屋外を主に走行するロボットです。物流拠点から届け先である個人宅までの区間など、利用者が宅配物を手にするまでの最後の配送区間はラストワンマイルと呼ばれており、今は人が配送していますが、それを無人で行うことを目標としています。

――すでにロボットでの配送サービスが導入されている事例はあるのでしょうか?

2023年10月末時点で、国内で大規模に商業利用されている屋外の自動配送ロボットはありません。2023年4月に改正道路交通法が施行され、「遠隔操作型小型車」という新しい区分ができ、自動配送ロボットが公道の歩道部分を走行できるようになりました。今後、自動配送ロボットがさらに普及していくことが期待されています。

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今後、様々なエリアで自動配送ロボットがさらに普及することを期待

ロボット導入のメリット

――ロボットでの無人配送が可能になる大きなメリットは何でしょうか?

日本は世界でもっとも高齢化が進んだ超高齢社会であり、将来的に国内の労働人口は減少していくと予測されています。一方、コロナ禍で通販やフードデリバリーを初めて使われた方も多いと思いますが、自宅へのデリバリーはここ数年で日常生活の一部として定着しました。今後、こうしたデリバリー慣れした消費者の高齢化に伴って、配送需要も増加していくと考えています。

ロボットは、こうした将来的な配送需要に対して、人手に頼らず対応できます。また、人件費のように社会環境の変化に伴って急激に変動したり、採用等の管理コストがかかったりせず、労働コストを安価で安定したものにすることが可能です。

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建物内での配達のイメージ

自動配送ロボット「LOMBY」について

――貴社は自動配送ロボット「LOMBY」の実証実験を行っていますが、そもそも、どのようなことができるのでしょうか?

LOMBYは、屋外を無人で走行して飲食店の店舗や配送会社の拠点から個人宅へ配送することが可能です。道路交通法上で最高時速は6km/hと人の小走り程度に速度制限されていますが、拠点から2km圏内を遅くとも30分程度で配送することが可能です。

LiDAR(ライダー)と呼ばれる車の自動運転にも用いられているレーザー光を照射して、自分の位置を特定したり、障害物を検知したりできます。それによって、昼夜問わず自動で走ることができるんです。

現在は、都内の天王洲アイルエリアや広島市内で実証実験を行っています。都内では、国内外からの遠隔操作の試験やセンサー類の調整等のため、歩道での走行試験を実施しています。すれ違う方々には「かわいい!」と言っていただけますが、お散歩中の犬にはとても警戒され、怯えられてしまいます…笑。また、広島市内では地元の大学に協力いただき、高層階への配送試験も実施しています。

今後、実際に使っていただき「便利!」と言ってもらえるようなサービスにしていきたいと思っています。

――開発のきっかけは?また、いつごろから開発が始まったのでしょうか?

LOMBYの開発は、物流におけるラストワンマイルの再配達をなくすことを目指して、置き配バッグOKIPPA(オキッパ)という簡易宅配ボックスを製造している、Yper(イーパー)株式会社の新規事業として2021年の4月に開始しました。

OKIPPAも累計販売数20万個を突破して、多くの方に利用いただいている商品ですが、今後、国内の労働人口が減少する中で玄関前まで届ける人が不足する方がより社会的に大きな課題になるのではないかと感じ、人に頼らない労働力の提供方法について検討に入りました。その後、本格的に量産化を進めるため、1年後の2022年4月にLOMBY株式会社を新設し、開発を始めました。

――開発で苦労している点などはありますか?また、こだわりのポイントはどんなところでしょうか。

現在、世界でも屋外の公道で本格的に商業展開しているロボットを用いた配送事業者はいないため、ハードからソフトまで自分たちで開発する必要があり、手探りでの開発は苦労の連続です。

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エレベーターとのシステム連携試験を行なっている様子

現在、世の中に存在する配送ロボットは、人が荷物をロボットに預け入れ、配送先で人が荷物を取り出すようなオペレーションになっていますが、それだといつまでも現場に人が必要です。そこで、LOMBYでは、ロボットに自動で荷物を積み込むことができる宅配ロッカーも開発しています。それが実現すると24時間無人でモノを移動させることが可能になり、ロボットの利用価値も高まると思っています。

また、LOMBYは屋外から建物内まで入って走行できるように開発しており、エレベーターとシステム連携をして建物内の各フロアまで荷物を届けることが可能です。

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エレベーターとのシステム連携により建物内の各フロアまで荷物を届けることが可能に

――1回の充電でどのくらい動けるのですか?搭載できる重量などはどのくらいでしょうか。

1回の充電で5-6時間連続走行できる交換式のバッテリーを2台搭載できるようになっています。荷台には最大25kgの荷物を入れて運ぶことが可能で、人が登ると「大変だ」と感じる傾斜10度くらいまでの坂道も登ることができます。

これからの社会に向けて

――どのような場所での導入・活用を想定していますか?屋外公道での走行向けにスズキ株式会社さんと共同開発もされていくとのことで、その点もお伺いさせてください。

宅配便や飲食店、小売店の拠点から2km以内の近距離配送での活用を想定しています。また、ロボット配送であればコンビニエンスストアからの24時間無人配送や、配送依頼してからあまり待たずとも荷物が届くオンデマンド配送など、人では難しいサービスもできる可能性があります。

スズキ株式会社は高齢者向けのセニアカーや電動車椅子で国内トップシェアの企業です。今後の超高齢社会の中でそうしたモビリティの需要は高まると予測され、高齢者向けモビリティと配送ロボットの部品を共通化できれば、製造コストや整備コストを安く抑えることができます。そうなれば、安価なサービスを社会に提供できると考えており、共同開発を進めさせていただいています。

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屋外公道での走行向けにスズキ株式会社さんと共同開発も行なっている

――最後に、読者にメッセージをお願いします。

まだまだロボットでのサービスは発展途上で、人と比較するとできないことは多いのですが、今後、ロボットだからこそできる付加価値サービスを考えていきたいと思います。ぜひ皆さんの生活圏内でLOMBYサービスが開始したら、お気軽に試していただき率直な感想を頂けると大変嬉しいです。

 

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LOMBY株式会社

2022年4月創業のスタートアップ。国内の労働人口が減少する中で、屋外の物流分野にロボットでの労働力の提供を目指して、現在、自動配送ロボットを開発中。
公式HP:
https://lomby.jp/

企画・編集=Concent 編集委員会


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