あなたとエネルギーをつなぐ場所

エネルギーの最新技術が満載!環境や人権にも配慮した「大阪・関西万博」で未来社会が見える!?

2024.01.25

column38_01

(提供:2025年日本国際博覧会協会)

 

「いのち輝く未来社会のデザイン」がテーマの2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)のコンセプトは、「People’s Living Lab(未来社会の実験場)」。持続可能な開発目標(SDGs)の達成など、世界共通の課題解決に向けて、アイデアを創造&発信する場になることを目指しています。新しいエネルギー、新しい移動手段、新しいリサイクルの取り組み…。大阪・関西万博には、未来を見据えた新しいチャレンジがいっぱい!今回は万博運営のキーマンである、2025年日本国際博覧会協会 持続可能性部長の永見 靖さんに、大阪・関西万博における持続可能性に関する取り組みや最新のエネルギー技術、そして万博を通じて伝えたい未来社会などについてお話を伺いました。

 

column38_02

公益社団法人 2025年日本国際博覧会協会 企画局上席審議役兼持続可能性部長を務める永見 靖さん

 

持続可能性に配慮した大阪・関西万博を目指して

永見さん「大阪・関西万博では持続可能な運営を目指し、環境と人権の問題にセットで取り組んでいます。持続可能性というと、2020年ぐらいまでは主に環境への配慮をイメージすることが多かったと思いますが、最近では人権も含む概念になっています。一つ例を挙げると、大阪・関西万博で来場者の方が何か“もの”を新しく買って使う時。その“もの”の原材料はどこから来たのか、開発途上国などで過酷な労働を強いてつくられたものではないか、つくる過程で環境を破壊していないか、使い終わった後はどこにどんな風に廃棄されるのか、廃棄される場所の近くに住む人に影響はないか…など、環境と人権の両面への配慮を欠かさないようにしています。私が所属する持続可能性部が中心となり、博覧会協会内で準備にあたる他部署への働きかけはもちろん、民間パビリオンも含めた大阪・関西万博に関わるあらゆる方々に“持続可能性”の視点の重要性を伝え、取り組みを推進しています」

 

具体的な取り組みとして、例えば万博の会場では、使い捨ての容器やプラスチック製品はなるべく使わないことなどを各レストランやパビリオンにも協力を要請する予定だそう。また、海外からの来場者や障がいのある人たちも安心して楽しめるよう、自動翻訳やユニバーサルデザインなどの導入も積極的に進められているようです。

 

column38_03

国籍や障がいの有無にかかわらず、来場者全員が楽しめる万博を目指す(提供:2025年日本国際博覧会協会)

 

会場では電化を推進。電気で動くバスも運行予定!

国を挙げて2050年までにカーボンニュートラルの実現を目指す今、大阪・関西万博でも脱炭素の先進的な取り組みに挑戦しようとしています。

 

column38_04

永見さんは「大阪・関西万博では電化をはじめ、あらゆる側面から脱炭素化に取り組む」と力強く話す

 

永見さん「大阪・関西万博は、SDGs達成を目指すだけではなく、その先の『SDGs+beyond(エスディージーズ プラス ビヨンド)』への飛躍の機会と捉えています。SDGsは2030年までの達成が目標とされていますが、2030年以降の未来をどのように見せていくのか、足元でどのような対策をしていくのかを示すため、2023年に『EXPO 2025 グリーンビジョン』を策定しました。まず足元の対策でベースとなるのが、エネルギーの脱炭素化。そこに大きく貢献するのが電化(暮らしや経済活動に必要なエネルギー源を、CO2を排出する化石燃料から電気に置き換えること)です。大阪・関西万博の会場内ではできるだけ電気を使うことにして、その発電にはCO2を排出しない再生可能エネルギーなどの非化石電源を利用します。万博の会場内では『EVバス(電気バス)』も導入する予定です。それと並行して、省エネの取り組みも進めていきます」

column38_05

大阪・関西万博会場内で運行予定の「EVバス」(提供:関西電力・Osaka Metro)

 

永見さん「また、使用済み天ぷら油などの廃食用油を再利用してつくるバイオディーゼル燃料や、太陽光発電などからつくる合成燃料の利用も促進します。例えば、バイオディーゼル燃料は5%ぐらいであれば軽油に混ぜて使うことができるので、電化が難しいトラックなどの物流に生かせると考えています。こうした脱炭素の取り組みを利用して、大阪・関西万博におけるカーボンニュートラルの達成を目指していきたいと思っています」

 

来場者や地域の方々と一緒に脱炭素に貢献する

大阪・関西万博では、開催期間中や会場内だけでなく、開催前後や会場外の温室効果ガス排出量などにも意識を向けています。
過去の万博や東京2020オリンピック・パラリンピック等で公表されてきた数値をもとにして試算すると、大阪・関西万博開催期間中の会場内における温室効果ガス排出量が合計3万トン程度であるのに対し、来場者の移動や宿泊、飲食料品などの製造から廃棄といった開催前後や会場外における排出量は315.2万トン(※)となり、今回の大阪・関西万博を運営する中で突出した排出源になると推定されています。こうなると、運営側の努力だけで大幅な排出量削減をするのは難しいのでは…?

※「持続可能な大阪・関西万博開催にむけた行動計画 第1版概要版」温室効果ガスの排出量推計と目標設定Scope3 相当(会期前後や会場外の排出)」より

 

column38_06

開催期間中の想定来場者数は約2,820  万人。来場者の移動や宿泊などで排出される温室効果ガスの削減についても働きかけを行う(提供:2025年日本国際博覧会協会)

 

永見さん「大阪・関西万博の開催前後や、開催期間中の会場外の温室効果ガスの排出削減に関しては、みなさんのご協力が不可欠だと思っています。そこで予定しているのが、『EXPOグリーンチャレンジ』という取り組みです。具体的な内容は構想段階ですが、『マイボトルを使いました』『使用済み天ぷら油の回収に協力しました』など、温室効果ガスの排出削減につながる行動を起こしていただいた時に、専用アプリを通してポイントを付与。ポイントが貯まったらプレゼントの抽選に応募できるなど、みなさんが楽しんで取り組むことができる仕組みづくりを進めています」

 

column38_07

マイボトルの利用も温室効果ガスの排出削減につながる(shimi / PIXTA)

 

永見さん「現在、レストランなどで使われた業務用の廃食用油回収は進んでいますが、家庭からの回収はこれからという段階。万博をきっかけに使用済み天ぷら油の回収といった行動が日常的なものとなれば、それ自体が閉会後も大阪・関西万博の『レガシー』として残ります」

 

一人ひとりの行動が変われば、未来社会に踏み出す大きな一歩となりそうです!

 

column38_08

 

新たなエネルギーの技術を通して明るい未来を提示

永見さん「2050年カーボンニュートラル達成に向けた具体像として、エネルギーに関する新たな技術もお見せしていきたいと考えています。例えば、従来型の太陽光パネルよりもはるかに薄くて軽いペロブスカイト太陽電池は、これまでは重さがネックとなって設置できなかった建物の壁面や屋根、さらに曲面の部分にも貼り付けることができます。万博の会場では、バスシェルターの屋根に設置し、蓄電池に貯めた電力を夜間のLED照明などに活用しようと考えています」

ペロブスカイト太陽電池は、その特長を生かし、将来的には街中のさまざまな場所で幅広く活用される可能性が高いとか。また、製鉄の副産物として発生した、あるいは再生可能エネルギーでつくった水素の運搬・発電の技術や、二酸化炭素を大気中から直接回収したり、貯めたり、活用したりする技術などを、企業や団体、公式参加者とも協⼒しながら⾒せていきたいとのこと。大阪湾に囲まれた夢洲(ゆめしま)が、未来のエネルギーを体感できる場所になりそうです!

 

column38_09

会場の西ゲート交通ターミナルのバスシェルター。屋根にフィルム型のペロブスカイト太陽電池を設置する(提供:積水化学工業)

 

永見さん「今回の万博は将来的に実用化が期待される新たなエネルギーを含めた環境、そして人権について、『初めて知りました!』という体験がたくさんできる場にしていきたいと考えています。取り組みの一つとして、代替肉を使った料理の提供も今後検討していきます。動物愛護の視点だけではなく、代替肉は温室効果ガスを排出する家畜を育てずに効率よくカロリーを摂取できる食べ物です。ヴィーガンの⽅も安⼼して⾷べられます。万博をきっかけに『大豆ミートって意外とおいしいかも!』と感じることも一つの気づきです。大阪・関西万博で感じたことや新たな発見が行動の変化につながり、明るい未来、いのち輝く未来へと、さらにつながっていくとうれしいですね」
 

column38_10

大阪・関西万博の会場「夢洲」


永見 靖

ながみ やすし。公益社団法人2025年日本国際博覧会協会 企画局上席審議役兼持続可能性部長。1996年上智大学法学部卒業後、環境庁(現 環境省)に入庁。2016年に環境教育推進室長(兼民間活動支援室長)に就任、2018年に四国経済産業局総務企画部長に出向後、2022年1月より現職。

 

企画・編集=Concent 編集委員会


★節電情報について知りたい方はこちら!


『無理のない省エネ節電』(経済産業省 資源エネルギー庁 省エネポータルサイト)

『省エネ・節電 お役立ち情報』(電気事業連合会特設サイト)