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節約アドバイザーの和田由貴さんに聞く!夏を快適に過ごすための「エアコン省エネ術」

2025.06.24

気象庁の発表から、2025年の夏も猛暑となることが予想されています。熱中症予防のためにもエアコンを使って涼しく過ごすことは大切だけど、電気代がかさんでしまうのは気になるところ…。そこで今回は、消費生活アドバイザー、家電製品アドバイザー、省エネ・脱炭素エキスパートとしての知識をもとに節約アドバイザーとして活躍する和田由貴さんに、エアコンを適切に使って省エネ&快適にこの夏を乗り切るコツを伺いました。

 

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節約アドバイザーの和田由貴さん

 

夏の省エネ対策の第一歩は「部屋が暑くなりにくい環境」を作ることから

――はじめに、和田さんは普段どのような活動をされているのでしょうか。

節約アドバイザーとして、テレビや雑誌などで節約や省エネについての情報を発信しています。約25年前、活動を始めたばかりの頃は“節約好きな主婦”としてメディアに出演していたのですが、活動していく中で、より確かで役立つ情報を届けたいと考え、消費生活アドバイザーや家電製品アドバイザーなどの資格を取得しました。「節約は、無理をしないで楽しく!」をモットーに、皆さんが取り入れやすい節約情報や省エネアイデアをお届けすることを心がけています。

 

――今年の夏も猛暑が予想されています。省エネを意識しながら快適に過ごすポイントを教えて下さい。

夏は、家庭にある家電製品の中でも、消費電力の割合が大きいエアコンの省エネ対策が重要です。そのためには、まず「部屋が暑くなりにくい環境」を整えてください。直射日光がガンガン入る暑い部屋でエアコンをフル稼働させても、「焼け石に水」です。特に、夏は部屋に入ってくる熱の7割が窓から入るため、窓からの日射しを部屋に入れない工夫が必要になります。

 

▶遮熱カーテンを使用する
特殊な繊維が生地に使用されている遮熱カーテンは、外からの日射しを反射して室内の温度上昇を防いでくれます。日中、自宅にいることが多い方は、遮熱レースカーテンを取り入れるのも良いでしょう。カーテンの買い替えが難しい場合は、普通のカーテンでも出かけるときにきちんと閉めておくだけで部屋の温度が上がりにくくなります。

 

▶すだれやサンシェードを使用する
実は、窓に当たる日射しも熱源となり、部屋の温度が上がる一因に。遮熱カーテンを設置するだけでなく、窓の外にはすだれやサンシェードなどを掛けておきましょう。窓に対して斜めに設置すると、隙間に風が通り、また周囲に日影ができるため、窓から部屋の中に入る熱を抑えられます。集合住宅でサンシェードの設置が禁止されている場合は、窓に直接貼りつけるだけの遮熱シートもおすすめです。

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窓の内側には遮熱カーテン、窓の外側にはすだれやサンシェードを掛けると、より効果的な対策に(東北の山親父/ PIXTA)

 

▶窓をリフォームして家の断熱性を高める
長い目で見ると、家全体の断熱性を高めるリフォームを行うのも一つの手段です。一般的な住宅に使用されているアルミサッシや一枚ガラスは熱伝導率が高いため、夏は暑く、冬は寒くなりやすい特徴があります。初期コストはかかりますが、複層ガラスや二重窓、樹脂窓に取り替えて家の断熱性を高めれば、夏も冬もエアコンの使用を控えることができます。環境省が行っている住宅省エネ2025キャンペーン「先進的窓リノベ事業」の補助金を活用すると、一戸当たり最大200万円の補助が受けられるので、こうした施策を踏まえてリフォームを検討してみるのも良いでしょう。

 

夏が始まる前に知っておきたい!エアコンのお手入れ方法は?

――本格的にエアコンを使うシーズンに入る前に、どんなお手入れをすれば良いですか?

エアコンのフィルターにホコリが溜まると、空気の流れが悪くなり、熱交換の効率が落ちて電力消費が増えてしまいます。本格的にエアコンを使用するシーズンに入る前に、フィルターをしっかり掃除しておきましょう。フィルターは、中性洗剤を使って、使い古した歯ブラシなどで優しくこすり洗いをしてください。洗った後は十分に乾かしてから元に戻します。フラップの間や熱交換器の隙間など、細かい部分の掃除も忘れずに。100円ショップやホームセンターなどで手に入る、細かい隙間用のブラシを使うと便利です。しっかりお手入れをしてエアコンの性能を保つことが、電気代の節約にもつながります。

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シーズン前にエアコンのフィルターはしっかりお手入れを(彩恵/ PIXTA)

 

数年に一度は、専門のクリーニング業者に依頼して、エアコンの内部洗浄も行いましょう。汚れを溜めすぎると故障の原因になりますし、個人的な体感でもクリーニング後はエアコンの「効き」が違うと感じるのでオススメです。自分で内部を洗浄する場合、市販のエアコン洗浄スプレーを使う方法もありますが、使う場合は注意が必要です。このスプレーは、熱交換器の間に吹き付けて汚れを薬剤と一緒にドレンホースから排出する仕組みになっていますから、もし何年も内部のお手入れをしていない場合などは、エアコンの奥やドレンホースに落とした汚れが詰まってエアコンの故障につながりかねません。

それから、エアコンの室外機もシーズン前に必ずチェックしてください。室外機は屋外に設置されているため、泥はねやクモの巣、落ち葉が詰まるなど、汚れがたまりやすい環境にあります。室外機の状態をしっかり確認し、汚れがついていれば取り除いておきましょう。掃除をする際は強い衝撃を与えないよう、柔らかい布やブラシを使って優しく汚れを落としてください。屋外に置くよう設計されているため多少の水濡れは問題ありませんが、高圧洗浄機の使用はNGです。

また、室外機の周りにプランターなどの物が置かれていたり、雑草が生い茂っていたりすると、風通しが悪くなって熱を十分に逃がせません。室外機の周りはスッキリさせて風通しを良くしておきましょう。さらに、直射日光が当たると熱が逃げにくくなるため、室外機の上に日よけを付けて日射しを遮ると効果的です。排気口までふさいでしまうと熱がこもってしまうので、その点は注意してください。

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室外機の日よけ対策も節電に効果的(花火/ PIXTA)

 

――エアコンを毎日使う時期に入ったら、どのくらいの頻度でお手入れが必要でしょうか?

エアコンをフル活用するシーズン中は、2週間に1回程度、フィルターを外してブラシでホコリを落とし、掃除機で吸い取るといった簡単なメンテナンスを行うだけで十分です。フィルターにホコリがたまると、エアコン内部に吸い込まれたホコリに結露の水分が付着し、カビの発生原因となります。省エネだけでなく自分や家族の健康のためにも、定期的にフィルターのお手入れを行いましょう。

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エアコンをフル活用する時期は、2週間に1回程度フィルターのホコリを掃除(Blue-Mount/ PIXTA)

 

最近は、フィルターの自動お掃除機能が付いたエアコンも多く販売されています。ホコリをダストボックスに溜めるタイプと自動で外に排出するタイプがあるので、ダストボックスに溜めるタイプの場合は取扱説明書を確認の上、ダストボックスを定期的にお掃除してください。
 

温度設定は?風向きは?省エネにつながるエアコンの使い方

――省エネを意識しながら、快適にエアコンを使うポイントを教えてください。

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使用頻度が高いエアコンは賢く使って省エネを(yslab/ PIXTA)

 

▶目安は「室温28度、湿度60%以下」
環境省は「室温目安28度」を推奨しています。「エアコンの設定温度を28度にするだけで良い」と誤解している方が多いですが、設定温度と実際の室温は環境によって異なります。室温を確認しながらエアコンの設定温度を調整しましょう。同時に、体感温度に影響する湿度も確認を。湿度が60%を超えると、室温が28度であっても熱中症のリスクがあります。部屋に温湿度計を置き、「室温28度、湿度60%以下」を目安にエアコンを使用しましょう。

【省エネ効果をチェック!】
冷やしすぎに注意し、無理のない範囲で冷房温度を設定する
外気温度31℃の時、エアコン(2.2kW)の冷房設定温度を27℃から1℃上げた場合(使用時間:9時間/日)
年間で電気30.24kWhの省エネ
⇒約940円の節約

参考:経済産業省 資源エネルギー庁「省エネポータルサイト」
※料金単価は、契約している事業者や契約の内容により異なりますので、各電気事業者のホームページなどでご確認ください。

 

▶部屋全体を冷やす風向きは「水平」がベスト
エアコンを効果的に使うには、風向きも重要です。冷たい空気は重く下に落ちる性質があるため、冷房を使用する際には風向きは「水平」が◎。冷気が部屋の奥まで広がり、重さで自然に下に降りてくるので、部屋全体が涼しくなります。通常は、風向きを「自動設定」にしておけば、冷房時には水平、暖房時には下向きに自動で調整されるので、自分で細かく操作するよりも自動設定に任せるのが簡単で効果的です。

 

▶扇風機やサーキュレーターを併用する
エアコンの冷気は向かい側の壁付近、特に下側に溜まりやすいので、サーキュレーターや扇風機を置いて空気を循環させ、室内の冷気のムラを解消しましょう。空気を攪拌して部屋全体の温度が均一になると、エアコンが正確に室温を把握できるようになり、効果的な運転ができて省エネにもつながります。

サーキュレーターと扇風機はどちらも風を送る道具ですが、冷房と併用するなら扇風機がベター。扇風機は広く柔らかい風を出し、直接人に風を当てるので、より体感温度を下げることができます。一方、強く直進的な風を出すサーキュレーターは、部屋の空気を循環させるのがより得意。冬場、暖房で温まった空気が天井に溜まるのを撹拌して部屋全体を暖めるなら、サーキュレーターがおすすめです。

 

▶30分程度の外出ならエアコンはつけっぱなしでOK
真夏日や猛暑日の日中、30分程度外出する場合は、エアコンをつけっぱなしにした方が再起動時の電力消費を抑えられます。外出の時間がそれ以上長くなる場合は消した方が良いでしょう。

※上記は、その日の気温や設定温度と室温の差、運転時間によって変動します。

【省エネ効果をチェック!】
冷房は必要なときだけつける
冷房を1日1時間短縮した場合(設定温度:28℃)
年間で電気18.78kWhの省エネ
⇒約580円の節約

参考:経済産業省 資源エネルギー庁「省エネポータルサイト」
※料金単価は、契約している事業者や契約の内容により異なりますので、各電気事業者のホームページなどでご確認ください。

 

▶エアコンを起動する前に部屋の換気を
部屋が暑くなっている状態でエアコンを起動させると、室温を下げるために多くの電力を消費します。帰宅してエアコンをつける前に、まず窓を開けてこもった熱気を外に逃がすと室温が下がり、省エネにつながります。

 

今日から取り入れたい夏の省エネアイデアをご紹介!

――エアコンの使い方以外にも、夏におすすめの省エネ方法があれば教えてください。

エアコンの効きに影響を与える要因の一つが、照明器具から発せられる熱です。現在、LED照明が主流になりつつありますが、蛍光灯や白熱電球を使っているご家庭もまだ多いと聞きます。特に白熱電球は発熱量が多いため、部屋の温度を上げる原因に。白熱電球や蛍光灯に比べ、もともとLEDは消費電力が少ないという点からも切り替えをおすすめします。

【省エネ効果をチェック!】
電球形LEDランプに取り替える
●白熱電球から交換
54Wの白熱電球から7.5Wの電球形LEDランプに交換(年間2,000時間使用)
年間で電気93.00kWhの省エネ
⇒約2,883円の節約

●電球形蛍光ランプから交換
12Wの蛍光ランプから7.5Wの電球形LEDランプに交換(年間2,000時間使用)
年間で電気9.00kWhの省エネ
⇒約279円の節約

照明器具をLEDに取り替える
68Wの蛍光灯器具から34WのLED照明器具に交換(年間2,000時間使用)
年間で電気68.00kWhの省エネ
⇒約2,108円の節約

参考:経済産業省 資源エネルギー庁「省エネポータルサイト」
※料金単価は、契約している事業者や契約の内容により異なりますので、各電気事業者のホームページなどでご確認ください。

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白熱電球や蛍光灯をLEDに替えるだけでも省エネに!(Graphs/ PIXTA)

 

また夏場は、エアコンの次に電力消費が多い家電は冷蔵庫です。暑い時期は飲み物を頻繁に出し入れしたり、氷を多く作ったりするため、冷蔵庫に大きな負荷がかかります。そこで取り入れたいのが、保冷水筒。保冷水筒なら丸一日置いても氷が溶けずに冷たさを保てますから、氷と飲み物を入れて食卓に置いておけば、いつでも気軽に飲めて冷蔵庫の開閉を減らせます。

 

【省エネ効果をチェック!】
冷蔵庫の無駄な開閉はしない
旧JIS開閉試験の開閉を行った場合と、その2倍の回数を行った場合の比較
年間で電気10.40kWhの省エネ
⇒約320円の節約

※旧JIS開閉試験:冷蔵庫は12分ごとに25回、冷凍庫は40分ごとに8回で、開放時間はいずれも10秒。

参考:経済産業省 資源エネルギー庁「省エネポータルサイト」
※料金単価は、契約している事業者や契約の内容により異なりますので、各電気事業者のホームページなどでご確認ください。

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保冷水筒は夏場にも使える省エネアイテム(venusangel/ PIXTA)

 

――最後に、読者にメッセージをお願いします。

長い時間エアコンを使用すると電気代が気になるかもしれませんが、熱中症のリスクを小さくするためには適切にエアコンを使うことが大切です。無理をするのは健康面で良くないことはもちろん、そもそも「我慢する省エネ」は続けることが難しいですよね。エアコンの定期的なお手入れや適切な使い方を意識して、健やかかつ快適に、無理のない省エネを目指しましょう。

 

【編集後記】
毎年、夏本番を迎えると、電気料金を見て驚愕してしまうことが度々…今年の夏こそは、猛暑が本格化する前にまずは「部屋が暑くなりにくい環境」の準備を始めようと思いました。皆さんも無理なくできるところから、省エネの工夫を取り入れてみてはいかがでしょうか?
 

和田由貴

わだゆうき。節約アドバイザーとして、消費生活や家電製品、食生活など暮らしや家事の専門家として幅広く活動中。また、環境カウンセラーや省エネ・脱炭素エキスパートという顔も持ち、環境問題にも精通する。2007年に環境省の「容器包装廃棄物排出抑制推進員(3R 推進マイスター)」に選出。活動のモットーは「節約は、無理をしないで楽しく!」で、耐える節約ではなく快適と節約を両立したスマートで賢い節約生活を提唱している。

公式HP:http://wada-yuki.com/

 

企画・編集=Concent 編集委員会


★節電情報について知りたい方はこちら!


『無理のない省エネ節電』(経済産業省 資源エネルギー庁 省エネポータルサイト)

『省エネ・節電 お役立ち情報』(電気事業連合会特設サイト)

『節電情報ポータル』(電気事業連合会特設サイト)