急増するAI需要を支える存在!私たちの日常生活に欠かせない「データセンター」とは?

2026.01.13

今、利用が急拡大している生成AI。チャットでの会話のほか、画像や動画の生成、会議資料の要約…できることが増え、クオリティも向上し、その性能は日進月歩で進化しています。そんなAIによるサービスをはじめ、スマホでメッセージを送る、動画を見るといった日常生活の何気ない行動を支えているのが、「データセンター」という巨大な“デジタルの工場”です。今回は株式会社情報通信総合研究所 主任研究員の左高大平さんに、データセンターについて教えてもらいました。

 

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株式会社情報通信総合研究所 主任研究員の左高大平さん

 

私たちの生活に密接にかかわるデータセンター

――はじめに、左高さんは普段どのようなお仕事をされているのでしょうか。

株式会社情報通信総合研究所で、「データセンター」「通信ネットワーク」「AI」などのデジタル技術をテーマに、調査や研究をしています。情報通信の世界は、日々ものすごいスピードで変化しています。大手IT企業をはじめとする企業がどんな技術を開発し、どんな戦略でサービスを展開しているのかを分析し、調査結果を世の中に広く分かりやすく伝えています。

 

――私たちの生活とデータセンターは、どのように関連していますか。

今は日常のあらゆる行動が、スマホやパソコンでネットを使ってできるようになりました。例えば、友達にメッセージを送る、情報を調べる、動画を見る、銀行口座にお金を振り込む、新幹線の予約をするなど。これらの操作は手元の機器で完結しているわけではなく、必ずデータを処理・保存する「サーバー」と呼ばれる機器(コンピューター本体)と通信しています。例えば、SNSでメッセージを送る場合、自分のスマホから相手のスマホに直接届くイメージがありますが、実際にはメッセージを一時的に預かるサーバーを経由してメッセージが届いています。そのサーバーがたくさん集まっている場所が「データセンター」です。データセンターがあるからこそ、私たちがスマホやパソコンでネットを使うことができるんです。

 

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スマホであらゆるサービスが利用できるのはデータセンターのおかげ(画像素材 / PIXTA)

 

AIの普及に伴ってデータセンターが急増!

――データセンターの中はどんな風になっているのでしょうか。

データセンター内には、サーバーが棚にずらりと並んで置かれています。これらのサーバーは、ネット上でサービスを運営する企業が自社のデータセンターに設置したり、複数の企業がデータセンターの運営会社と契約して設置したりするもので、ネット上のサービスを動かす“頭脳”のような存在です。サーバー同士はケーブルでつながっていて、昼夜を問わずデータのやり取りが行われています。

 

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データセンターの中にはサーバーがずらりと並ぶ(画像素材 / PIXTA)

 

――最近、「データセンターが増えている」というニュースを目にします。

現在、日本国内には200を超えるデータセンターがあり、2020年頃から新設・増設が増えています。2023年4月にGoogleが千葉県・印西市にデータセンターを開設したというニュースを耳にした方もいるかもしれません。最近では、企業が自社でデータセンターを建てて運営するケースも増えてきています。日本国内におけるデータセンターの市場規模は年々右肩上がりに伸びており、2026年以降もさらに伸長すると予測されています。

 

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データセンター市場の規模は拡大を続けている(出典 /IDC Japan, 2024年10月 「国内データセンターサービス市場予測、2024年~2028年」(JPJ51508524))

 

その背景にあるのは、AI技術の急速な普及です。ChatGPTやGemini、Copilotをはじめとする生成AIのユーザーも増えていますし、企業のサービスにおけるAI活用も進んでいます。SNSでメッセージをやり取りするのと同様に、「AIに質問して返答をもらう」という行動もデータセンターを経由しています。そしてAIは、膨大なデータを読み込み、学習し、その中から最適な答えを探し出すという、膨大な計算処理をしており、その処理をするために、データセンターの新増設が増えています。

また、より高速に、より大容量のデータを処理できるよう、サーバーの高性能化も進んでいます。データセンターを増やすだけではAI需要の高まりに追いつかないため、1台あたりのサーバーの処理能力を向上させているのです。今、日本では少子高齢化で労働力が減っていることもあり、生成AIを用いたサービスロボットや自動運転など、「AIでできることを増やそう」という動きがあります。そのため、AIの機械学習の処理に特化したAI専用のデータセンターも次々と建設されています。

 

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AI技術を活用した自律的な自動運転技術の確立に期待が高まっている(画像素材 / PIXTA)

 

脱炭素電源の確保や省エネに取り組む

――データセンターは電気をたくさん使うと聞きました。

「電力の確保」はデータセンターが抱える大きな課題です。データセンターは日本だけでなく世界中で増えていますが、国際エネルギー機関(IEA)の試算によると、データセンターやAIなどの電力使用量は2022年時点の使用量460TWh(テラワットアワー。テラは10の12乗)から2026年には倍増すると予測されています(2024年1月時点、ハイケースの場合)。

 

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世界規模でもデータセンター、AIなどによる電力需要は大きく増加することが見込まれている(出典 / IEA “Electricity 2024”(2024年1月24日公表))

 

先ほど、AIはデータセンターで膨大な計算処理をしているという話をしましたが、データセンターは電気で動くため、計算をすればするほど電力を消費します。一説では、「AI検索はGoogle検索の10倍の電力を使う」とも言われています。この先、AIの進化に伴って活用の幅はより広がり、AIを利用する人はますます増えていくでしょう。それを賄うための電力をいかに確保するかが、データセンターの課題というわけです。

どんな電源を使用するかも大きなテーマです。2050年カーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)の実現に向け、できるだけ化石燃料に頼らず、再生可能エネルギーや原子力などの発電時に温室効果ガスの一つであるCO2を排出しない電源を推進する取り組みが世界各国で進んでいます。さらに、どこから電力を供給するかという点も重要です。発電所が遠ければ長い送電線が必要になり、その分コストもエネルギーロスも発生してしまいます。電源に近い場所と広い土地の確保という観点から、地方にデータセンターを新設するケースも増えています。

 

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データセンターは電力の確保と環境配慮の両立が求められている(画像素材 / PIXTA)

 

――生成AIで何気なく会話をしていましたが、そんなに電気を使っているとは思いませんでした。

そう言われる方はとても多いですね。ただデータセンターでは、できるだけ少ない電力で稼働できるよう、省エネにも力を入れています。例えば、稼働中に大量の熱を放出するサーバーの冷却。以前は部屋全体を巨大な空調で冷やしていましたが、今は、サーバーのある部分だけをピンポイントで冷やす方法が主流となっています。さらに、「液浸冷却」という特殊な液体にサーバーを沈めて効率的に冷やす技術や、熱に強いサーバーが登場するなど、消費電力削減に向けたあらゆる技術革新が進んでいます。

この他、データの送受信時に使う電力を減らす取り組みも実施されていますし、北海道などの寒冷地では、外の冷たい空気をうまく取り入れてサーバーの熱を冷ます「外気冷却」なども採用されています。

 

――最後に、Concentの読者にメッセージをお願いします。

データセンターは、いわば“デジタルの工場”です。スーパーで缶詰やインスタント麺を見かけると、「どこかの工場で作られて、ここまで運ばれてきたんだな」と想像できますよね。それと同じように、データセンターというデジタルの工場で処理が行われ、データが作られ、それが私たちのスマホやパソコンに送られています。

ひと昔前までは、動画やゲームなどの娯楽を楽しむのがインターネットの主な用途でしたが、今やデータ通信は世界中の国々の経済活動にも欠かせないものとなっています。24時間365日フル稼働して私たちの生活を支えている存在として、データセンターを身近に感じてもらえるとうれしいです。

 

【編集後記】
私たちの日常に登場してから瞬く間に暮らしの一部となった生成AI。生活を支えてくれる裏側では、データセンターの稼働増加による電力需要増加という世界共通の課題があり、AI・データセンター開発の最大の課題は電力の確保とも言われています。 「大量の電気をどのように発電するのか」一見遠い話のようで、とても身近な問題でもあります。世界中で議論されている今こそ、私たち一人ひとりでも考えていくことが大切ですね。
 

左高大平(さだか たいへい)

株式会社情報通信総合研究所 ビジネス・法制度研究部 主任研究員。2013年に同社に入社後、ITサービス企画・開発、海外サービス・技術導入検討等に従事。海外、国内のITサービス動向について調査、研究を行う。専門分野は、エッジコンピューティング、データセンター、クラウド、ITサービス、セキュリティ、ネットワーク設備など。

株式会社情報通信総合研究所:https://www.icr.co.jp/

 

企画・編集=Concent 編集委員会


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