「先月とあまり使い方は変わっていないのに、なぜか電気代が高い…」と感じたことはありませんか?実は、家庭の電気代は「使った分」だけで決まっているわけではありません。基本料金や電力量料金、そして燃料価格の変動を反映する燃料費調整額、再生可能エネルギーの普及を支える再エネ賦課金など、さまざまな要素が影響しています。そこで今回は、節約アドバイザー・アフィリエイテッドファイナンシャルプランナー(AFP※)・2級ファイナンシャル・プランニング技能士・消費生活アドバイザーの丸山晴美さんに、電気代の仕組みや明細を読むときのポイントをわかりやすく教えていただきました。
※FP資格には、国家検定であるFP技能士と、日本FP協会が認定するAFP資格・CFP(R)資格があります。AFP資格は、2級FP技能検定の合格やAFP認定研修の修了などを要件とする、日本FP協会認定の資格です。

節約アドバイザー・アフィリエイテッドファイナンシャルプランナー(AFP)・2級ファイナンシャル・プランニング技能士・消費生活アドバイザーの丸山晴美さん
Q1. 電気代は「使った分」だけで決まるのでしょうか?

電気代は、「基本料金+電力量料金+燃料費調整額+再エネ賦課金」という4つの要素を組み合わせて計算されています。
1. 基本料金
電力会社や料金プランによって異なりますが、契約している電気の容量などによって決まります。
2. 電力量料金
実際に使った電気の量に応じて計算される料金です。料金プランによっては、使用量に応じて単価が段階的に変わる仕組みが採用されています。
例えば、東京電力エナジーパートナーの従量電灯Bなどの契約プランでは、使用量に応じて料金単価に差を設ける「三段階料金制度」が採用されています。
第一段階(使用量が月間120kWhまで):ナショナル・ミニマム(国が保障すべき最低生活水準)の考え方を導入した比較的低い料金
第二段階(使用量が月間121kWh~300kWhまで):標準的なご家庭の1か月のご使用量をふまえた平均的な料金
第三段階(使用量が月間301kWh以上):やや割高な料金
※東京電力エナジーパートナー「三段階料金制度について知りたい」より引用。
3. 燃料費調整額
火力発電に必要な原油・LNG・石炭の燃料価格(為替を反映した円建ての日本着ベースの価格)の変動を、毎月の電気代に反映したものです。
4. 再生可能エネルギー発電促進賦課金(再エネ賦課金)
太陽光や風力などの再生可能エネルギーの普及を支えるため、電気を使う人全員が使用量に応じて負担する費用です。
Q2. 毎月の電気代が変わるのはなぜですか?

毎月の電気代が変動する一番身近な理由は、エアコンの使用や在宅時間の増減などによって「電気の使用量」が変わることです。ただし、電気代は家庭内の使い方だけで決まるわけではありません。世界情勢の影響を受ける燃料価格や為替の変動は、「燃料費調整額」を通じて電気料金に反映されます。また、国による電気・ガス料金支援の有無など、家庭では直接コントロールしにくい要因も請求額に影響します。
なお、再エネ賦課金は毎月変動するものではありませんが、年度ごとに単価が見直されるため、同じ使用量でも年度をまたぐと請求額に影響することがあります。このように、使用量だけでなく、さまざまな要素が組み合わさることで、毎月の電気代は変わってくるのです。
Q3. 「燃料費調整額」とは何ですか?

燃料費調整額は、火力発電に必要な原油・LNG(液化天然ガス)・石炭の燃料価格の変動を、電気料金に反映するためのものです。燃料価格の動向によって電気代に加算される場合も、差し引かれる場合もあります。
日本の電気の約7割は、原油・LNG(液化天然ガス)・石炭を燃やす火力発電でつくられていますが、これらの燃料資源は海外からの輸入に頼っています。そのため、世界情勢や円安・円高といった為替レートの影響を受けやすい特徴があります。
例えば、1970年代のオイルショックでは、当時発電の主力だった石油火力の燃料となる石油価格が高騰しました。また、2022年のロシアによるウクライナ侵攻では、LNGや石炭などの燃料価格が上昇しました。近年の円安基調も、海外から燃料を調達するコストに影響します。
海外で燃料価格が上がったり円安が進んだりすると、調達コストが上がり、燃料費調整額が電気代を押し上げる方向に働きます。逆に、燃料価格が下がったり円高が進んだりすると、燃料費調整額が電気代を引き下げる方向に働きます。
また、燃料価格が変わってから毎月の電気代に反映されるまでには、タイムラグがあります。家庭の電気代の急激な変化を抑えるために、過去3カ月間の平均燃料価格をもとに計算し、2カ月後に反映される仕組みになっているためです。例えば、10月分の電気代であれば、5~7月分の平均燃料価格が反映されています。
なお、市場からの電力調達を主とする一部の自由料金メニュー(※)では、燃料価格の高騰などによって電力市場価格が上昇すると、その影響が電気料金に反映されやすく、電気代が大きく上がる場合があります。
※電力自由化以降、電力会社が独自に設定する料金プラン。
Q4. 「再エネ賦課金」は何のために支払うものですか?

太陽光や風力、地熱、水力、バイオマスなどの再生可能エネルギーを広げていくためには、設備の導入などに費用がかかります。そこで国は、再生可能エネルギーの電気を電力会社が決められた価格で買い取る「FIT制度(固定価格買取制度)」などの制度を通じて、再エネ発電設備の導入を後押ししてきました。再エネ賦課金は、こうした制度で電気の買い取りにかかる費用を賄うために、全国一律の単価で利用者が使用量に応じて負担するものです。
再生可能エネルギーは、発電時のCO2排出量を抑えられる電源として期待されており、導入が進めば、輸入燃料への依存を抑えることにもつながります。
一方で、再生可能エネルギーは天候などによって発電量が変動しやすい面もあるため、変動分を火力発電など、ほかの発電方法で支える必要があります。電気を安定的に使い続けるには、さまざまな電源を組み合わせていく「エネルギーミックス」の視点も大切です。
また、再エネ賦課金の単価は年度によって増減があるものの、再生可能エネルギーの広がりに伴っておおむね上昇傾向となっています。制度が始まった2012年度は0.22円/kWhでしたが、最新の2026年度は過去最高となる4.18円/kWhとなっています。
Q5. 「電気代が上がったかも」と感じたら、まず何を確認すればよいですか?

最近は紙の検針票ではなく、Web明細やアプリで確認するケースも増えています。「紙で届かなくなってから、明細をあまり見なくなった」という方もいるかもしれませんが、電気代の変化を知るためには、毎月の確認が大切です。
明細では、まず使用量(kWh)に注目しましょう。前年同月と比べて使用量が増えているなら、家庭での電気の使い方や在宅時間の変化が、電気代が上がった主な原因かもしれません。あわせて、燃料費調整額や再エネ賦課金などの内訳も確認してみてください。使用量が減っているのに電気代が上がっている場合は、こうした使用量以外の項目が影響している可能性があります。
Q6. 電気代を見直すなら、どの家電から確認するとよいですか?

まずは使用時間が長い家電など、電気使用量に影響しやすいものから確認してみましょう。なかでもエアコンは、電気代に大きく影響しやすい家電の1つです。夏は室温28度、冬は20度を目安に、無理のない範囲でエアコンの設定を調整し、こまめにフィルター掃除をしましょう。24時間稼働する冷蔵庫も、設定温度の見直しや詰め込みすぎの防止、壁との隙間を空ける工夫で節電につながります。
また、照明は、蛍光灯からLEDに変えることで消費電力量を抑えやすくなります。さらに、暖房便座や炊飯器、保温ポットといった「熱を発する家電」も、使い方によっては電気代に影響しやすいため注意が必要です。
Q7. 電気代の仕組みを知ると、家計管理にどう役立ちますか?

電気代は「使った分」だけでなく、基本料金や燃料費調整額、再エネ賦課金といったさまざまな要素で成り立っています。この内訳を知ることで、電気代が上がったときも、使用量が増えたのか、燃料費調整額や再エネ賦課金など使用量以外の項目が影響しているのかを見極めやすくなります。
電気代の明細が理解できれば、「なぜ高くなったのか」を落ち着いて確認できるようになります。電気は暮らしに欠かせないインフラだからこそ、暑さや寒さを無理に我慢するのではなく、仕組みを知ったうえで上手に使い、見直せるところから家計管理につなげていきましょう。
電気代は冷暖房をよく使う季節以外でも、家電の使い方次第ではじわじわと家計を圧迫します。少しでも負担を減らすには、毎日の小さな積み重ねが欠かせません。例えば、使っていない部屋のこまめな消灯や使用頻度が少ない家電のプラグを抜いておくなど、無理のない範囲での工夫が大切です。家計を守りながら快適に過ごすためにも、家庭の電気の使い方を今一度振り返ってみましょう。
丸山晴美(まるやま はるみ)
節約アドバイザー・アフィリエイテッドファイナンシャルプランナー(AFP)・2級ファイナンシャル・プランニング技能士・消費生活アドバイザー。20代で節約に目覚め、貯蓄を重ねて26歳で住宅を購入した経験がメディアで取り上げられる。2001年に節約アドバイザーとして独立。食費や電気代などの光熱費、通信費をはじめとする家計の見直しや、ライフプランを見据えたお金の管理・運用について、執筆・監修・講演など幅広く活動している。
公式サイト:http://www.maruyama-harumi.com
企画・編集=Concent 編集委員会