全国各地にある発電所、その数はなんと4000カ所以上。一口に発電所といっても、実は一つ一つ違った個性があるんです。今回は、いま注目を集めている沖縄県東部で見つけた南国情緒あふれる火力発電所へ。地元をよく知る沖縄電力の社員さんがオススメするグルメや観光スポットと共に、東海岸の楽しみ方を教えちゃいます!
360度の絶景!沖縄の世界遺産最古のグスク
沖縄本島中部の東海岸沿いに位置し、金武湾(きんわん)を囲むように延びる勝連半島や8つの島が連なる、沖縄県うるま市。
那覇空港から車で90分というその場所は、「うる=サンゴ」、「ま=島」という方言から「サンゴの島」を意味するなんともロマンティックな町だ。
牛同士を戦わせる「闘牛(ウシオーラセー)」が盛んな地域としても知られるが、近年、美しいビーチや静かな時間を過ごせる環境が観光客に好まれ、ひそかに人気が高まってきている。
そんなうるま市をめぐる旅で、最初に訪れたいのは、2000年に世界文化遺産登録された「琉球王国のグスク及び関連遺産群」の一つ、「勝連城跡(かつれんじょうあと)」。
グスクとは城のこと。勝連城跡は世界文化遺産に登録された5つのグスクの中で最も古いとされ、逸話も数多く残されている
12~13世紀ごろに築城されたといわれ、琉球王国が安定していく15世紀には、国王に最期まで抵抗した阿麻和利(あまわり)という沖縄の英雄が居城としていたことで、地元では広く知られている。
「勝連城跡があるのは、標高98メートルほどの丘陵の上。頂上まで登れば、北に金武湾と離島群、南に知念半島や久高島などが一望できます!」(沖縄電力社員)
頂上から見える金武湾と離島群。うるま市街も一望でき、町を訪れたら最初に見渡したい景色だ
城跡のふもとにある休憩所までは車で入れるが、そこからは徒歩で登らなければならない。15~20分ほどで頂上まで到達できるものの、城跡だけに石階段などはかなりの急斜面。想像以上に険しい道なので、歩きやすい靴を用意しておこう。
途中までは舗装した道路や階段が整備されているが、頂上に近づくと急斜面の石階段に。芝生で朝ヨガをやっていることもあるそう
城跡は、一から四の曲輪(くるわ)と呼ばれる層に分かれている。頂上までの道すがら、縁結びの井戸「ミートゥガー(夫婦ガー)」や、ウミチムン(火の神)といった神様が祀られている御嶽(うたき)が点在。
頂上となる一の曲輪には大きな岩をご神体とする「玉ノミウヂ御嶽」もあるので、神聖な空気を感じられるはず。
四の曲輪にある「ミートゥガー(夫婦ガー)」の前で恋が成就すると、永遠の契りになるという。ただ、失恋してしまうと、男女のいずれかに不幸が起きるという言い伝えもあるとか
「帰る前には、ふもとの休憩所にも立ち寄ってみてください。中にはお土産店がありますし、座敷席もあるので、ひと息つけますよ」(沖縄電力社員)
お土産店「うるま~る」では、「食べるもずくスープ」(175円)や「うないのもずく佃煮」(500円)といった地産品のほか、県内で有名なファストフードレストラン・A&Wの「ルートビア」(130円)も買える
美しいビーチを望む沖縄随一の火力発電所
次に訪れたいのは、沖縄・東海岸で隠れ家ビーチとも呼ばれる宇堅(うけん)ビーチのすぐ横にたたずむ「具志川(ぐしかわ)火力発電所」だ。
高くそびえた煙突がランドマークの具志川火力発電所。海上に伸びるのは、全長780メートルの石炭を運ぶためのベルトコンベア
発電所の隣にある宇堅ビーチ。近年、観光客の間で人気が高まっている
具志川火力発電所が運転を開始したのは1994年と、およそ25年前。発電所前に広がる金武湾沿岸には、具志川、石川、金武という3つの火力発電所が集まっており、まさに沖縄のエネルギーを支えてきたエリアだ。
そんな具志川発電所では、施設内を一周できる見学ツアーが実施されている。蒸気タービンを回して電気を生む「発電機」や運転を管理する「中央制御室」、燃料となる石炭を保管する「貯炭場」などを約90分でめぐることができるのだ。
まず、ツアー序盤に驚かされるのが「発電機」。高さ約25メートル、奥行き約77メートルの広い部屋に2台の大型機器が並べられ、きっとその広さと大きさと轟音に圧倒されるはず。
発電機1機の定格出力は15万6000キロワット(kW)。1、2号機合計で31万2000キロワットの出力があり、沖縄本島の発電の中核を担っている
「ちなみに、発電機の中に入っている電子機器は、砂漠のような熱い地域で使われているものと同じスペックなんです。外から見ても全く分かりませんが、暑さ対策が組み込まれているというのも、沖縄ならではですね」(沖縄電力社員)
見学ブースから見ることができる中央制御室では、燃焼しているボイラ内をモニター監視するほか、2つの発電機の発電量を常時制御している
見学コースの途中で横を通る微粉炭機。大きな石炭を砕いて粉状にする機械だ
発電機のフロアを出ると、次はバスで所内を一周する。全長170メートルを誇る集合煙突や風力発電用の風車、石炭船が横付けするベルトコンベアといった発電所ならでは風景を車内から眺めていると、不意に目に入るのが熱帯植物。景色を緑と南国色で和らげてくれている。
貯炭場前ほか亜熱帯植物の「アダン」は、敷地内各所で見られる。施設本館の屋根が瓦になっているなど、発電所なのに何だかほんわかとした雰囲気
右奥に見えるのは「木質バイオマス供給設備」。具志川火力発電所では、廃材などから作る木質バイオマスを燃料の一部に使っており、二酸化炭素の排出量削減に貢献しているという
そして見学終盤に登場する「貯炭場」。大きな2棟の建物からなり、扉の向こうに広がるのは衝撃の“黒”。その正体は、積みに積まれた石炭の山だ。目の前に広がる迫力のある光景は、ぜひ実際に見て確かめてほしい。
貯炭場の中には、石炭が大量に保管されている。その受入量は、なんと年間約70万トン。石炭は屋根から搬入され、地下から搬出。粉状に粉砕されて、風でボイラまで運ばれる
石炭はだいたい拳くらいの大きさで輸入されるそうで、1個の重さは600グラムほど。1つの棟の中に最大で6万トン収容できるため、この中におよそ1億個もの石炭が貯蔵できることになる。
屋内に石炭を貯蔵する発電所は、全国的にも多くない。これも夏の日差しが強く、台風が多いといった沖縄ならではの気候条件に合わせた工夫なのだ。
素人目には分からないが、貯炭場には2種類の石炭がある。真っ黒なのがオーストラリア産(写真)、少し茶色いのがインドネシア産だそう
また、施設内には県内唯一の電気科学館も併設している。
「2020年3月に展示物を全面リニューアルする予定です。それに先駆けて『4Dシアター』をオープンしたので、360度大画面の立体映像を体感してください!」(沖縄電力社員)
4Dシアターは映像に合わせて地面が揺れ、風が吹く! 沖縄の伝統文化や海、宇宙をテーマにした立体映像が楽しめる
「夜になると、ベルトコンベアの先に停泊している石炭船に明かりがともります。宇堅ビーチなどから見ると、まるでライトアップされているようで、とてもきれいですよ」(沖縄電力社員)
ビーチの横にある発電所というのも沖縄ならでは。ここでしかできない体験を楽しんでほしい。
まるで海上レストラン!マリンレジャーまで楽しめる海の駅
最後に訪れたいのは、海の上。うるま市南端の勝連半島と平安座島(へんざじま)などの離島を結ぶ海中道路上にある「海の駅 あやはし館」だ。
船に見立てた建物の裏には、白い雲、青い空、広い海…沖縄で絶対に見たい景色が大パノラマで待っている
全長4.7キロある海中道路はドライブコースとして人気スポットだが、その途中で車を止めると、まるで“海上レストラン”ともいえるロケーションが広がっている。
お土産ショップなどがある館内でオススメしたいのが、2018年11月にオープンした「沖縄そば処 すぬい」。「すぬい」とは沖縄の方言で「もずく」のことで、地元産のもずくを使ったさまざまな沖縄料理が味わえる。
沖縄名物を全部食べたい人は「すぬいづくし」を。もずくが練り込まれた麺が入る沖縄そばに、ジューシー(炊き込みご飯)、天ぷらなどが付いて1000円は破格!
外はサクっと、中はモチモチな名物・もずくの天ぷらは、1個100円で販売している。体にも財布にも優しいローカルファストフードだ
実は、日本で流通しているほとんどのもずくは沖縄産。そのうちの9割ほどがうるま市で作られているそうで、毎年4月の第3日曜を「もずくの日」としているほど、地元で愛される食材だ。
「もずくの天ぷらは絶品です!浜比嘉島や金武湾を望むオーシャンビューで食べられるなんて、他ではなかなか体験できません!」(沖縄電力社員)
あやはし館の裏には、海に面したテーブル席が。ここでランチを食べれば、料理と共に景色までおいしく味わえるはず
お土産ショップでは、かりゆしウェアやうるま市出身アーティスト「HY」の限定Tシャツのほか、地元を中心に沖縄県各地のお土産品がズラリ。
津堅島(つけんじま)の「津堅ニンジン」や、伊計島(いけいじま)の「黄金芋」など、うるま市離島の特産品なども多く、歩き回ればきっと面白い発見があるはず。
外に出ればピザバーやスイーツ店と、バラエティに富んだコンテナショップも並ぶ。海をバックにオシャレな写真を撮るには最適だ。
夏本番を迎えるころには、野外イベントなども計画中。ドライブで島々をめぐるのも楽しいけれど、道の途中で車から降りて、レジャーを満喫するのもいいかも。
コンテナショップの並びには、バーベキューやマリンレジャーなど、夏にやりたいアクティビティ体験ショップも
グルメやレジャー、自然に学びまで。その全てがそろったうるま市。国際通りや美ら海水族館といった有名どころだけでなく、東海岸エリアにも目を向けると、南国・沖縄の新しい魅力を発見できる。これから迎える夏に向けて、旅の計画を立ててみては。
※表示価格は全て税込です
■スポットDATA
勝連城跡
住所:沖縄県うるま市勝連南風原3908
電話:098-978-7373
時間:9:00~18:00
料金:入場無料
https://www.katsuren-jo.jp/
具志川火力発電所
住所:沖縄県うるま市宇堅657
電話:070-5819-2532(-2533)
時間:9:00~12:00、13:00~17:00(見学時間)
料金:見学無料(予約制)
https://www.okiden.co.jp/livelihood/pr/gushikawa/
海の駅 あやはし館
住所:沖縄県うるま市与那城屋平4
電話:098-978-7900
時間:9:00~17:00
料金:入館無料
https://ayahashikan.co.jp/