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芸能×建築 二刀流で活躍する田中道子さんが考える「循環型社会」とは?

2023.11.20

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俳優・田中道子さん

建築を学んでいた大学時代に「2011ミス・ユニバース・ジャパン」に出場し3位を受賞。卒業後は幼いころからの憧れだった芸能界へ進み、数々のドラマやバラエティに出演するなど、華々しいキャリアを積んでいる田中道子さん。2022年には、超難関と言われる一級建築士試験にストレート合格したことでも話題を呼びました。現在、芸能と建築の二刀流で活躍する田中道子さんに、これまでの歩みや仕事観、エネルギーへの思いなどについて聞きました。

 

大学では建築を学び、親の反対を押し切って芸能界へ

―――――― まずは芸能界を志したきっかけから教えてください。

子供の頃は、親から「本の虫」と言われるぐらい、ずっと家で読書をしているような内気なタイプでした。でも実は、女の子がお姫様になりたいのと同じように、華やかなモデルの世界に遠い憧れを持っていて…。その後、大学生になると友人の後押しもあってミスコンに出るようになり、「2011ミス・ユニバース・ジャパン」で3位を受賞させていただきました。そのとき初めて人前に立ってスピーチをするという経験をして、シンプルに楽しいと感じました。同時に、自分の考えを主張できる場があることってすごくありがたい、そういう機会を大事にしたいなと思ったのが、芸能界に興味を持ったきっかけです。

 

―――――― 大学では建築を学ばれていたということですが、芸能の道に進むことに葛藤はありませんでしたか?

ゲーム『ファイナルファンタジー』の世界観が大好きで、主人公たちが旅する街をつくってみたくて、大学では都市デザインやランドスケープを専攻していました。そして、卒業後には二級建築士の資格も取得しました。

芸能の道は、小さい頃からの夢でしたが、迷いはありましたね。ちょうどその頃、東日本大震災があって、学んできた建築を通じて人の役に立ちたいという思いもありましたし、「せっかく二級建築士の資格を取ったのに、その努力を無駄にするの?」と両親の猛反対もありました。でも私はこれまでやってきたことを無駄にするつもりは全くなくて、いつか建築の仕事も絶対にやりたいと胸に秘めていました。私は欲張りなので、どちらも諦めることができなかったんです。どちらも叶えるなら、若さがある今始めるべきなのは芸能のお仕事だと思って、父には黙って家出同然で上京しました。ありがたいことにメディアに出させていただく機会が増えたこともあり、今では両親ともにすごく応援してくれています。

 

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俳優業のかたわら猛勉強し一級建築士試験にストレート合格!

―――――― 2022 年に一級建築士試験に合格したことが大きな話題になりました。一級建築士を目指した理由について教えてください。

私はもともと、都市をデザインしたいと思って建築を学び始めましたが、そのためには一級建築士の資格が必要でした。大学卒業後は芸能の道に進みましたが、コロナ禍で俳優としての仕事が一気にストップしてしまい、在宅の日々が続きました。自分のことをゆっくり見つめ直す時間にもなり、「建築を通じて人の役に立ちたい」という思いが再び胸に湧いてきたんです。ちょうどその頃、一級建築士試験の受験資格が緩和されたという良いタイミングだったこともあり、一級建築士を目指すことにしました。

 

―――――― ここ数年の合格率は10%前後という難関資格ですが、目指すことを決めてから合格までにどれくらいの期間を要したのでしょうか?また、忙しい俳優業との合間を縫ってどのように勉強されたのでしょうか?

勉強に費やした期間は1年3ヶ月です。一級建築士試験を受験する人は実務経験がある人がほとんどだったので、最初から遅れをとってのスタートでした。朝起きたらまず、スマホで勉強用のアプリ開いて、トイレや歯磨きの間もひたすら問題を解く。舞台の期間中は、まとまった勉強時間が確保できないので、ロケの移動中などのすき間時間を見つけてはずっと勉強していました。「1分しかなくても10回やれば10分になる!」という精神です。でも睡眠時間はしっかり確保し、健康第一も心掛けました。

また、事務所に相談してスケジュールを調整してもらったり、資格学校にお世話になったり、とにかく受けられるサポートは全て受けました。周りの支えがなかったら合格することはできなかったと思います。
 

―――――― 一級建築士を目指す中で、どんなことが大変でしたか?

趣味の時間や一息つく時間が全く取れなかったのが大変でした。自分が決めて自分で始めたことですし、文句があるわけでもないのに、家で一人になるとシクシク泣いてしまうこともありました。

ただ、やっぱり興味のある分野だから辛くても楽しかったんですよね。新しい知識が入るたびに、世界が広がっていくような、ちょっとずつ新しい自分に生まれ変わっていく感覚がありました。


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建築業界の魅力を広く伝えていきたい

―――――― 一級建築士試験に合格されてから、芸能活動に変化はありましたか?

魅力ある建築物に出合えるロケや解体現場に行くお仕事もやらせていただくなど、ありがたいことにお仕事の幅がぐんと広がりました。また、建築業界の方と接する機会も増えて、芸能の仕事をしながら建築の知識も深まっています。「芸能界で一級建築士試験に合格しても、宝の持ち腐れじゃない?」なんて言われることもありましたが、こんなに相乗効果があっていいのかなって不安になるくらい!私が感じている建築の魅力をもっと知っていただくために、メディアを通して建築業界と皆さんの橋渡しをする存在になれたらいいなと思っています。

 

―――――― 現在は建築士としても活動をされているのですか?

試験に合格しても2年分の実務経験を積まなければ一級建築士として登録ができないので、今は芸能の仕事と折り合いをつけながら、設計事務所に籍を置いて働かせていただいています。試験が終わってからもまだまだ勉強の日々です。俳優業と建築業のオンオフを切り替えて頭がパンクしそうになりながらも、一つひとつの業務と向き合っています。

 

―――――― 進路に迷ったとき「どちらも諦めたくない」と胸に秘めていたことが、まさに今、実現しているのですね。

そうですね。私は、やりたいと思ったことは、諦めなくていいと思うんです。本気でやりたいことがあるのなら、それを2本3本と柱みたいに増やしていってもいい。いろいろな人がたくさん挑戦をして、ちょっとずつでも両立できるような社会になっていったらいいですよね。

 

芸能×建築 仕事を通じて知った「循環型社会」への取り組み

―――――― 建築物とエネルギーとの関係を考えることはありますか?

最近はテレビのお仕事で解体の現場に行くことが多いのですが、そこでリサイクルの取り組みや研究がすごく進んでいることを知りました。

例えば、普及が進んでいる太陽光パネルの耐用年数は20年ほど。そのため、現在使われている太陽光パネルは数年から十数年後に廃棄されるわけですが、これまでは、パネルのうち発電するために必要な「セル」という部品と、ガラス部分をきれいに分別するのが難しかったそうなんです。私がロケでお伺いした企業では、高圧の水を噴射するという工法を用い、ガラスを粉砕することなくセルを剥離することでガラスをリサイクルし、パネルの廃棄量を減らすという取り組みを進めていました。

太陽光パネルが今後大量に廃棄されることや、それに向けてリサイクルの研究が進められていることって、あまり話題に上る機会もないので、知らない方も多いと思います。私は、建築の勉強や、解体現場での視察をきっかけにそれを知ることができたので、まずは皆さんが少しでも興味を持ってもらえるよう、発信することでお手伝いできたらと考えています。

 

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―――――― 最近気になっているトピックを教えてください。

先日お仕事で「東京ポートシティ竹芝オフィスタワー」というビルに行ったのですが、そこにとても広いスキップテラス(段々状のテラス)があってとてもびっくりしました!たくさんの木々が植えられていて、お米をつくっていたり、鳥が住めるようになっていたり、蜂の巣箱があったりと、ビルでありながら水田や森のような役割をしているんです。スポット的に緑を増やすことで、そこを拠点とする鳥や虫たちが移動して、いろいろな生物が共存できる環境が都心部に生まれています。

 

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東京ポートシティ竹芝オフィスタワーのスキップテラス(素材提供:東急不動産)

今はちょうど高度経済成長期に建った建物が新しく生まれ変わっている時期です。渋谷にも木造の商業ビルができますし、  私が上京した10年前とは東京の印象がすごく変わってきています。すぐ近くに緑や木などの自然があるのが当たり前になると、これまでとは全く別の街の姿になりそうでなんだかワクワクしますよね。

 

好奇心に素直に従って生きていきたい

―――――― 今後の展望について教えてください。

芸能界に入ったとき、マネージャーさんから3年後、5年後のビジョンを明確に設定しなさいと言われたのですが、私は自分の人生を野放しにしておきたいタイプ。実際、10年前には俳優をしながら一級建築士の試験に合格できるなんて夢にも思っていませんでした。

なので、もしかしたら今後、2足のわらじどころか3足4足と増えていく可能性もあるかもしれません(笑)。年齢のせいにして諦めることはしたくなくて、これからも好奇心に素直に従って生きていきたいですね。

 

―――――― 最後に、田中さんにとって電気とは?

以前、夜中に地震が起きて停電したとき、灯りがつくまで本当に心細かったんです。普段は当たり前のように使っているものですが、停電を経験してからは特に電気のありがたみを実感しています。

部屋の照明やスマホの充電、冷暖房など、現代人にとっての必需品と言われるものって、ほとんどが電気で動いていますよね。電気は、人にとっても建築にとっても、なくてはならないパートナーだと思っています。建築の現場では、必ずと言っていいほど「省エネ」の性能を求められます。その際に、必ず関わってくるのが電気であり、建築と同じくらい興味のある分野。これからも電気についての学びをもっと深めていきたいです。

 


田中 道子

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たなか みちこ。1989年8月24日生まれ、静岡県出身。2011年に「2011ミス・ユニバース・ジャパン」に出場し3位受賞。静岡文化芸術大学卒業後、2013年2級建築士に合格。同年「ミス・ワールド 2013」日本代表に選出、「ミス・ワールド 2013世界大会(インドネシア)」でベスト30に入賞。2016年『ドクターX~外科医・大門未知子~』にレギュラー出演し、俳優デビュー。2018年NHK大河ドラマ『西郷どん』、2022年テレビ朝日ドラマ『六本木クラス』など話題作に多数出演。2022年末に一級建築士試験に合格。2023年からはNHK『解体キングダム』にレギュラー出演するほか、BSテレビ東京『築き人』でMCを務めるなど、活躍の幅を広げている。

オフィシャルサイト: https://www.oscarpro.co.jp/talent/michiko_tanaka/


企画・編集=Concent 編集委員会


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