【LiLiCoさん】「こんなに光らせるの!?」来日当初は看板にびっくり。環境先進国・スウェーデンと日本の違いとは?

2025.09.30

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映画コメンテーター LiLiCoさん

映画コメンテーター、女優、ナレーター、ライター、歌手…21の肩書きを持ち、マルチな活躍を見せるLiLiCoさん。18歳の時にスウェーデンから来日し、長い下積みを経て今の地位を築いた、パワフルな歩みはまさに映画のよう。以前、山口県の柳井発電所(LNG〔液化天然ガス〕を燃料とする火力発電所)を見学したこともあるというLiLiCoさんに、日本の芸能界を目指したきっかけや、電気の大切さ、環境先進国であるスウェーデンと日本の違いについて、たっぷりとお話をうかがいました。

 

テレビの中の世界に憧れて、18歳でスウェーデンから単身日本へ

――――――LiLiCoさんはスウェーデンのご出身だそうですね。来日のきっかけを教えてください。

父はスウェーデン人で、母が日本人。18歳までスウェーデンで育ちました。日本に住む母方の祖母は、梅干しや海苔といった日本の食べ物を毎月のように送ってきてくれていました。その荷物の中に、レコードやアイドル雑誌も入っていたんです。当時、日本語は読めませんでしたが、日本の音楽を聴いたり、アイドルの写真を眺めたりするだけでワクワクしていましたね。

夏休みを使って、母と日本に帰省したこともありました。そこで目にした、バラエティ番組やCMが流れる日本のテレビは、まさに“夢の箱”。「この中に入ってみたい!」と強く思ったんです。その憧れを実現するために、18歳の時に通っていた学校を辞めて、思い切って日本での生活をスタートさせました。

 

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子供の頃からエンターテインメントに溢れる日本に憧れていたと話す

 

今振り返ると、日本語を使えるようになるまでは大変でした。「お腹すいた」「喉が渇いた」ですら日本語で言えませんでしたから。祖母の家に居候していたので、祖母と会話をしながら徐々に日本語を覚えていきました。祖母は芸能界に入るきっかけをつかめるようにと、雑誌に載っているオーディションの広告を切り抜いて渡してくれたりもしましたね。祖母の期待に応えたいし、金銭的にも負担を掛けたくなかったので、お弁当屋さんでアルバイトをしながら、片っ端からオーディションを受けていきました。スウェーデン人は「自立」に対する意識が強いんです。まだ10代でしたが、日本での自分の生活を成り立たせるために必死でした。

 

――――――下積み時代は長かったとうかがいました。

タレント学校に通うようになって、デビュー自体は割とすぐにできたんです。1989年に浜松のデパート屋上にあるビアガーデンで歌手活動をスタートさせました。でも、デビューしてすぐにテレビに出られるわけもなく、その後は演歌歌手の付き人をしながら、出番があれば自分も歌って…という日々が続きました。バラエティ番組に出演して、全国的に名前を知ってもらえるようになるまでは20年以上かかりましたね。

 

――――――心が折れそうになったことはありませんでしたか。

自分を信じていましたから!私の大好きなスターたちも、さまざまな苦悩を経験しています。シルヴェスター・スタローンは、顔の麻痺があって話すことも得意ではなかったのに、トレーニングを重ねて映画『ロッキー』ではボクサー役を見事に演じ切りました。マドンナだって、たった35ドルを手にニューヨークに飛び込んで夢を掴みました。自分もそうなれると思っていたので、心が折れることはなかったですね。

私の中では、「頑張る」って20年単位のことなんです。「石の上にも三年」なんて甘すぎる話で、3年頑張って成功できたら天才です。私は天才ではないので、20年ちょっと頑張りました。20年頑張れば、神様がプレゼントをくれます。私にとって、それがバラエティ番組への出演でした。「一度きりだから思い切り暴れよう!」と収録に臨んだ翌日以降、方々からオファーが殺到しました。事務所の電話は鳴りっぱなしで、対応していたスタッフはトイレに立つこともできなかったと言っていたくらい(笑)。神様からのプレゼントがチャンスとなって、テレビに出て有名になるという子供の頃の夢が叶ったんです。

 

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下積み時代は給料が少なく、電気が止まってしまったことも。そんな過去のエピソードを平然と話すLiLiCoさん

 

――――――現在は映画コメンテーターを主軸に、女優やライターとしても活躍されています。毎日、どのように時間をやりくりされているのでしょうか。

毎日、朝7時から深夜1時まで、全力で働いています。トイレにも手帳やスマホを持ち込んで仕事をしていますし、タクシーの中ではスマホで原稿を書いています。肩書きはたくさんありますが、どれも自分が好きだからやっていることなので、全然苦じゃないんですよね。

「LiLiCoさんはタフですね」なんて言われることも多いですが、そもそも外国人である私が日本で自分のやりたいことをして、お金を稼いで生活するためには、タフじゃなきゃいけない。「女性として強くありたい」という気持ちも常に持っています。

 

電気を裏で支えてくれている人たちこそが真のヒーロー!

――――――普段、「電気があってよかった」と思う瞬間はありますか。

仕事柄、オンライン試写で映画を観る時は「電気があってよかった!」って思いますね。以前は試写会の案内が来る度に映画館まで足を運んでいたので、2時間の映画を観るために準備や移動を含めてトータル4時間ほどかかっていました。それが、コロナ禍を機にオンライン試写ができるようになったんです。今では自宅で好きな時間に観られるので、時間を効率的に使えています。アカデミー賞などの賞レースの選考時期は、1日に何本もの映画を観ることになるので、朝の5時から映画を観ることもあるんですよね(笑)。

 

――――――以前、お仕事で山口県の柳井発電所を訪問されたそうですね。印象に残ったことはありましたか。

発電所の中に制御室というモニターがたくさんあるフロアがあって、そこには24時間365日運転操作や発電所の状態を監視している人がいるんです!見学する前は、電気はスイッチを押せば点くのが当たり前だと思っていましたが、それは常に見守ってくれている方々のおかげなんですよね。私たちの生活を裏で支えてくれている人たちこそがヒーローなんだと思いました。真のヒーローって意外と表には見えないものですよね。

 

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山口県にある柳井発電所内の中央制御室。24時間体制で発電設備の運転等が続けられている

 

あらためて、電気そのものへの感謝の気持ちも芽生えました。私が仕事で関わる映画もテレビもラジオも、全部電気がなければ楽しめないものばかりですから。一方で、「電気を使いすぎない」ための工夫も大事だと思います。私の場合は、冬に暖房をなるべく使わないようにしています。部屋が南東向きだから朝から日が入って暖かいし、夜に仕事から帰ってきたら毛布をかぶって過ごしています(笑)。

 

――――――暖房を使わない!?なかなか真似はできないですが、電気を大切にする意識は大切ですよね。ちなみに、スウェーデンと日本で、電気の使い方に関する違いはありますか。

来日してすぐ気が付いたのはエスカレーターの違いですね。日本は乗っている人がいなくてもエスカレーターがずーっと動いてますよね。スウェーデンでは、人が乗ったら動き出すエスカレーターが主流なんですよ。今でこそ日本でもそのタイプが増えてきましたけど、ずっと「電気がもったいないな…」って思ってました。街中の看板もそう!日本はコンビニの看板にまでライトが使われていて、初めて見た時は「こんなに光らせるの!?」とびっくりしました。スウェーデンの看板は基本ペイントだけなので、そこは大きな違いですね。

それから、スウェーデンの夏は白夜なので、灯りを使うことはほぼなく、太陽の光だけで生活しています。窓から差し込む光で夕食を囲んで、深夜になってもせいぜいキャンドルを灯すくらい。私は日本での生活が長いので、さすがに深夜は「真っ暗で何も見えないよ!」ってなりますけど(笑)。でも現地の人は慣れているので、灯りを使わないのが普通なんですよね。

 

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スウェーデンの白夜(soak / photoAC)

 

――――――スウェーデンは「環境先進国」と言われますが、皆さん環境に対する意識も高いのでしょうか。

「環境にいいことをしよう!」なんて誰も考えてないと思います。灯りを使わないのは、スウェーデン人にとってはそれが当たり前だから。スウェーデンでは、ごみは捨てるのではなくリサイクルをするのが当たり前。リサイクル率がとても高いんです。ペットボトルのリサイクルは80年代から始まっていましたし、ガラス類は街のコンテナまで自分で持って行って、色別に分けて捨てています。衣類などを手放す時は、リサイクルショップなどに持っていくのが普通です。日本だと「環境のためにちゃんとやりましょう」って言われることが、スウェーデンだと「やるのが当然でしょ」っていう感覚。子供の頃から生活の一部として根付いていれば、習慣になりますから。

 

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スウェーデン・ストックホルムに設置されたリサイクル用のコンテナ(iuliia_n / PIXTA)

 

――――――環境やエネルギーを大切にするという考えや行動は、日本でももっと浸透させていきたいですね。LiLiCoさんはお仕事柄、「人に伝える」シーンが多いと思いますが、相手に情報を受け止めてもらうために心掛けていることはありますか。

おそらく、人に伝わらないのは誰かに言わされているから。自分の頭で考えた“自分の言葉”で話せば、たいていの場合はしっかり通じるはずです。私はバラエティ番組でも、ほとんど台本通りにはやりません(笑)。もちろん、映画に関するデータや数字は正しく伝えますが、感想はすべて「私自身が感じたこと」。LiLiCoというフィルターを通して映画を紹介しているんです。必ずしも共感を呼ばなくてもいい。変に意識して言葉を選ぶのではなく、“自分の言葉”で伝えることが大切なんだと思います。

 

スウェーデンでも歌手デビュー!日本のよさを届ける存在になりたい

――――――今後の展望を教えてください。

実は去年から、スウェーデンでも芸能活動を始めています。今年はスウェーデンのアーティストとコラボして歌をリリースする予定なので、スウェーデンでの活動の幅が広がることが今からとても楽しみです。

スウェーデンは人口が少ないので、テレビに数回出ただけですぐに有名になるんですよ。街を歩いていて、「今朝テレビであなたを見て、本当に元気になったの!」って声をかけられた時はうれしかったですね。これまではスウェーデン独自の「自立心」や「強さ」を日本に持ち込んで、日本の元気や幸せにつながってほしいと考えて活動してきましたが、今度は逆に、日本の「繊細さ」「ユーモア」などをスウェーデンに持ち込みたい。それが、どこかで誰かの小さなヒントになれば嬉しいですよね。

 

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日本でもスウェーデンでも、「LiLiCoという自分にしかできないことをしていきたい」と抱負を語る

 

――――――最後に、LiLiCoさんにとって「電気」とは何でしょうか?

電気は「心のとも」。友達の“友”でもあり、明かりの“灯”でもあります。だって家に帰ったらまず電気を点けるでしょう?それだけでホッと安心しますよね。もしも「今日一日電気を使わないでください」なんて言われたら絶対無理。冷凍庫の食材は全部溶けちゃうし、夜は真っ暗で怖いし、水槽のエアーポンプが止まったら飼ってる金魚たちも困っちゃう。私にとっては、電気は親友とか星に近いものかもしれない。ずっと見えてるわけじゃないけど、そこにいるとわかる。そんな、心強い存在だと思います。

 

【編集後記】
忙しい日々の中でスウェーデンと日本の考え方の違いに目を向けたり、電気の存在をありがたく感じたりと、日常にある「当たり前」にも目を向けていらっしゃるのだなと感じたインタビューでした。そんなLiLiCoさんのパワフルな活躍に、これからも注目です!
 

LiLiCo

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りりこ。1970年スウェーデン・ストックホルム生まれ。映画コメンテーター、女優、ナレーター、ライター、歌手など、21の肩書きを持つ。1989年に歌手デビューし、その後バラエティ番組の出演をきっかけにブレイク。現在は『王様のブランチ』(TBS)で映画コメンテーターを担当するほか、TV・ラジオ・雑誌など多数のメディアでマルチに活躍。2024年からはスウェーデンでも芸能活動を開始している。

オフィシャルサイト:http://oyj.co.jp/talent-artist/338

オフィシャルブログ:https://ameblo.jp/lilicom/

Instagram:lilicosverige


企画・編集=Concent 編集委員会


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