【岡田沙也加さん】「人の役に立ちたい」一心で気象予報士に。被災地に寄り添う気持ちを込めて天気予報を伝える

2026.01.27

enetalk19_01

気象予報士・お天気キャスター 岡田沙也加さん

気象予報士としてテレビやウェブメディアで活躍しながら、防災啓発にも力を注ぐ岡田沙也加さん。日々の天気を私たちの行動につなげるために、どんな視点で気象情報を読み解き、どんな言葉で伝えているのでしょうか。気象情報を伝える際に大切にしていることや、豪雨被災地でのボランティア経験から得た気づき、気象予報士の視点で考える電気・エネルギーの未来についてお話をうかがいました。

 

視聴者がイメージしやすい天気予報を心掛ける

――――――まずは、岡田さんの現在の仕事内容について教えてください。

日本テレビの『ストレイトニュース』やTBSの『JNNニュース』など、報道番組で天気の解説を担当しています。また、全国各地の講演会やイベントで防災や温暖化対策についてお話しさせていただく機会も増えました。豪雨被災地でボランティアに入った経験から、最近は「法律の面からも手助けできるようになりたい」と考えるようになり、行政書士の資格も取得しました。

 

――――――気象予報士を志したきっかけは何だったのでしょうか?

神奈川県鎌倉市の海のそばで育ち、子どものころは父とよく釣りに出かけ、父が釣りをしている間、私は空を眺めることが多かったです。釣りは天気に大きく左右されるので、「天気について知りたい」と思っていたところ、本屋さんで気象予報士の本に出会ったのが最初のきっかけです。

大学卒業後はマーケティング会社に就職したのですが、心のどこかに「気象予報士になりたい」という思いがあり、働きながら少しずつ勉強を続けていました。本気で取り組み始めたのは、働く意味や社会の中での自分の役割を考え始めた社会人3年目の頃。その時期、立て続けに大災害が起きて、「自然って楽しいだけじゃなく、時にこんなにも怖いんだ」と実感すると同時に、「気象予報士になって人の役に立ちたい」という思いがこみ上げました。そこから本格的に勉強に打ち込み、資格を取得しました。

 

enetalk19_02

本格的に気象予報士を目指してからは、働きながらほぼ毎日5~6時間ほど勉強に打ち込んだそう

 

――――――気象情報を伝えるうえで大切にしていることを教えてください。

気象庁が出した予報をそのまま伝えることも一つの正解なのですが、私はポイントを絞って、できるだけ具体的なイメージにつながる言葉を添えるようにしています。例えば、2019年に千葉県・館山で、台風による強風で電柱が次々と倒れ、大きな被害が出たことがありました。そういった前例を添えて、「今回はあの時に匹敵するような風が瞬間的に吹くかもしれません」と伝えたほうが、危険度をより実感してもらえると思うんです。誰にでも分かりやすくイメージしてもらうためには、気象の本質をしっかり読み解き、それを人に伝わる言葉に"翻訳"する作業が欠かせません。むやみに数字や専門用語に頼らず、見ている人の頭にスッと入るような自然な表現を心掛けています。

 

深刻化する異常気象は他人事ではない

――――――夏場の猛暑や災害級の豪雨など、極端な気象現象が増えています。こうした状況をどのように捉えていますか。

極端な気象は確実に増えています。しかもこの先、温暖化がティッピングポイント(ゆるやかな変化から、急激かつ元の状態に戻れなくなる転換点)を超えると、気候変動のスピードは一気に加速すると言われています。

人間はまだ予測して備えることができますが、動植物はそうはいきません。最近増えている熊の出没も、温暖化によりブナの実の豊作・凶作の間隔が短くなっていることなどが影響している可能性があると言われています。また、ミツバチなど昆虫の世界でも、花の開花時期のずれや生息域の変化などによって異変が起きていると言われています。もしミツバチのような昆虫が減れば植物の受粉がうまくいかなくなったり、ミツバチを食べる鳥が減ったりして、食物連鎖全体のバランスが崩れていきます。そうした変化は、やがて私たち人間の暮らしにも必ず影響してきます。決して他人事ではありません。

 

enetalk19_03

2025年の夏は、40度以上の延べ地点数が30地点、猛暑日の延べ地点数が9,385 地点。ともに歴代最多記録をマークした(出典:気象庁 令和7年夏の記録的な高温と7月の少雨の特徴とその要因及び8月前半の大雨をもたらした大規模な大気の流れの特徴について)

 

――――――豪雨被災地でのボランティアの経験があるとうかがいました。どのような活動を行われたのでしょうか。

2018年の西日本豪雨の発生から5日ほど経った広島市で、初めてボランティアに参加しました。天気予報を伝えるだけではどこか無責任であるように感じ、ホームセンターで軍手や長靴をそろえて現地へ向かいました。その日は気温が35度に迫る暑い日で、被災した家の敷地に溜まった泥をかき出して運ぶのは大変な重労働でした。その後も、台風で被害を受けた神奈川県川崎市、地震と豪雨が重なった能登半島、大規模な山火事があった岩手県大船渡市など、できるだけ自分の足で被災地を訪れ、住民の方の声を聞き、心に刻むようにしています。

被災地では「自分たちのことを忘れられることがなによりも辛い」という言葉をよく耳にします。だからこそ、私自身も災害を忘れないために現地へ行き、学び続けています。日々の天気予報ではすべてを伝えきれないことも多いですが、それでも表情や言葉の端々に寄り添う気持ちがにじみ出ていたらいいなと思っています。

 

enetalk19_04

2024年11月に能登半島地震で大きな被害を受けた輪島へ足を運んだそう(提供:岡田沙也加さん)

 

カーボンニュートラルの実現に向けて私たちができること

――――――気候変動への対策として、日本は2050年カーボンニュートラルの実現を目指しています。私たち一人ひとりにどんなことができるでしょうか。

気候変動は一人で抱えるには大きすぎる問題ですよね。だからこそ、まずは自分が興味のある分野でできることを始めてみてはいかがでしょうか。例えば「食」。実は、漁船の燃料、食品の輸送や加工、農薬の使用、冷蔵・冷凍、スーパーの運営など、食に関わるほぼすべての段階で温室効果ガスが出ています。家庭のプランターで少し野菜を育てるだけでも、その一部を減らすことができます。ローズマリーや大葉のようなハーブなら簡単に育てられますし、ミニトマトも気軽に始められます。できることが一つ増えると、次の行動にもつながります。そうした一人ひとりの小さな積み重ねが、やがて大きなムーブメントになっていくはずです。

 

――――――社会全体としてはどんなことに取り組むべきだと考えますか。

今AIが急速に広がり、データセンターなどの電力需要の急激な増加が見込まれています。AIの進化によって便利になる一方で、カーボンニュートラル達成の視点もなおざりにはできません。だからこそ、社会としては二酸化炭素の排出を減らすための新しい技術や研究への投資が欠かせないと考えています。

また、地球の気温そのものを下げる研究も進んでいます。例えば、宇宙に巨大なシールドを設置して太陽光の一部を遮る方法など、本当にさまざまです。もちろん課題はたくさんありますが、こうした人間の知恵が持続可能な社会のために活かされてほしいと願っています。

 

enetalk19_05

二酸化炭素の排出抑制に向けて、「新たな技術や研究にも期待したい」と話す

 

――――――再生可能エネルギーは、温室効果ガスを排出しない一方で、出力が天候に大きく左右されます。今後、再エネをさらに活用していくうえで、気象予報士としてどのような貢献ができると思いますか。

晴天率やアメダス(気象観測システム)による風のデータを見れば、太陽光・風力発電設備の設置に適した場所の提案などはできます。ただ、これからはもっと進化していくと思います。例えば、その土地に専用の観測機を置き、取れたデータをAIに読み込ませてピンポイントで予測を立てる。そんな時代もすぐに来るのではないかと思っています。天候データの分析は機械のほうが得意ですし、私たち気象予報士の役割は、あくまで「人に気象情報を伝え、納得してもらい、行動につなげてもらうこと」だと考えています。

 

――――――火力や再生可能エネルギー、原子力をバランスよく使う「エネルギーミックス」という考え方についてどう思われますか。

どの発電方法もメリットとデメリットがあるので、いろいろな発電方法をバランスよく組み合わせるというのは、エネルギーの安定供給には欠かせない考え方だと思います。例えば、原子力については、発電時に二酸化炭素を排出しないというメリットがある一方で、使用済燃料の処理や事故が起きた時のリスクといった課題もありますよね。まずはエネルギーの現状を知って、みんなで議論することが必要だと思います。

それと同時に「マイクログリッド」と呼ばれる、小さな地域単位でエネルギーを自給する仕組みづくりも有効な手段の一つと捉えています。太陽光や風力、小水力、バイオマスに蓄電池、バックアップ発電まで、地域内でひとまとめにするものです。実は、知り合いが海上で小型タービンを使った波力発電の実験をしているんです。波力は塩分による腐食や強い波による設備へのストレスなど課題も多いのですが、島国の日本にとっては、恒久的に得られる国産エネルギーとして期待されているんですよ。

 

enetalk19_06

海に囲まれた島国の日本は、波のエネルギーを利用する波力発電のポテンシャルが高いと言われる(画像素材 / PIXTA)

 

――――――普段、電気があってよかったと思った瞬間や、電気が暮らしを支えていると実感した瞬間のエピソードを教えてください。

高校時代、アメリカのサウスカロライナ州の田舎町に留学していたとき、大規模停電を経験しました。真冬の寒さの中、暖炉に木をくべたり、隣町の親戚の家に何泊かさせてもらったりしてなんとか乗り切り、復旧した時は本当にホッとしました。

 

enetalk19_07

岡田さんが高校時代にアメリカへ留学した時の思い出の写真(提供:岡田沙也加さん)

 

ちなみに、気象予報士として電気のことを特に意識するのは、台風が接近する時です。最大瞬間風速が40メートルを超えると大規模停電につながりやすいというデータがあるので、その数字も目安にしながら停電への備えを呼びかけるようにしています。

 

――――――今後の展望を教えてください。

これからも大切にしたいのは、人と直接向き合って話すことです。講演のように時間をしっかり取れる場では、まずは天気そのものに興味を持ってもらい、そこから防災や温暖化対策についてしっかりと伝えていきたいと思っています。

また、以前は人前で話すことが苦手でした。だからこそ、自分がどう克服してきたのかを整理して、「話し方教室」のような形で伝えていきたいと考えています。前職で企画やマーケティングを担当していた経験も活かせたら嬉しいですし、やってみたいことはまだまだたくさんあります。

 

enetalk19_08

「人と直接向き合って話すことを大切にしていきたい」と語る岡田さん

 

――――――最後に、岡田さんにとって「電気」とは何でしょうか?

電気、つまりエネルギーは、私たちを突き動かす力そのものだと思っています。19世紀後半に電気を扱えるようになって以降、私たちは電気の力で世界を広げてきました。そして、これからもAIなどを通して、電気が未来を切り開いていくはずです。そのうえで、忘れてはならないのは、「エネルギーを使い続けること自体が、地球環境への負荷になる」という事実です。地球や、地球で一緒に暮らす植物や動物に負担をかけないように取り組んでいくことが私たちの責任だと思っています。

 

【編集後記】
「人の役に立ちたい」一心で、被災地に寄り添う気持ちを込めて気象情報を伝える岡田さん。地球温暖化や異常気象、そして電力需要の増加といった広範な課題についてお話しいただきました。電気は豊かな暮らしをもたらしてくれますが、エネルギーの消費には地球への負荷が伴うことも事実。エネルギーの問題を自分事として捉え向き合っていく重要性を強く感じたインタビューでした。
 

岡田 沙也加

enetalk19_09

おかださやか。気象予報士、お天気キャスター。会社員を経て、2014年10月に気象予報士の資格を取得。2015年よりウェザーマップに所属。日本テレビ『ストレイトニュース』やTBSの『JNNニュース』などに出演している。また、防災・温暖化防止の活動にも力を入れ、全国各地で講演活動を行っている。

オフィシャルサイト:https://caster.weathermap.co.jp/okada-sayaka

X:@okada_sayaka


企画・編集=Concent 編集委員会


★さらに「日本のエネルギー」について知りたい方はこちら!
エネルギーの「これまで」と「これから」-エネルギーに関するさまざまな話題を分かりやすく紹介-(経済産業省 資源エネルギー庁スペシャルコンテンツ)