
株式会社レッドクリフ代表取締役/CEO 佐々木孔明さん
2025年の大阪・関西万博で、連日夜空を彩ったドローンショー。その運営を手掛けたのが、2019年創業の株式会社レッドクリフです。同社を率いるのは代表取締役の佐々木孔明さん。「夜空に『驚き』と『感動』を」というミッションのもと、ドローンショーという新しい表現に挑戦してきました。1000機以上のドローンが光の軌跡を描くこのエンターテインメントは、世界各地でも広がりを見せています。大学時代にドローンと出会い、空撮からドローンショーへと事業を広げてきた佐々木さんに、万博での挑戦の舞台裏や、大規模なドローンショーを支える電力の重要性、そしてドローンが社会インフラへと広がっていく未来についてお話を伺いました。
大学時代はドローンを手に世界一周旅行!
――――――まずは、佐々木さんとドローンとの出会いについて教えてください。
ドローンとの出会いは今から10年ほど前、大学生の頃でした。もともと新しいガジェットに目がなく、ドローンの存在を知った時は、「空飛ぶカメラって面白そう!」と直感的にワクワクしたんです。ドローンを手に、バックパックを背負って世界各国を巡る旅にも出ました。行く先々の風景を自分の目で見るだけでなく、上空からも撮影できる。ドローンの面白さにすっかり魅了され、そこから本格的にドローンに関わるようになりました。

大学を休学して世界二周の旅へ出た佐々木さん。2年間で合計50カ国以上巡ったそう(提供:レッドクリフ)
帰国後は大学を中退し、世界最大手のドローンメーカーDJI社の日本1号店でオープニングスタッフとして2年間働きました。周囲からは「大学を辞めるのはもったいない」と言われることもありましたが、それでもドローンに将来性を感じ、この世界に挑戦したいという思いが強かったんです。DJIでは、ドローンの用途が空撮だけでなく、物流、農業、測量、人命救助、エンターテインメントなど、さまざまな分野へ広がっていることを目の当たりにしました。中でも、自分は空撮に特化した仕事をしたいと考えるようになり、2019年にレッドクリフを立ち上げ、テレビや映画、ミュージックビデオなどの空撮を手掛けていました。
「撮る側」から「見られる側」へ。ドバイで見た空の広告価値
――――――ドローンショー事業に舵を切ったきっかけは何だったのでしょうか。
海外のチームによる大規模なドローンショーを間近で見たことです。私はそのドローンショーの様子を空撮で記録する立場で現場に入っていたのですが、そこで大きな衝撃を受けました。
それまで私にとってドローンは「撮る側」の存在でした。ところがショーでは、LEDを載せたドローンが「見られる側」になる。しかも夜空という広大な空間に、アニメーションのように物語を描くことができる。ショーそのものの完成度の高さはもちろん、発想の面白さや、何百機ものドローンを一斉に制御する技術――その可能性に強く惹かれ、「これを自分たちのチームでやりたい」と感じたことが、今の活動の原点です。

転機となったのは、当時の日本では最大規模となる500機のドローンショーとの出会い。「ストーリーにも感動しました」と振り返る
ただ当時は、数十分のドローンショーに数千万円ものコストがかかるとも言われていて、国際行事のような限られた機会でしか成立しないのではないかとも感じていました。しかし、その印象を大きく変えたのが、2021年に訪れたドバイでした。現地ではドローンショーが日常的に行われていて、人が集まり、スマートフォンで撮影し、SNSでどんどん拡散されていました。演出の中には企業ロゴも自然に入り込んでいて、「これはエンターテインメントでありながら、広告にもなる」と実感したんです。そこで、ドローンショーを「空の広告媒体」として事業化するイメージが明確になりました。

ドローンショーと二次元コードを組み合わせた「ドローンショーQR(R)」。地上からスマホを向ければ読み取ることができる(提供:レッドクリフ)
――――――事業化までの道のりは順調だったのでしょうか。
最初は本当に大変でした。ドローンショーを行うには、何百機もの機体をそろえる必要があります。そのためには莫大な資金が必要でしたが、日本ではドローンショーの認知度が低く、「空に数百機のドローンを飛ばすなんて危ない」「規制が厳しいのでは?」といったネガティブな反応が大半。半年ほど資金がまったく集まりませんでした。
そんな中で転機となったのは、2021年の東京2020オリンピックです。開会式でドローンショーが大きな注目を集め、日本でも一気に認知が広がりました。投資家の方々にも広告になり得るドローンの価値が伝わり、資金調達が一気に進みました。そして、2021年12月にはレッドクリフ初のドローンショー開催にこぎつけることができました。
大阪・関西万博で184日間連続の大規模ドローンショーに挑戦
――――――大阪・関西万博でのドローンショーは大きな話題になりました。演出には、どんな想いを込められたのでしょうか。
万博では、半年間にわたって毎日ショーを行いました。初めて見る方もいれば、何度も足を運んでくださる方もいます。だからこそ、1度見たら終わりではなく、何度見ても新しい発見があるような演出を意識しました。
具体的には、“説明しすぎないこと”を大切にしました。見る人によって受け取り方が少しずつ変わるような、「余白」のある表現にしたかったんです。言葉に頼らず、世界中の方が見ても楽しめるショーにすることも強く意識しました。万博会場の中で、どこからでも同じ空を見上げて参加できる。そんな会場全体を一つにつなぐイベントにしたいと考えていました。

2025年日本国際博覧会協会企画催事「One World, One Planet.」内のドローンショー(提供:レッドクリフ)
――――――184日間という長期間、大規模なショーを続ける苦労はどのようなところにありましたか。
1000機規模のドローンショーを184日間、毎日続けるというのは、前例のない挑戦でした。最終的には合計14万機以上を飛行させ、「一年間に飛行させたマルチローター※/ドローンの最多数」としてギネスにも認定されています。中国などで行われる大規模なドローンショーのインパクトも大きいですが、多くは単発のイベントです。これだけの規模で常設のイベントとして飛ばし続ける取り組みは世界的にも初めてであり、今後につながる大きな手応えを感じています。
※複数のローター(プロペラ)を高速回転させることで揚力を得て飛行するドローンの機体形式
大規模ドローンショーの舞台裏
――――――1000機以上の機体を飛ばすドローンショーでは、電力供給や充電はどのように行っているのでしょうか。
ドローンは機体ごとにバッテリーを搭載していて、ショーが終わるとそれをすべて回収して充電します。1台の充電器で30〜40個ほどのバッテリーを充電できますが、これだけの機体数になると、必要なバッテリーの数も膨大になります。ショーが終わるとスタッフが手作業でバッテリーを交換し、次のショーに備えていきます。
ドローンを並べるのも、バッテリーを差し替えるのも、最終チェックを行うのもすべて人です。本番直前まで機体の状態やバッテリー残量を確認し、エラーがあればその場で交換する。こうした地道な作業の積み重ねがあって初めて、華やかなショーが成立します。

ショーの完成度を高めるため、本番の数分前まで「何番の機体を交換!」「このバッテリーを替えて!」と入念に調整を続けているそう(提供:レッドクリフ)
――――――ドローンショーの現場で、「電気の大切さ」を実感するのはどのような場面ですか。
ドローンはすべて電気で飛んでいるので、イベント会場で電源をどう確保するかがとても重要です。基本的には、自社の拠点でフル充電にしてから会場へ持ち込みますが、リハーサルと本番を繰り返す場合は現地での充電が必要になります。特に地方のイベントでは、会場に十分な電源がないこともあります。その場合は事前にどこから電源を確保できるかを確認したり、必要に応じて発電機を手配して持ち込んだりします。
ドローン1機あたりの消費電力は大きくありませんが、数千機を運用するとなると状況は変わります。バッテリーの数がとにかく多いため、電源の確保や充電の段取りを事前にしっかり整えておかなければ、ショーの準備が進みません。
そして、電気がなければドローンは飛びませんし、夜空に光の演出を描くこともできません。数千機を運用する現場に立つと、電気の存在の大きさをあらためて実感します。
ドローンが社会インフラを支える存在に
――――――ドローンは送電線といった電力設備の巡視・点検など、電力業界でも活用が進んでいます。こうした分野を含め、どのような活用が広がっているのでしょうか。
たとえばメガソーラーの点検では、これまで人が1~2週間かけて行っていた作業を、ドローンなら条件次第では2時間ほどで終えることができます。対象エリアを指定すれば最適なルートを自動で計算し、効率よく巡回することも可能です。赤外線カメラを搭載すれば、異常発熱もその場で検知できます。
風力発電設備の点検も同様です。送電線や鉄塔といった高所などでも、ドローンであれば安全かつ迅速に確認できます。こうした高所点検の技術は、建物の屋根点検などにも応用されており、足場を設置することなく短時間で状況を把握できます。これまで人が担ってきた作業を大幅に効率化できる点は大きな価値です。
物流の面でも可能性は大きいです。山小屋への物資運搬や離島、災害時の輸送など、人が行くよりも早く、安全に届けられる場面があります。近年では一定の重量物を運搬できる機体も登場しており、活用の幅は広がっています。
また、遭難者の捜索では、夜間に赤外線カメラで位置を特定し、スピーカーで呼びかけるといった使い方も始まっています。人が行きづらい場所や危険を伴う場所で、ドローンはこれからますます役割を広げていくと思います。
レーザーやカラースモークで多彩に表現!進化するドローンショー
――――――ドローンショーは、どのようなエンターテインメントだと感じていますか。
空のエンターテインメントと聞くと花火を思い浮かべる方も多いと思いますが、近年は音や安全面、環境への配慮など、あらゆる観点から新しい演出も求められるようになっています。そうした中で、ドローンショーはサステナブルなエンターテインメントの選択肢として広がりつつあります。機体やバッテリーの性能向上により、表現の幅もさらに広がっています。

佐々木さんが手にするのは、実際のショーで使用する専用のドローン。レッドクリフでは、日本の飛行条件に合わせ、機体やシステムの仕様を最適化している
――――――今後、ドローンショーはどのように変化していくと思いますか。また、その先にどのような可能性が広がっていくとお考えでしょうか。
ドローンの機体性能は大きく向上しています。飛行時間は延びていますし、LEDもより明るくなっています。最近では、充電ボックスから自動で飛び立ち、ショーが終わると自動で戻って充電まで行えるような機体も登場しています。こうした仕組みが広がれば、テーマパークや商業施設などで常設しやすくなり、ドローンショーはもっと身近な存在になっていくと思います。演出の面でも可能性は広がっています。光だけでなく、レーザーや花火、カラースモークやミストなどを組み合わせることで、これまでにない表現ができるようになってきました。

カラースモークで自在に軌跡を描き、メッセージやアートを表現する「ドローンインパルス(R)」。昼間の青空や夕焼けを背景に表現できる(提供:レッドクリフ)
ドローンショーは、広告や情報発信といった分野にも活用が広がっています。私自身、ドローンショーを起点に、ドローンビジネスの可能性を広げていきたいと考えています。
――――――最後に、佐々木さんにとって「電気」とはどのような存在か教えてください。
ドローンショーは、電気があってこそ成り立つ表現です。私にとって電気とは、人々を照らす「光」そのもの。その光で日本を明るく照らしたいですし、将来的には世界も照らしていきたいです。電気を使ったドローンショーという新しいエンターテインメントを通じて、これからも「驚き」と「感動」を届けていきます。
大阪・関西万博での184日間連続ドローンショーという偉業の裏には、佐々木さんの純粋な情熱と、何千ものバッテリーを手作業で交換する地道な努力がありました。「夜空に驚きと感動を」という言葉通り、エンタメの新たな可能性を感じさせるドローン。電気を「人々を照らす光」と語る佐々木さんが、今後どのような新しい景色を空に描いてくれるのか、期待が高まる取材でした。
佐々木 孔明

ささきこうめい。株式会社レッドクリフ代表取締役/CEO。1994年12月、秋田県秋田市生まれ。関東学院大学 建築・環境学部在学中にドローンと共に世界一周の旅に出る。帰国後、世界最大手のドローンメーカーであるDJIの日本1号店オープニングスタッフとして、販売・講習・空撮に従事。2019年に株式会社レッドクリフを創業。2021年より国内最大規模のドローンショーを企画・運営し、大規模ドローンショーに強みを持つ。2024年8月、「Forbes JAPAN 30 UNDER 30 2024」に選出。2025年の大阪・関西万博では約半年間にわたりドローンショーを実施し、2タイトルのギネス世界記録を樹立。
株式会社レッドクリフ:https://redcliff-inc.co.jp/
Instagram:@redcliff_drone
企画・編集=Concent 編集委員会
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