【住吉美紀さん】電気は私たちをいつも支える「地面」のような存在。暮らしも心も豊かにする灯りとの付き合い方

2026.07.07

enetalk22_01
フリーアナウンサーで文筆家の住吉美紀さん

平日の午前中、心地よいお喋りと共に私たちの毎日に寄り添ってくれるラジオ番組『Blue Ocean』(TOKYO FM)のパーソナリティを務めるフリーアナウンサーの住吉美紀さん。長年、第一線で瑞々しい声を届け続けている住吉さんですが、その輝きの裏には、私たちが今すぐ真似したくなる「日常を愛おしむヒント」がたくさん隠されていました。50代を迎えた今だからこそ語れる「これからの生き方」や、リスナーの本音に向き合う中で磨かれた「聴く力」、そして、海外暮らしで培った心と体を整える「灯りのセルフケア」まで、たっぷりとお話をうかがいました。

>インタビューまとめ動画を見る

 


50歳で心を真っ白に。“棚卸し”で見つけた「やりたいことは、今すぐやる」生き方

――2025年に刊行されたエッセイ『50歳の棚卸し』(講談社)が反響を呼んでいます。この本を執筆されたことで、ご自身の中に変化はありましたか?

これまでの人生で起きたことを赤裸々に書いたおかげで、「あの経験があったから、今の私はこういう風に考えるようになったんだな」と深く納得できたり、「当時はつらかったけれど、今の私はちゃんと乗り越えられているな」と気づけたりして、すごく心が整理されました。おかげで今は、まるで新しくて真っ白な板の上に乗ったような清々しい気持ちです。

enetalk22_02
1996年にNHK入局し、2011年からフリーアナウンサーとして活躍し続ける住吉さん

 

――「棚卸し」をされたことで、これから新しくやってみたいことは見つかりましたか?

今は「これから私、どうしていこうかな?」って、日々自分と対話しながら過ごしています。それは、何か大きな目標に挑戦するというよりは、毎日の暮らしの彩りをゼロから心地よく構築していきたいな、という意識です。例えば、「文章を書く仕事はこれからも大切にしたい」とか、「もっと自分のためにこういう時間を取りたい」とか。日々の小さな選択を、自分の気持ちに素直になって選んでいきたいなと思っています。

enetalk22_02_A
『50歳の棚卸し』は、人生後半を心豊かに生きるためのヒントをつづった住吉さん16年ぶりのエッセイ集(写真:住吉美紀さん公式Instagramより)

 

――年齢を重ねるごとに、日々の時間の愛おしさも変わってきそうです。

本当にそうですね。誰にとっても時間は有限です。「いつかやろう」「いつか会おう」と言っていると、あっという間に5年くらい過ぎてしまいますよね。だからこそ、「これ、やってみたいな」と思うことがあれば、なるべくすぐ行動してみる。「会いたいな」と思う人がいれば、ちゃんと自分から会いに行く。そして、自分が大切にしたいものには、「大切だよ」という気持ちをちゃんと言葉や行動で示す。自分が愛しいと思うものとの時間を、これからは何よりも最優先で大切にしていきたいです。

 

一言一言を飲み込んで消化する。ラジオで磨かれた「想像力」と「傾聴の力」

――50歳の節目で気持ちを新たにされたという住吉さんですが、NHKアナウンサーとして15年、フリーに転身されて15年以上。長いキャリアを振り返って、今どのようなお気持ちですか?

TOKYO FMの『Blue Ocean』という番組で、生放送のパーソナリティを担当させていただき今年で15年目になります。NHK時代とフリーになってからの期間を合わせると、ちょうど今年、アナウンサー生活30周年となりました。なんだかとても感慨深いですね。

enetalk22_02_B
『50歳の棚卸し』は、人生後半を心豊かに生きるためのヒントをつづった住吉さん16年ぶりのエッセイ集(写真:住吉美紀さん公式Instagramより)

 

――『Blue Ocean』という番組を、住吉さんは、誰もがふらっと集まれる「ラジオの広場」と表現しています。リスナーのリアルな声に向き合う中、ものの見方や暮らしへの意識が変わりましたか?

それはもう、大いにあります!ラジオを通じて、本当にいろいろな方がこの社会にいて、それぞれいろいろな気持ちで毎日を過ごしているんだなと、日々実感しています。一見すごくハッピーそうに見える人だって、実はつらい事情を抱えていることもあるし、当然その逆もある。

お寄せいただくメッセージを読んでいると、皆さんがそれぞれの立場で、さまざまな経験を重ねて生きていることがビシビシと伝わってきます。おかげで、私自身の「人に対する想像力」が、以前よりもぐっと働くようになりました。ものの見方が本当に変わりましたし、私の人生そのものがすごく豊かになったなと感じています。

enetalk22_03
『Blue Ocean』を担当したことをきっかけに、ラジオが住吉さんのライフワークに(写真:住吉美紀さん公式HPより)

 

――番組には、本当に多くのメッセージやお悩みが届きますよね。住吉さんの大きな強みである「聴く力」は、どのように磨かれてきたのでしょうか。

とてもシンプルですが、大事にしてきたのは「本当に、心から聴く」ということです。仕事で誰かの話を聞いているときって、周りにたくさんのスタッフやカメラがあったり、残り時間が気になったりして、いろいろなことに気を取られがちです。そうすると、実は相手の話が全然頭に入っていなかったりするんですよね。

だから私は、話が始まったら「一度、世の中の全てを消し去る」くらいの気持ちで、目の前の相手に向き合います。一言一言をちゃんと飲み込んで、消化しながら聴く。人間って不思議なもので、「この人は自分の話を本当にちゃんと聞いてくれている」と伝わると、予定していなかった深いお話まで、自然と心を開いて話してくれます。

 

もしも電気がなかったら?ボトルレターの時代から、一瞬で心がつながる現代へ

――ラジオなど住吉さんの「声の仕事」の現場の一部を電気が支えています。「電気がなければ成り立たない仕事だ」と、改めて実感された場面はありますか?

毎日のように思っています。ラジオの生放送をお届けしている「電波」は、電気信号が波となって遠くまで伝わっていくもの。もしも、この世界に電気がなかったら、私は今この仕事ができていません。リスナーの皆さんと「ラジオの広場」で出会うことも、そこで自分の人生が豊かになったり、人として成長させてもらったりすることもなかったんだなと思うと……。本当に、電気なしでは私の仕事も人生も、何ひとつ始まっていなかったなと感じます。

enetalk22_04
ラジオにとって電気は欠かせないと話す住吉さん

 

――自分の声が、電波の波になって、見知らぬ誰かの元へ届く。とてもロマンがありますよね。

電気や電波がなかった大昔は、たまたま近くで会えた人と話すとか、洞窟に壁画を描くとか、手紙をボトルに入れて海に流すくらいしか、コミュニケーションをとる方法がなかったわけで。それが今では、電気のおかげで、毎朝何万人もの方と一瞬でつながることができる。そこで一緒に心が動き、「よし、明日からもまた頑張ろう!」って元気を分かちあえる。これって、すごく奇跡的なことだと思うんです。

心でつながる人がいればいるほど、人生は豊かで、とても心強いものになります。ラジオのような公共の電波はもちろん、電話やメール、動画通話も全て電気の力で動いています。コロナ禍のときも、離れたおばあちゃんとお孫さんが動画でお話しできて救われた、というエピソードがたくさんありました。目に見えないけれど、「大切な人とつながる機会」をいつでもつくり出してくれているのが、電気。そう考えると、本当にすごいことだなと感謝が湧いてきます。

――仕事場を離れた「日々の暮らし」のなかで、電気のありがたみを実感することは?

いま韓国ドラマに猛烈にハマっているんです!笑ったり泣いたり思いきり心を動かすことが、毎日の癒やしやストレス発散です。もちろん、これも電気があってこそ。そう思うと、大好きなエンタメをいつでも楽しめる環境を作ってくれて、電気に対してありがとうって気持ちになりますね(笑)。

 

外国の夜は「ちょっと薄暗い」。人間のバイオリズムに寄り添うオレンジ色の癒しの光

――住吉さんは小学校と高校時代をアメリカやカナダで過ごされたそうですが、日本と海外では「電気の使い方」に違いはありましたか?

あちらの住宅って、天井に部屋全体を照らす大きなライトがついていないことが多いんですよ。基本的には、自分でペンダントライトを吊るしたり、スタンドライトを部屋のあちこちに配置したりして暮らしています。そのため、日本の住宅に比べると全体的に「ちょっと薄暗い」んですね。その薄暗さの中に、昔ながらの暖かみのあるオレンジ色の明かりがポツポツと灯っている。それは私にとって、すごく心地よいものでした。

実際、夕方に近所の道を歩いていると、「あ、今ぽっと明かりがついたな」という瞬間が見えたりするんですね。一つひとつの家に灯りが灯っていくことで、街並みそのものが、ちょっと素敵に演出されているような感じがして。そんな「なんでもない日常の暮らし」を、灯りがとても美しいものにしてくれていたな、と今振り返っても強く思います。

enetalk22_05
小学校入学前には、家族でアメリカ・シアトルへ。4年半を過ごしたことで、自身の基盤ができたという(写真:住吉美紀さん公式HPより)

 

――グラデーションのように、だんだんと夜の空間が作られていくのですね。

明るすぎないからこそ、人間のバイオリズムにすごく優しくフィットするんです。あちこちに小さな灯りがあることで、お部屋の中に綺麗な影ができたり、光の表情が生まれたりするんですよ。日中のアクティブな時間から、夜に向けて少しずつ心が静まっていく。「今日も1日よく頑張ったね」と振り返る時間や、家族で静かに団らんする時間に自然とシフトできるんです。

それに、スタンドライトをどこに何個置くか、どんな色にするかで、住む人によってまったく雰囲気が変わる。照明に個性が出るし、「人のぬくもり」を感じられるのも魅力でした。帰国してからも、あえて天井の明かりはつけずに、お気に入りのランプだけを置いて暮らしていた時期があるくらい、私にとって「心を穏やかに保つこと」とつながっています。

enetalk22_05
高校時代は、親の転勤でカナダ・バンクーバーへ。現在でもくり返し訪れる第二の故郷(写真:住吉美紀さん公式HPより)

 

――お家での過ごし方がガラリと変わりそうでワクワクします。

お部屋の気分を変えたいと思うと「カーテンの色を変えようかな」とか大がかりな模様替えを想像されますよね。でも実は、照明器具の配置を少し変えたり、電球の種類(色)を変えたりするだけでも、お部屋の雰囲気ってまったく変わるんですよ。日常のちょっとした「気分の切り替え」には、照明を意識するのが一番手軽で効果的だなと思っています。

――では、今日からすぐにできる、日常の疲れをリセットするための「灯りの工夫」があれば教えてください。

おすすめなのが、「お風呂に入る前に、お部屋の電気を落とす」という方法。天井の明かりを消して、少し暗めのフロアランプだけにする。そして、お風呂から上がったあとは、その一段落ち着いた優しい明かりの中で過ごすんです。これだけで、神経が「そろそろ眠りに向かう時間だな」「今日を振り返る時間だな」というモードに、自然とスイッチしていく感覚があります。自分のバイオリズムが心地よく整っていくのを実感できると思うので、ぜひ試してみてほしいですね。

enetalk22_07
灯りとの付き合い方で日々の暮らしを穏やかに保つ住吉さん

 

――最後に、住吉さんにとって「電気」とは、どのような存在でしょうか?

私にとっての電気は、例えるなら「地面」。私たちは普段、地面に立っていることを、いちいち意識しながら歩いてはいませんよね。でも、当たり前のように地面があるからこそ、転ばずに立っていられるし、歩くことができる。本当になければ、私たちの暮らしは一歩も前に進まない。まさにそんな存在だと思います。

 

【編集後記】
朝のラジオの顔として、いつも私たちに心地よい元気を届けてくれる住吉美紀さん。50歳という節目を迎え、ご自身の「棚卸し」を経たからこその、一言一言を大切に紡ぐ真摯な佇まいが印象的でした。私たちが普段使っている「電気」を「地面のような存在」と例え、また、電気がもたらす「人と人とを瞬時につなぐ奇跡」に感謝される姿には、日常を愛おしむヒントが詰まっています。今この瞬間を心地よく選択していきたいと思わされる、温かなインタビューでした。
 

住吉美紀

enetalk22_09

すみよしみき。フリーアナウンサー・文筆家。小学時代はアメリカ・シアトルで、高校時代はカナダ・バンクーバーで育つ。国際基督教大学(ICU)卒業後、1996年にアナウンサーとしてNHK入局。2011年よりフリーに。2012年からTOKYO FM朝のワイド番組「Blue Ocean」(月~金、9:00~11:00)のパーソナリティを務める。著書に『50歳の棚卸し』(講談社)。

HP:https://mikisumiyoshi.com/
Instagram:@miki_sumiyoshi
X:@miki_catgirl45

企画・編集=Concent 編集委員会


★さらに「日本のエネルギー」について知りたい方はこちら!
エネルギーの「これまで」と「これから」-エネルギーに関するさまざまな話題を分かりやすく紹介-(経済産業省 資源エネルギー庁スペシャルコンテンツ)