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国内最新!今しか見られない原子力発電所内部を突撃レポート!

2018.11.27

全国にある原子力発電所の今を、Concent編集部きっての好奇心の持ち主Con(コン)ちゃんが突撃取材! 第1回は、中国電力の島根原子力発電所へ。2006年から建設工事を進めている3号機の最奥部がどうなっているのか、Conちゃんがお伝えします!

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Conちゃん、原子力発電所の巨大さに驚く!

編集部員Conちゃんがやってきたのは、島根県松江市にある島根原子力発電所。宍道湖の真北、目の前に日本海が広がる場所に位置する。

厳重なセキュリティを前に待っていると、「Conちゃーん、Conちゃーん」と呼ぶ声が。

迎えてくれたのは島根原子力本部の平木なつみさん(以下、平木)。取材に快く応じてくれた島根原子力発電所を代表して、発電所内を案内してくれるらしい。セキュリティでいろいろとチェックを受けたら、いよいよ発電所内へ。

発電所内はバスで移動。それもそのはず。ここの敷地面積は約192万㎡。その広さは、なんと甲子園球場(約3万8500㎡)50個分!

島根原子力発電所は、日本有数の歴史ある原子力発電所。1974(昭和49)年に運転を開始した。

平木「3つの原子炉を保有していて、初の国産原子炉である1号機は廃止措置作業中、2号機、3号機は稼働に向けて国の審査を受けているんだ」

平木「今は、発電所は稼働していないけれど、この中で中国電力や関連会社など3000人以上の人が働いているんだよ」

平木「違うよ。発電所の運転には、たくさんの水が必要になるの。だから、日本の原子力発電所は海沿いに建てられているんだよ。ちなみにここは、日本で唯一、県庁所在地にある原子力発電所なの」

平木「確かに原子力発電所での事故につながる大きな要因の一つが津波。津波が建物の中に入ると、重要な設備が水浸しになって、使えなくなってしまう場合があるの。だから、海に面している岸壁には最大11.6mの津波を想定して、海抜15mになる防波壁を設置しているんだよ」

平木「それに防波壁を超えるような大きな津波が起こったときも想定して、建物の入口などは厚さ15~30cmの水密扉で、水の浸入を防ぐ対策をしているの」

平木「事故につながるもう一つの要因は地震ね。原子力発電所は固い岩盤の上にあることが絶対条件。ここも例外じゃなくて、大地震でも耐えられる場所を選んで建てられているんだよ」

Conちゃん、最新鋭の3号機建物の中に入る!

発電所敷地内を一周して、次は島根原子力発電所3号機に向かったConちゃん。

ほぼ完成済みの3号機は、稼働に向けた審査の真っ最中。国内最新の原子力発電所の一つで、稼働すれば出力137.3万kW、廃止が決まった1号機の約3倍の発電能力があるのだとか。

平木「鳥取県と島根県で1年間に使う電気全部を、3号機だけでつくれるくらいかな」

原子力発電所の心臓部とも言うべき原子炉が格納されている3号機の建物。物々しい様子をイメージしていたが、思いのほかシンプル。さっそく内部を取材しようとすると……。

平木「ここは部外者立ち入り禁止! 関係者だとしても施設に入る前の生体認証など、厳重なチェックをクリアしないと絶対に入れないの。だから今日は……ごめんなさい!」

平木「うそだよ。今は稼働していないから大丈夫。今回は特別にConちゃんに中を見せてあげるよ」

ようやく3号機の建物内に入ると、そこはまるで迷路のようだった。

いくつもの分厚いドアを抜け、エレベーターで昇ったり降りたり……奥深くへと進んで着いたのは、どでかい体育館のように広い空間。

平木「これは原子炉じゃなくて、発電用のタービンと発電機。実際に電気をつくる場所だよ。原子炉で核分裂を起こして、発生する蒸気でタービンを回しているの。蒸気を使うのは火力発電と一緒だね」

平木「1つの原子核が2つに分裂する現象のこと。原子力発電所では、燃料を燃やす代わりに、ウランの核分裂で発生する熱エネルギーを使って発電しているの」

そして、さらに奥へと進むConちゃん。いよいよ未知の領域へ!

Conちゃん、今しか入れない発電所の心臓部に潜入!

分厚い扉をいくつも通り、奥が見えないほどの長い廊下を歩き続けること数分。

ついにたどり着いた発電所の心臓部、そう「原子炉」だ。

稼働前の今だからこそ特別に入ることができたが、発電が始まれば、部外者は立ち入れない領域だ。

平木「その通り。原子炉は、核分裂の熱で蒸気を発生させる機器全体のこと。稼働中はこの中に、燃料棒や水が入っているの。全体は鉄筋コンクリート製の原子炉格納容器で守られているんだよ」

平木「この中で核分裂を起こすんだけど、さっき言ったとおり、その燃料はウラン。容器内に格納される燃料棒の中にはたくさんのウラン燃料の固まり(ペレット)が入っていて、核分裂によって発生した熱で水を沸騰させるの。その蒸気でタービンを回すんだよ」

平木「ペレット1つは小指の先くらいの大きさなんだけど、それだけで一般家庭が使う電気の8~9カ月分を作り出すことができるんだよね」

平木「ちなみに、この3号機は沸騰水型原子炉(BWR)をさらに進化させた、最新鋭の改良型沸騰水型原子炉(ABWR)なんだよ」

平木「基本的な仕組みは同じだけど、改良点は原子炉建物と原子炉格納容器が一体になったことや、水を循環させるポンプが原子炉に内蔵されたことかな。もっと簡単に言うと、構造がシンプルになったから、安全性が上がったってこと」

次はこの部屋の下に向かうConちゃん。

平木「ここは原子炉の真下。効率的に発電するためには、核分裂をコントロールする必要があるんだけど、そのためにはブレーキのような装置が必要になるの。その役割を果たす制御棒を動かす装置があるところなんだよ」

平木「最新鋭の3号機では、この制御棒を動かすシステムを2つ備えていて、1つのシステムにトラブルが起きても、もう1つのシステムで動かせるようにしているんだよ」

続いてConちゃんがたどりついたのは、階段を上った先にある広い部屋。

平木「原子炉が破損すると、放射性物質が漏れるおそれがあるの。破損の大きな要因になるのが、原子炉内の圧力が高まること。そういうリスクを防ぐための設備が、原子炉を筒状に囲っている圧力抑制室なんだよ」

平木「稼働中はここに水が溜められていて、圧力が上昇したときには原子炉内の蒸気を水の中に逃がして圧力を下げるんだよ」

Conちゃん、備えに備えた安全対策に驚愕する!

原子炉建物を後にしたConちゃんは、ここぞとばかりに広大な敷地内を散策する。

平木「発電所の外からの電気が使えなくなったときに活躍する高圧発電機車や、原子炉を冷やすための大量送水車など、いろいろな状況に対応するためにこういった特殊車両も敷地内の至るところに準備しているの」

平木「発電所、特に原子力発電所には、過去の災害を踏まえて多くの規制基準が設けられていて、日本の基準の厳しさは世界でもトップクラスと言われているんだ。例えば、森林火災が起きたとき、発電所内に燃え広がるのを防ぐために、山の斜面をコンクリートで覆うなど、さまざまな事態を想定して対策しているんだよ」

平木「いざというときに即対応できるように、毎年1回の発電所総出での総合防災訓練や、年に数十回もの個別訓練を実施しているの。今見てもらっているのはアクセスルート確保訓練といって、瓦礫などで道がふさがれたときにいち早く復旧するための訓練。ちなみに、平成29年度は総合防災訓練を1回、個別訓練を77回行ったんだよ」

平木「どんなときでも電気が使えるように、安定して電気をお届けするのが電力会社の使命なの。日本は資源のほとんどを輸入に頼っているんだけど、原子力発電は少しの燃料でたくさんの電気を作れるから、電気を安定してお届けするのに役立つんだ。しかも発電時にCO2を排出しないから温暖化対策に有効なの。日本の置かれている状況を考えると、原子力を含め、いろいろな発電方法を組み合わせる必要があるんだよ」

漠然と“危険”というイメージが強い原子力発電所。でもそこには、エネルギーの安定と安全を守るため多くの取り組みが行われていて、日々、頑張っているたくさんの人たちがいるんだなと思いながら、食堂で名物の肉うどんを食べて発電所を後にしたConちゃんでした。


取材協力

中国電力株式会社 島根原子力発電所

住所:島根県松江市鹿島町片句654-1

電話:0120-209-050(フリーダイヤル)

http://www.energia.co.jp/atom_info/shimane/index.html