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「地層処分」って本当に安全なの? 幌延深地層研究センターに突撃取材(前編)

2020.11.05

日本を取りまくエネルギーの今を伝えるべく、Concent編集部きっての好奇心旺盛なCon(コン)ちゃんが突撃取材! 第12回は、原子力発電のごみ対策となる「地層処分」が本当に安全なものなのか教えてもらうために北海道の研究所へ。知られざる地下研究の今を、Conちゃんがお伝えします!

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Conちゃん、北の大地にある地下研究所に行く!

前回、「原子力発電のごみ(高レベル放射性廃棄物)」の最終処分を担うNUMO(ニューモ:原子力発電環境整備機構)を取材したConちゃん。

>「原子力発電のごみの最終処分」って何?

そこで、日本は「地層処分」という方法でごみ対策を進めていることを知った。

でも「これ……本当に進めて大丈夫!?」と思ったので……

来ました。北海道の北端、稚内。

ここから南に車で1時間ほど行ったところにある幌延町に、地層処分のさまざまなことを研究開発する研究所があるそう。

幌延町は東京23区と同じぐらいの広さに約2300人が暮らしている。酪農が盛んで乳牛は7700頭ほど。

そんな町の市街地から少し北にあるのが、今回の目的地となる「幌延深地層研究センター」だ。

川澄「ようこそ。幌延深地層研究センターへ」

川澄「まずはこの研究所のことを知ってもらおうかな。ここは、地層処分に関わる技術を研究開発する拠点なんだ。2001年から3段階に分けて研究開発を進めているところで、2018年度には、それまでに得られた成果を取りまとめた報告書を公開しているよ」

川澄「2020年度からはさらに研究開発を深めていく計画を、地元の北海道と幌延町に認めてもらったんだよ。地層処分の研究開発は、古くは1976年から始まっていて、1999年にまとめられたレポートがあるんだけど、簡単に言うと『日本でも、信頼性高く地層処分を行うことができる』というもの。国や国際機関から『このレポートは信頼に値する』という評価も受けていて、これを基にして、この幌延でのプロジェクトが進められているんだよ」

「海底や南極の氷の下、宇宙への処分や地上での長期貯蔵管理などいろいろ検討されたんだけど、管理期間の長さやリスク、それに未来に暮らす人々のことを考えたときに、最適なのが地下なんだよ」

川澄「地層処分の方針を決めたり規制したりするのは国。実際に事業を進めるのはConちゃんも話を聞きに行ったNUMO。私たちの役割は、この規制と事業の両輪を支える軸になる“技術の基盤”を作っていくこと」

川澄「最終的に安全性を評価するためにも使われていくことになるから、地層処分の技術の信頼性をどれだけ高められるか。これが、幌延深地層研究センターの大きな最終目標になるんだ」

Conちゃん、バリアの強度に驚く!

幌延深地層研究センターが地層処分の土台となる研究開発をしていることがわかったConちゃん。

でも、どうして地層処分が安全だって言えるんだろう。

川澄「原子力発電の燃料は使い終わっても95%くらいリサイクルできるのは知っているよね?でも残りの5%は再利用できない放射能(放射線を発する能力)の高い液体が発生するんだけど、これをガラスの原料と溶かし合わせて容器に入れて、固めたのがガラス固化体。いわゆる高レベル放射性廃棄物で、これが地層処分するものだね」

>【ConちゃんがNUMOにインタビュー】「原子力発電のごみの最終処分」って何?

川澄「ガラスで固めるのは、水に溶けにくく、化学的に安定していて、物質を長く閉じ込められるから。例えば色ガラスってあるよね? この色が目で見えるのは、色素が移動せずにガラスの中に閉じ込められているからなんだ。つまり、物質を長く安定して動かなくできるってことだね」

川澄「このガラス固化体を安全に地層処分する方法が、天然の岩盤のバリアと人工物のバリアを組み合わせた『多重バリアシステム』だよ。まず、人工バリアを見てもらおうかな」

川澄「①のガラスで放射性物質を閉じ込めて、②の金属製の容器でガラス固化体と地下水の接触を防ぐ。③は水を通しにくく、物質をくっつける性質で地下水と放射性物質の動きを遅らせる。放射性物質を閉じ込める3つの人工バリアなんだ」

川澄「ガラス固化体以外は全部本物だよ。組立てた人工バリアは最終的には高さ約3.3メートル、直径は約2.2メートル、全体の重さが32トンぐらいになるね」

川澄「オーバーパックの厚さは19センチメートル。少なくとも1000年間は確実に閉じ込められるように、余裕をもって設計しているんだ」

川澄「オーバーパックの役割は、少なくとも1000年間は地中に流れる地下水とガラス固化体を接触させないというもの。それをさらに粘土のブロックで外側から包んで地下水から守っているんだよ」

川澄「これは本物の緩衝材ブロックだよ。これの主な材料は、猫のトイレの砂などにも使われているベントナイトという粘土。2000トンの力で圧縮してつくっているんだ。水を通しにくくするという性質を利用して、ブロック同士をぴったりくっつけ、地下水がガラス固化体に触れるのを遅らせるんだ。それに、地下水そのものの流れを遅らせる役割も果たすんだよ。ちなみに、これはブロックの形をしているけど、他にも粘土を吹き付けるなど、さまざまな設置方法も考えられているんだ」

Conちゃん、地下の懐の深さに感謝する!

高レベル放射性廃棄物の影響を、少なくとも1000年間閉じ込めるというオーバーパックの能力に驚いたConちゃん。

でも、このバリアって、長~い年月をかけて処分する高レベル放射性廃棄物の影響から、人間の生活を守れるんだろうか。

川澄「天然バリアは、地下深くの岩盤が持っている放射性物質を閉じ込める機能のこと。酸素がほとんどないから人工バリアで使われている金属への影響も少ない。それに、地下水の流れは地上と比べてとても遅くて、1年間で平均わずか数ミリメートルくらいなんだよ」

川澄「まず、ガラス固化体の放射能は1000年後までに大きく下がって、その後も緩やかに減少していくんだ。地下深くの地下水の動きは非常に遅いこと、それに岩盤には地下水に溶けている物質をくっつける能力があるんだ。 だから、放射性物質が人工バリアから漏れても、移動する速さ(※)はすごく遅いと考えられているんだよ」

※原子力発電環境整備機構(NUMO)によると、地下水の何十分の1、場合によっては何千分の1を下回る速度

川澄「幌延深地層研究センターは、それを確かめるために実証試験をしているんだね」

川澄「とっても大事なんだよ! 地下水には物質を溶かす性質があるでしょ? つまり、放射性物質が漏れたら溶けて流されてしまう。だから、地下水の流れや化学的な性質などを調べることがとても重要になるんだよ。これ、地下深くの地層から採取した岩石のサンプルなんだけど…」

川澄「そうだね。上は堆積岩で、下は花崗岩。日本に広く分布している岩石で、幌延で研究対象にしているのは堆積岩だよ。音が違うのは硬さが違うから。花崗岩は、ほとんど金属音だよね」

川澄「地層処分に必要な条件を満たせば、基本的に岩石の種類にかかわらず安全な地層処分は可能だと考えているよ。花崗岩は硬くて強く、岩盤の割れ目を地下水が流れるのが特徴だね。一方で堆積岩は、花崗岩に比べると柔らかいけど、小さな粒が積もった構造になっていて、地下水がその隙間をゆっくりと動いていくんだ」

川澄「そうだね。しっかり研究して、安全な地層処分の技術的な基盤になる成果を上げてきているよ。ちなみに、この施設の地下は100万年より前の日本海に堆積してできた泥が固まってできた岩石。そこに“100万年前より古い海水が閉じ込められていたんだよ」

川澄「さっきの花崗岩は、日本にもう一つある研究施設、瑞浪超深地層研究所(岐阜県)が対象にしている岩石なんだ。日本の地下深くは、花崗岩と堆積岩が大きな割合を占めているんだよ。だから、2カ所の研究所で地層処分に関する技術について研究しているんだ。ちなみに、瑞浪超深地層研究所は研究を終了していて、2020年2月から埋め戻しを始めているんだよ」

川澄「日本の場合、実際に地層処分をする場所を決めるのはこれからだから、幌延も瑞浪も技術を磨くためだけに造られた研究施設。だから、研究期間が終わったら、地上も地下も元に戻す約束なんだよ」

川澄「高レベル放射性廃棄物を自分の国で地層処分していくのは国際的な共通認識。だから状況は国によって変わるけれど、世界各国で進められているんだ。もう地層処分場の建設が始まっている国もあるし、候補地に研究施設を建てている国もあるよ」

川澄「実際にここから300メートル以上も深い地下にある坑道の中で研究開発しているんだよ。行ってみる?」

天然バリアと人工バリアを研究開発し、高レベル放射性廃棄物をどれだけ安全に処分できるかの方法論を追究する幌延深地層研究センター。

次回は、地下350メートルの坑道へ。Conちゃんがリポート!

>後編に続く


取材協力:幌延深地層研究センター

日本原子力研究開発機構が運営する研究施設。地下350メートルにある調査坑道を有し、高レベル放射性廃棄物の地層処分技術に関する研究開発を行っている。地層処分や研究開発内容が学べる「ゆめ地創館」は一般見学可能(月曜(祝日の場合は水曜日)、年末年始は休館)。地下施設の状況は、毎週金曜にホームページで写真配信されている。
https://www.jaea.go.jp/04/horonobe/

★さらに「高レベル放射性廃棄物の地層処分」について知りたい方はこちら!

「放射性廃棄物の適切な処分の実現に向けて」(経済産業省 資源エネルギー庁スペシャルコンテンツ)