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エネルギーは「安全保障」そのもの! 世界のエネルギー事情を知る専門家に聞いてみた(後編)

2022.09.29

日本を取りまくエネルギーの今を伝えるべく、Concent編集部きっての好奇心旺盛なCon(コン)ちゃんが突撃取材! 第24回のテーマは、前回に引き続き「エネルギーと安全保障」。前編では、電気代値上がりの理由や、ヨーロッパ各国のエネルギー事情を聞いたところ。後編では、激動の世界情勢の中で日本はどうしていけばいいのか? 進むべき道筋をConちゃんがお伝えします!

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Conちゃん、エネルギーは安全保障だと気づく

前編でエネルギー情勢に詳しい金田武司先生に話を聞いて、今の電気代の値上がりが、ヨーロッパで“風が吹かなかった”ことに端を発したと知ったConちゃん。

>前編はこちら『風が吹かなきゃ電気代は上がる!? 世界のエネルギー事情を知る専門家に聞いてみた

Conちゃんヒートポンプ01

風力発電を中心とした再生可能エネルギー(以下、再エネ)への依存によってエネルギー不足となったヨーロッパ各国の需要が、こぞって天然ガスに向かい価格が高騰。ついで石炭、石油にも波及していき、いろいろなエネルギー資源の価格が高騰する今に至ったという。

そうした中で、資源がほとんどない日本はどうすればいいのか。

金田「そうだね。反対に日本が自力でつくれるエネルギーもある。再エネや原子力発電だね。ただ再エネは前編で説明した通り発電量が不安定、原子力発電は安定的で、数を増やせばそれだけ発電量も増やすことができるけれど、今はほとんどが止まっている。加えて、たとえ国内すべての原子力発電所を動かしても、日本全土のエネルギーは賄えない。結局、海外からエネルギー資源を輸入することには変わりないんだ」

金田「それでも経済大国にまで発展してこれたのは、日本が“安定供給”のために変動の小さい価格で長期間エネルギー資源を買えるように資源国と契約してきたから。島国で資源が乏しい日本の地理的な特徴を考えると、これがとても大事。他国と良い関係を築き続けながら、いかなるときでもエネルギー資源を売ってもらえる努力をしてきたってことだね」

 

Conちゃん、日本に今必要なエネルギー政策を知る

金田「制裁のために天然ガスの輸入を止めたら、日本国民の暮らしは苦しくなるよね。資源は余っているわけではないから、大量の資源を簡単に他国からの輸入に切り替えることなんてできないんだ。逆に、ロシアは日本に売れなくなっても自前のエネルギー資源で生きていけるし、他の国に売ってしまえば痛くも痒くもない。つまり痛い思いをするのは日本だけなんだ。これは日本だけの話ではなくて、ヨーロッパ各国も同じこと」

金田「ヨーロッパの各国は、ロシア国営のガス会社から天然ガスを買ってるんだ。しかも経済規模は年間約20兆円。それがロシアの利益となって、今なら戦争に使う兵器にもなっている。他の国々の命綱になっているだけに、この会社だけは制裁対象になっていないんだよ」

金田「天然ガスはマイナス162℃にした液体で日本に届くんだけど、100万キロワットの発電所にあるタンクは1個か2個か。もし、天然ガスが買えなくなったら、どうなると思う?」

金田「発電を続けられる期間はエネルギー資源によって異なっていて、国で備蓄している量を使い切るまで、石炭なら1カ月弱、石油なら半年くらい。そういう意味では、原子力発電は核燃料を一度使い始めれば3年間は持続できるものなんだ」

 

 

Conちゃん、エネルギーには安定性が必要だと感じる

金田「そのとおり。全部国民が選んでいることだよね。自分の生活を守るために、一人一人に責任があるということ。もし、エネルギー資源を他の国から売ってもらえない最悪の事態が起きたら、生命の危機や国の存続にまで発展する可能性もあることを頭の片隅に置いておかないといけない」

金田「ロシアのお金、ルーブルは高騰しているよね? それはロシアが天然ガスをルーブルでしか買えないようにしたから。需要の高い天然ガス=ルーブルになったら、価値は上がるでしょ。言い換えれば、ロシアには自国の通貨の価値を守る手段があるってこと」

金田「それは外交努力や技術力があったから。でも今後は、人口や労働力、経済に金融など、あらゆる分野が萎縮してくる。得意だった技術力まで低下したら日本の輸出力も下がって、国力そのものが低下してくるよね」

金田「再エネや原子力、石炭や石油に天然ガスなど、さまざまなエネルギー資源を確保しておくこと。それがいち早く日本を安定させることにつながる。そうすれば、ロシアの天然ガスへの依存度も低くできるかもしれない。ロシアが『売らない』と言っても、『買わない』という選択肢があれば、対等の立場になれるよね」

最後に金田先生は、「現代の暮らしにエネルギーは欠かせない。何よりも安定供給。その前提で、資源の重要性と大切さを考え、個人個人が何をすべきかを考え続けていくことが大事だね」と言っていた。

今年の夏も、エアコンの効いた部屋で快適に過ごしていた。それも電力が安定して供給されているおかげなのは間違いない。来年も再来年も、豊かな生活を続けるにはどうしたらいいのか、と改めて考えたConちゃんでした。
 


取材協力:金田武司

株式会社ユニバーサルエネルギー研究所 代表取締役。工学博士。東京工業大学 大学院 非常勤講師。八戸市地方再生政策顧問。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)技術委員。世界エネルギー会議(WEC)委員など歴任。

★さらに「日本のエネルギー」について知りたい方はこちら!
2021−日本が抱えているエネルギー問題(前編)
2021−日本が抱えているエネルギー問題(後編)