「地球温暖化」と聞くと、難しい話に思える人も多いかもしれません。工場や自動車から排出されたガスがなんとかかんとか…。しかし、とっても身近も身近の、私たちや動物が生きている上で吐き出しているガスも、地球の温暖化に影響を与えていると聞いたらどうでしょうか。
ウシやヒツジ、ヤギ、そしてラクダなどは、一度食べた草などをもう一度口の中に戻して咀嚼、つまり反芻(はんすう)する、反芻動物と呼ばれています。反芻動物は、4個ある胃を使って、食べた植物の消化に時間をかけて何度も繰り返すのです。
このとき胃の中では植物が発酵し、大量のメタンガスが発生しているため、ウシたちは絶えずゲップをすることで、ガスを体外に放出しています。ですがやっかいなことに、ゲップに含まれるこのメタンガスは地球温暖化を加速させる温室効果ガスの一つ。しかも、二酸化炭素の25倍以上の温室効果を持っていると言われているのです。
人が活動することで増加した主な温室効果ガスには、二酸化炭素、メタン、一酸化二窒素、フロンガスがありますが、温室効果ガスの種類としては、二酸化炭素が76パーセントと圧倒的ですが、次いで多いのがメタンで、約16パーセント。メタンは二酸化炭素に次いで地球温暖化に及ぼす影響が大きな温室効果ガスなのです。
出典)温室効果ガスインベントリオフィス 全国地球温暖化防止活動推進センターウェブサイト(http://www.jccca.org/)より
しかも世界のメタンガス排出量全体の、なんと37パーセントが動物の体内で発生するガスに由来するとされているとか。
こうして数字で見てみると、ウシのゲップは地球環境に大きなインパクトを与えていますよね。そのため、近年、これを最小限にするためにさまざまな取り組みが行なわれているのです。
その一つが、飼料の改良。「3-ニトロオキシプロパノール(3NOP)」と呼ばれる成分を乳牛の飼料に加えることで、ゲップに含まれるメタンの量を30パーセントまで削減させることに成功したのです。
しかも、産乳量に変化が見られなかったばかりでなく、さらに、牛乳の産出に膨大な体力を使う乳牛には珍しい、体重が増加するという恩恵まで得られたという研究結果が報告されているそうです。ウシのゲップの改善が地球温暖化防止に一役買っているなんて、壮大な話ですよね。
参考・出典『人類なら知っておきたい 地球の雑学』
(雑学総研/KADOKAWA)
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