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【電気な雑学】「青色LED」がなかったら世界はもっと暗かった!? コロナと戦う後押しも

2020.07.09

電気な雑学_青色LED1

新型コロナウイルスによって、大きく日常が変わったこの数カ月。医療の現場では、今日も懸命に戦っている人たちがいます。

そんな医療従事者への感謝と応援の気持ちを表そうと、2020年4月ごろから「ブルーライトアップ」という動きが全国各地へと広がりました。

ブルーライトアップとは、建物や施設などを青くライトアップして、医療や介護の現場で働く全ての関係者に感謝を込めたメッセージを贈るプロジェクトのこと。

「青色」は、英国の国営医療サービス事業(NHS)のテーマカラー。「Clap for Carers(医療・介護従事者のために、拍手を)」という医療従事者サポートプロジェクトの中で、首都ロンドンにある観覧車や高層ビル、スタジアムなどを青くライトアップしたことが始まりとされています。

この動きは、「#LightItBlue」(ライトイットブルー)のハッシュタグと共に世界へと波及。日本では各地の電波塔、東京都庁、大阪城、明石海峡大橋といったランドマークのほか、電力会社の鉄塔や火力発電所の煙突なども青く染められました。

今も戦う医療の現場を応援するために、世界各地を鮮やかに照らした青色の光。もしこれが30年ほど前だったら、これほど鮮やかに青く照らし出すことはできなかったかもしれません。

それは、現在では当たり前にある「青色LED」が存在しなかったから。

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©seven11nash/Pixabay(※画像はイメージ)

電気を効率的に使って光るLED。そもそもLEDの開発は意外と古く、20世紀半ばに始まっています。

1962年には赤色のLEDが、1968年には緑色のLEDが開発されましたが、フルカラーをつくり出す光の3原色「赤・緑・青」のうち、青色の開発だけが遅れていました。

光源として用いる光は白色が適しています。しかし、青色がないことにはLEDで白色をつくり出すことが難しく、照明としての明るさも足りなくなります。そのため、せっかく消費電力が少なく長寿命なのに、LEDを広範囲で使うことができなかったのです。

長いこと青色LEDの誕生が期待されていましたが、その技術はとても難しく、20世紀中の開発は不可能だと考えられていました。

そんな中、1989年に物理学者の赤崎勇さんと天野浩さんが青色LEDに必要な技術の開発に成功。1993年には、現在のLEDにつながる高輝度青色LEDを物理学者の中村修二さんが開発しました。世界が待っていた青色LEDが完成したことで、LEDは急激に社会に広がっていくことになります。

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©Juanatey/Pixabay(※画像はイメージ)

この青色LEDの誕生は、照明だけでなく、多くの分野に影響を及ぼしました。

素子そのものが光る小さなLEDを部品として使えることになり、電子機器の小型化・軽量化が可能に。また、青色の光はデジタルデータの書き込みにも能力を発揮し、青色LEDの技術が応用されてブルーレイディスクが誕生しました。

さらに、LEDは電力消費量が少ないので、家庭では省エネの、地球規模では温暖化防止の大きな力となっています。

このように、青色LEDが生まれたことで、できるようになったことが数多くあったのです。

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©musiccrue/Pixabay(※画像はイメージ)

開発成功から20年余り。青色LED(青色発光ダイオード)を開発した3人には、2014年にノーベル物理学賞が与えられました。生活の中で知らぬ間に利用していた多くの人たちが、青色LEDの存在にはっきりと気付き、そのすごさを知ったのも、このタイミングではないでしょうか。

青色LEDは、電気をムダなく光に変えるとても画期的な発明でした。ただそれ以上に、青色LEDが生まれたことで実現可能となった技術の広さや、人類にもたらされる利益の多さ、つまり電気というエネルギーを効率よく光に変えて、さまざまな形に利用できる応用力こそが、ノーベル賞クラスのものすごく画期的なことだったのです。

電気とLEDが生み出す青い光。世界各地に広がった鮮やかな青色の光景も、この発明が生んだ奇跡の一つなのかもしれませんね。

※青色LED開発に関しての記述を修正いたしました。 2020年7月17日


地球の雑学書影

 

参考・出典『人類なら知っておきたい 地球の雑学』
(雑学総研/KADOKAWA)

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