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【電気な雑学】実はコスパがいい「エアコン」のすごい仕組み

2020.10.29


©kouta/PIXTA(ピクスタ)

今年も長く続いた猛暑。「エアコンを使いすぎて電気代が…」という声も聞こえそうです。

でも実は、エアコンがとてもコストパフォーマンスのいい家電ということをご存知でしょうか。

それには、省エネにもつながる「ヒートポンプ」という仕組みが大きな役割を果たしています。

電気代が数倍お得に感じる! エアコンで涼しくなる仕組み

普段、何気なく利用しているエアコンですが、実は不思議なことがたくさんあります。

どうして部屋の空気より涼しい風が出せるのか? また、中に電熱器などが入っていないのに、なんで暖かくできるのか?

この秘密を解くために知らなければならないのが、エアコンの仕組みです。

すごい技術を使っていそうですが、この原理はいたって簡単。

実は、氷を手に乗せると冷たく感じるのと似たようなものなんです。


©er00/photoAC

熱は、温度の高いところから低いところに移動する原理があります。

氷を持つと冷たく感じるのは、手のひらから熱が氷に移動しているからです。

加えて、物質は圧力をかけると温度が上がり(圧縮)、逆にゆるめると温度が下がる(膨張)という性質があります。

エアコンは、この圧縮を電気の力で行うことで、熱の移動を操っているんです。

この熱の移動がエアコンを理解する上での最大のポイント。

では、実際にエアコンが部屋を冷やす仕組みを見てみましょう。

エアコンは、主に「圧縮機」と2つの「熱交換器」からできていて、その間をつなぐチューブの中を熱を運ぶことができる「冷媒」が行き来します。

エアコンの冷房をつけると、次のような熱の移動が行われます。

①室内機が部屋の暖かい空気を取り込み、熱交換器を通る冷たい液体の冷媒に熱が移動する

②冷やされた空気は涼しい風となって部屋に送り出される

③熱を奪った冷媒は気体になり、チューブを通って室外機へ

④電気で動く圧縮機によって圧力がかけられ、冷媒が外の空気より高温になる

⑤室外機の熱交換器でより温度の低い外の空気へと熱が移動し、冷媒は液体に戻る

⑥冷媒の圧力がゆるめられ、圧力をかけられる前よりも冷たい状態になり室内へ

これを繰り返して部屋の熱をどんどん外に出していくのが冷房の仕組みです。

注目してほしいのは、電気を使うのが冷媒に圧力をかけて室内の熱を室外に運ぶことがメインだということ。

エアコンのカタログをよく読むと、「1キロワット(kW)の電気代で5キロワットの冷暖房ができる」といったことが書かれています。

これは小さな消費電力で、大きな冷暖房効果が生み出せるという意味。その理由がこの“熱を運ぶだけ”だからです。

熱を運ぶために圧縮するだけなら、空気を直接冷やしたり温めたりするより、使う電気が少なくて済みます。

こうしてエアコンは、消費電力以上の能力で部屋の涼しくしてくれています。

なんだかお得感がありますよね。

暖房は、冷媒の動きが冷房と逆回りになります。

①室外機が外の空気から熱を取り込み、熱交換器を通る冷たい冷媒に熱が移動する

②圧縮機によって圧力がかけられ、冷媒が室内の空気より高温になる

③室内機の熱交換器でより温度の低い部屋の空気へと熱が移動し、部屋が暖まる

つまり暖房が部屋を暖かくできるのは、外の空気が持つ熱を電気の力でさらに高めて、室内に取り込んでいるからです。

こうした仕組みから、エアコンには電熱器など空気を暖める器具が必要なく、冷房と同様に消費電力以上の暖房効果が得られます。

このように、電気で動いている圧縮機は冷媒の圧力をコントロールして室内から室外へ、また室外から室内へと熱を運ぶ役割を担っています。

水槽の水をポンプで循環させるのに似ているため、この仕組みは「ヒートポンプ」と呼ばれています。

電気と熱の特性を上手に利用したヒートポンプのおかげで、エアコンはたいへん効率のいい省エネ空調機として、私たちの暮らしを支えてくれているのです。

地球の雑学書影

 

参考・出典『雑学科学読本 身のまわりのすごい技術大百科』
(涌井貞美・涌井良幸/KADOKAWA)

私たちは今、すごい技術とともに生きている! 何気なく使っている文具から、便利すぎるハイテク機器まで、実は身の回りにあるアレもコレも全て「科学技術」の結晶なんです。身近なモノの知られざる仕組みや技術が、図解で丸わかり! 読んだそばから“身近なモノ”に感謝したくなる一冊です。