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将来のために押さえておくべき「再エネ」のメリット&デメリット! エネルギーの専門家に聞いてみた(後編)

2022.03.16

日本を取りまくエネルギーの今を伝えるべく、Concent編集部きっての好奇心旺盛なCon(コン)ちゃんが突撃取材! 前回に続き、第21回のテーマは「再生可能エネルギー」。地球に優しくて燃料もいらない最高のエネルギーって思っていたけれど、専門家からすると、「きちんと知っておかなければならないこと」も実はいろいろとあるらしい。Conちゃんがさらにお伝えします!

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Conちゃん、安全面から再エネ推し!

 

太陽の光や風の力、水の流れ、地中の熱など地球が生み出すエネルギーを、二酸化炭素(以下、CO2)を出さないで、人間が使いたいエネルギー「電気」に変えられる。

それが「再生可能エネルギー」(以下、再エネ)の良いところ。

でも、デメリットがまったくないわけではないことを知ったのは、前編のとおり。

>前編はこちら『日本は「再エネだけ」にするべきでしょ!? エネルギーの専門家に聞いてみた』

 

 

とはいえ、みんなで使う電気をつくるなら、とにかく安心で安全なものがいいはずだ。

 

 

小川「確かに、火事みたいな事故はほとんどないかもしれないね。でも、例えば山を切り開いて巨大な太陽光発電所を造ったら、“自然のダム”ともいわれる森の構造に影響して土砂崩れが発生しやすくなるかもしれないと懸念されています。風力発電所は、風車による騒音や、鳥がぶつかるバードストライクも問題視されているんだよ」

 

 

小川「太陽光パネルって、だいたいは家の屋根にあるよね。もし、壊れたり落ちたりしたら、まず自分で対処しなきゃいけなくなる。普通に電線を通じて買っている電気って、たとえ自然災害や事故で停電しても、全部電力会社の人がやってくれるから使っている私たちは何かしたってことはないよね。そのメンテナンスや管理を、自分でやらなきゃいけなくなる。これはすごく大きいこと」

 


 

小川「太陽光発電の設備は、経年劣化や施工不良で火災が発生するリスクもあります。『自分は大丈夫』って考えていると危険だよ」

 

 

小川「それに太陽光パネルには鉛、セレン、カドミウムなどの有害物質が含まれているんだよ。壊れたり、ましてや不法投棄なんてされたりしたら漏れる心配もあるよね」

 

 

小川「確率は低いかもしれないけど、事故の報告があるのは事実。メンテナンスや管理まで考えると、『電線を通じて電気を買う』ってシンプルに便利で安いんだよ。もし太陽光発電を自宅に設置するなら、そうしたことも負担できるように、自分事としてエネルギーを管理する気持ちをしっかりと持っていないとダメだよね」

 

 

Conちゃん、再エネから国の違いを知る

 

安全性には何の心配もしていなかった再エネだけど、細かく見ていくと大きな事故につながる可能性は、確かにゼロではないかもしれない。

「エネルギー管理」って、かなり難しそうだ。

それでも、CO2の排出を止めて、カーボンニュートラルな社会を目指す世界の国々は、本気で再エネを増やしていっているはず!

 

 

小川「例えば、よく比較に挙げられるドイツやイギリス。日本と違ってたくさん太陽光発電や風力発電を入れているけど、それができるのはヨーロッパの国々が電線(送電網)でつながっているからなんだよ」

 

 

小川「ドイツを見ると、再エネが多いように見えるけど、実態は他の国に支えてもらっているからできること。日本は島国で、近くの国々と電線がまったくつながっていません」

 

 

小川「ヨーロッパと違って、日本の周囲には少し政情が不安定な国もあるよね。そうした国に大きな弱みとなるライフラインを握られたら、不安にならない? それに電線をつなぐには、数兆円単位のお金がかかります。そのコストは一体、誰が払うことになるのかな。国? 電力会社? 私たち国民?」

 

 

Conちゃん、再エネの能力を冷静に考える

 

どんな国土や環境なのか。近くの国はどういう状況か。

太陽光や風力で再エネ100%を実現するには多くの条件があることを知ったConちゃん。

環境や経済、安全性や国土、さらに国際関係まで考えなければならないなんて…。

 

 

小川「世界で日本と似ている国はありません。島国で資源は乏しいのに、今なお世界第3位の経済大国で先進国。いろいろな産業をバランスよく持っていて、それぞれ成長させてきた。例えばニュージーランドは先進国で島国なのは似ているけれど、農業国だから産業の在り方がまったく違う。オーストラリアは島国で産業も似ているけれど、国土が広くて資源大国」

 

 

小川「そうして見ていくと日本って特殊な国で、その発展を支えてきた一つが安定して使える電力なんだよ。だから不安定な再エネだけに頼る状態にするのは、本当にこの国を危機的な状況に陥らせてしまう可能性が高いの」

 

 

小川「だけど、後になって『そんなリスクがあるなんて知らなかった!』ってならないように、再エネにもメリットとデメリットがそれぞれあることを今から伝えたいんです。火力や原子力、再エネの中でも太陽光、風力、水力、地熱、バイオマスなど、いろいろなエネルギーをお互いのメリットとデメリットが補完し合えるバランスで使うこと。そうすると、それぞれのデメリットを小さく、メリットを大きくできるんだね」

 

 

小川「『一発当てたい!』って考えて一点集中で投資するのは、もはやギャンブルだよね。自分の資産でやるなら自己責任でいいけれど、日本全体の話だったらどう思う? 電力は人々の生活、つまり命を守るライフライン。そんな役割を担うものでギャンブルはできないです」

 

 

小川「電気は、安全に、安定的に、安くつくって届けることが重要。資源の乏しい日本が世界と渡り合ってこれたのは、この安定した電力に支えられた製造業があったからだし、もし電気の価格が上がったら、世界との競争力にも太刀打ちできなくなるかもしれないね」

 

 

小川「だから、地球温暖化の問題にも対処しながら国を安定させるためには、絶妙なバランスを考えなければいけないんです。エネルギーの面から見ると、日本って本当にものすごく難しい国なんだよね」

 

 

電気は人の命を守るライフライン。絶え間なく供給できる形を維持しないといけない。

最後に小川先生は、「再エネの割合を増やすためにも、個人でできることは省エネです。一人一人が使うエネルギーを正しく減らして“スマートな消費者”にならないと、日本のエネルギーは持続可能なものにはなりません」と言っていた。

CO2の排出量を減らすことと同じくらい、“エネルギーの安定感”がものすごく大事だと思ったConちゃんでした。
 


取材協力:小川順子

一般財団法人 日本エネルギー経済研究所 環境ユニット 気候変動グループ 研究主幹。経済学修士(国際経済学)。専門は地球温暖化政策分析、省エネルギー政策分析。国際エネルギー経済学会(IAEE)、エネルギー・資源学会に所属。

★さらに「再生可能エネルギー」について知りたい方はこちら!
『「もっと知りたい!エネルギー基本計画① 再生可能エネルギー(1)コスト低減、地域の理解を得てさらなる導入拡大へ」』(経済産業省 資源エネルギー庁スペシャルコンテンツ